引き続き思い出話です。このシリーズはタイトルに◆がついています。
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2007年5月18日
学校のアクティビティでインドア・ロッククライミングに行きました。ダウンタウンからバスで5分ほどのCalgary Climbing Centre(カルガリー・クライミング・センター:カナダ英語のためセンターの綴りはCenterでなくCentre)というところです。
(イラストはいつものいらすとやさんのページから)
今回の参加者は8名。
うち7人が日本人女性で残り一人はスイス人少年(見た目は20代後半だが実は19歳とのこと)でした。
「日本人女性はアドベンチャラスだね」とアクティビティ・コーディネーターのデリックが、面白がっていました。
日本人女性の一人、ユキコさんとスイス人少年モーリスのみが経験者。あとは全員初心者(写真はユキコさんとモーリス)。
モーリスは9歳のときからロッククライミングをしているとの事。スイスではロッククライミングはポピュラーなスポーツなのかという誰かの問いに「ポピュラーって言うか…スイスは山ばっかりだからね。ロッククライミングは身近なスポーツだね」と答えていました。
なるほど。
ユキコさんは自分用の靴とハーネスを持っていて、すでに本物の山を登った経験もあるとのこと。アクティビティ・コーディネーターのデリックは彼女のことを終始エキスパート、と呼んでいました。
センターに着くと、まずはロッククライミング用の靴をレンタルしました。
いつもは22.5cmの靴なので、それに近いもの(サイズ5.5)を出してもらったのですが、どうもきつい感じがします。
23cm(サイズ6)に変更しても…きつい。
わたし、太ったの…?と焦る私に、ユキコさんは「ロッククライミング用の靴はきつくて足が痛くなるほどだ…」と説明。とちゅうでゆるくて足を踏み外したり、靴が脱げてしま方が危険ということなのかな?
指先は痛かったのですが、このまま「サイズ6」を借りることにしました。
次にハーネスのつけ方を習います。
種類がいろいろあるようですが、今回は主流のレッグループタイプ(下図参照:図は「山どんの資料室」より)。
ハーネスとはクライミング用の安全ベルトで、命綱をつける基礎となる重要なベルトです。腰・太ももにベルトを通して太もものベルトと腰のベルトをつなぎます。腰のベルトにはビイループがついていて、ここにカラビナをつなぐことになります。
ロッククライミングは2人一組。
一人が上る間に一人が命綱を下で支えます。この際、上る人をクライマー(climber)、支える人をビレイヤー(belayer)といいます(下図参照:図は「山どんの資料室」より)。
クライマーは命綱の一方を腰の赤い輪に通し、ビレイヤーは青の輪に命綱の反対側の端を通したロック付き(綱が緩む方向にずれないためのロックがついている)のカラビナをつけます。
クライマーが上り続けると命綱が弛むため、ビレイヤーは命綱が命綱の役目を果たすように命綱をきつく締めていきます。
クライマーが手や足を滑らせるなどしても、同じ位置で安全にぶら下がっていられるようにするのだから責任重大だし、ロープを手繰る手が痛くなります。
注意しないといけないのは、パートナーは自分と同じくらいの体格の人を選ぶこと。体重差がありすぎる場合は、事故の際にクライマーの体重を支えられなくて最悪の事態を引き起こすこともあるわけです。
今回の私のパートナーはシゲコさん。今回のメンバーでは最高齢の30歳代ペアです(ESLの学校は若者が多い)。
上るときにはビレイヤーが命綱をピンと張ったら「オン・ビレイ(On belay: 準備OK)」とクライマーに告げて、クライマーは登りはじめに「クライミング(Climbing:登るよ)」という言葉をかけ、その言葉を聞いたらビレイヤーは「クライム・オン(Climb on: 登れ)」と声をかけます。
降りるときにはクライマーが先に声をかけ、休みたいときや降りたいときにも「テイク (Take)」と声をかけ、それを聞いたビレイヤーは命綱を自分の体が持ち上がるんじゃないか…ってくらいに締め上げます。充分に締めたら「ガッチャ!(Got ya: I got you の略。しっかりつかまえてるよー、くらいの意味か?)」と声かけ。
