『永遠の0』 百田尚樹 | はんなのはんなりblog*〜日々のことや育児のこと〜

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2013年、35週でおなかの中で赤ちゃんとお別れしてしまいましたが再び授かることができ、2015年に元気な女の子を出産しました。
アラフォーの迷える日々のことや、プロテインS欠乏症(不育症)で世間の少数派に入り、そこから見えた世界のことなどを書いています。

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「娘に会うまでは死ねない、妻との約束を守るために。」そう言い続けた男は、なぜ自ら零戦に乗り命を落としたのか。終戦から60年目の夏、健太郎は死んだ祖父の生涯を調べていた。天才だが臆病者。想像と違う人物像に戸惑いつつも、一つの謎が浮かんでくる―――。記憶の断片が揃う時、明らかになる真実とは。



書店を3軒回り、取り寄せてもらった『永遠の0』を読み終わりました。


すごく良い本でした。


永遠の0の、"0"とは、零戦(零式艦上戦闘機)のことです。

戦争時代や戦争そのものを扱った話は、怖い、難しいというイメージがあり、
今まで読んで来ませんでしたが、
仲良くして頂いている方が紹介されていたのと、
他の方の書評を読んで興味を持ちました本



司法試験浪人の主人公、健太郎が、
とあるきっかけでフリーライターをしている姉と共に、特攻隊で戦死した祖父の生涯を調べることになるという始まりで、現在と過去が交互に描かれており、入りやすかったです。


何日か前に読み終わっていたのですが、読後、色々考えさせられるところがあって、
まとまっていないままで今感想を書いているので、ばらばらな文章になってしまいそうな気がします。



まず、零戦や当時のアメリカやドイツの戦闘機について詳しく書かれており、興味深かったです。


零戦は2200kmに達する長大な航続距離、時速500kmを超える最高速度、高い運動性能を持つ優れた戦闘機でした。


しかし、それをかなえるための徹底した軽量化が行われ、パイロットを守る装備など無く、
「ワンショットライター」と言われるように、一発命中すれば火が点くという、人命を軽視した作りだったようです。


それに比べ、アメリカの戦闘機、グラマンやシコルスキーは改良を加えられて行き、
厚い装備が施され、撃墜することが難しくなって行ったようでした。



また、アメリカと日本ではパイロットの扱いが全然違い、日本は3時間かけて長距離を飛行したあと、戦闘し、
3時間かけて戻るという日々が連日続けられていたそうで、
飛行するだけでも神経を使って大変な疲労があるだろうに、その過酷さに驚きました。

対して捕虜になったアメリカの搭乗員が語ったという節に、一週間戦えば後方にまわされ、そこでたっぷりと休息を取って再び前線にやってくる。何ヵ月か戦えば、もう前線からは外される、とありました。


いくら戦争中と言えども兵士は人間であり、それぞれに家族もいれば、人生があるわけです。

この本だけを読んで判断はできないでしょうが、読んでいると、日本軍の指令部の兵士に対する考えが、一人の人間として思われていないように感じられ、やり場のない気持ちになりました。


「国と家族を守るため」という思いで必死で戦っている軍隊にいて、
「死にたくない」という主人公の祖父(宮部久蔵)は
「多くの仲間が死んで行くのに、自分だけが助かりたい卑怯者だ」
と思われるのですが、

そう言って批判する人達も、死の恐怖と葛藤し、そう自分を納得させている、そうでなければ死と隣り合わせの世界を生きられない、というような記述があり、心に残りました。


死にたくない、生きて家族の元へ帰りたいという思いは今と変わらないのに、
今の時代では最も尊重される常識が否定される時代の恐ろしさ、風潮や流されることの怖さを改めて感じました。


しかし、そんな時代にあっても人々の交流や優しさなど、人間ドラマが描かれていて、心が熱くなりました。


特に、宮部久蔵という人の人格は素晴らしく、
最後に明かされる真実は、電車に乗っていたにも関わらず涙がこみあげて来そうになりました。

命を守ってくれた恩を返す人達の姿、
宮部久蔵が生きて帰りたいと言っていたことは、保身ということだけでなく、
待っていてくれる、他の人のために何としても生き抜くという姿、


逆に、大切な人達のために、死ぬことを厭わないと考える人達も多くいたのではないか、
とも思いました。




読み終わってみると、その時の軍上層部や、日本という国、当時の新聞、そして現在と、思いが巡り、


「かくもまた醜き国となりたれば捧げしひとのただに惜しまる」


という戦争未亡人の方の献歌を思い出しました。


最後のあたりに、下記のような文章があります。


"(特攻隊の)編隊は南に向かって飛んだ。東の空がほんのりと明けて来るのが見えた。うっすらと明けゆく空を見て東雲(しののめ)という言葉を思い出した。
――(中略)――
私は後ろを振り返った。鹿児島湾がきらきらと光るのが見える。そしてその後ろに九州の山々が朝日を浴びつつ、緑の色に塗られていく。美しい、と思わず呟いた。
この美しい国を守るためなら、死んでも惜しくはないと思った。"(本文より引用)


醜き国、美しい国......考えさせられます。


読み応えのある作品でした。


映画化されるようなので、是非観たいと思っています。