この状態だとクライマーは手を放してもハーネスに体重をあずけたときに腰掛けている格好になります(右図参照)。
再び登りたくなったらクライマーは「クライミング」といえば言いし、降りたいのであれば「ロウワー(lower)」または「ダウン(down)」と言えば、ビレイヤーが命綱のストッパーをはずして綱をゆるめはじめます。これによりクライマーは安全にゆっくりと降りることが出来るのです。
決まりきった言葉でばかばかしく感じることもあるかもしれないのですが、命がかかっているので省くことは出来ません。今はインドア(室内)であっても、実際に山に行ったときに忘れたら大変。練習も真剣に。コミュニケーションの大切さをここでも学びました。
2回ずつ、練習で登ったらあとは好きなコースで自由に登っていきます。
私とシゲコは少しでも長い距離を試したくて、少しずつ難しいコースへと移動。
本当であれば練習者はテープでマークされた石を「今回は赤いテープのコース」「今回は黄色いテープのコースで」と、石による難易度の変更により練習をするのですが、今回の我々はお試しレッスンなので、自分の登りやすい石を使って登りやすいように登っていくのみ。
本当の難しさと面白さは味わっていないのかもしれません。
とはいえ、難しいところでも握力と腕力、脚力と頭脳を使って登っていくのは快感でした。
命綱があるせいか、高いところが苦手なはずの私でしたが恐ろしさは感じませんでした。
むしろ楽しい!登る際の疲れというのも殆ど感じない。
どちらかというと疲れるのはビレイヤーになったときでした。
ロープが手のひらをこすって皮が剥けそう。皮手袋が欲しいところ。
少々むずかしい場所は腕力と脚力で無理やりに登っていく感じ。「あの人たち30代よね…」とひそひそ言う声が聞こてきました。
どうやら日本人の若い子たちがうわさをしていた様子。日本語だし…ヒソヒソ声でも聞こえるのだよ、君たち。
「ずっと年上の我々が頑張っているのだから、君たちもがんばりなよ」と英語で返す(年を取ってくると、こうして嫌味で返すようになるのです。だから嫌がれるるのか?)。
かくいう20代の若者たちは(というか普通の女の子たちは?)1~2回登ったところで力尽きていました。
若者よ、パブ通いよりもエクソサイズをしたまえ。
私とシゲコは楽しくてたまらず、時間が来るまで休憩もせずに登り続けました。シゲコは普通のランニングシューズを使っているため石に足が引っかかりづらいらしくて苦労していました。
ロッククライミング用の靴は底が薄くてサイズもきつめなので石の感触がつかみやすく登りやすかったです。
しかしこれならば地下足袋の方が親指も分かれているし、更に石の感触がつかみやすくていいのでは?という疑問が沸いてきたわけですが…実際はどうなのかな?
残り5分くらいになったところで、ユキコさんのクライミングを見学。
彼女は上級者用のコースで練習中でした。
このコース、忍者返しのように手前に向かって反っていました。崖に体を留めておくために、壁には一定感覚でカラビナがついていて、命綱をそれに掛けながら登っていきます。壁に留められたカラビナは何に使うのだろう?と疑問に思っていたのですが、ユキコさんのクライミングをみて納得。
ユキコさんが登りきったところで拍手。下におりたところで歓声!かっこいい(写真は登る姿もかっこいいユキコさん)。
ロッククライミングが終わった時には指先が痛くなっていました。ロッククライミングを続けると指紋が無くなるというのも頷けます。
楽しかったです。行ってよかった。
【追記】
あまりにも楽しかったので、また行きたいと思ったのですが、今に至るまで実現はしていません。
当時の価格で2時間で18ドル。ロッククライミング用の靴のレンタル代が5ドル。月に2回くらいなら行けるかな、と思っていたのですが…。
ロッククライミングは個人スポーツと思っていたのですが、実際はパートナーが必要なのがネック。しかもパートナーはだれでもいいのではなくて、自分と同じくらいの体格の人では似といけません。DGと私では体格に差がありすぎるのでダメ。
自分の好きなときに自分のやりたいようにするというわけには行かないのです。
ユキコさんもパートナーを探していたし、パートナー探しは大変なようです。
また行けたらいいな。