
八年後に小惑星が衝突し、地球は滅亡する。そう予告されてから五年が過ぎた頃。当初は絶望からパニックに陥った世界も、いまや平穏な小康状態にある。仙台北部の団地「ヒルズタウン」の住民たちも同様だった。彼らは余命三年という時間の中で人生を見つめ直す。家族の再生、新しい生命への希望、過去の恩讐。はたして終末を前にした人間にとっての幸福とは?今日を生きることの意味を知る物語。
けっこう前に読み終わっていたのですが、
なかなかゆっくりとPCに向かえず、今になってしまいました

まず1ページめくるとこうあります

Today is the first day of the rest of your life.
今日という日は残された日々の最初の一日。
――――by Charles Dederich
伊坂幸太郎さんの作品はまだあまり数を読めていませんが、
ブロ友さんが教えて下さった通り、名言が散りばめられており、
この前書きにもふむふむと納得しました

この作品は、まさに残された日々に直面しているわけですから、
この言葉を念頭に置いて読み進めることになりそうです


「終末」と聞くと、何となく恐ろしく、暗い雰囲気がありますが、
けして悲愴感に溢れたわけではなく、むしろユーモラスささえ感じられます

というのも、やっぱり会話がお洒落です

言葉選びにさすがのセンスを感じます

そして、登場人物がいい意味で個性的

皆、憎めないし温かみがあります

前回読んだ『モダンタイムス』でも、突拍子もないキャラクターが登場しますが
不思議と温かさを感じたので、伊坂さん作品の共通点なのかもしれません

繰り返しになりますが
本作で描かれる世界は「地球の終末」です。
地球上の全員が余命宣告されているような状況の中で、
死を目前にした人々の取る行動が、8つの章に分かれて書かれています

平和ならば漠然と生きているかと思いますが、
死を意識することで、自分の本当の気持ちに気づいたり、
余計な物は全て取っ払って、素直になれたりするのです

復讐する者、安心する者、恋する者、変わらない者…
「自分だったらこの中のどれが当てはまるだろう?」
もしくは「自分だったらどうするだろう?」
と考えずにはいられなくなります

自分には当てはまりませんが、変わらない生活を続けて行く人はかっこいいと思いました

死を目前にしたからといって特に生活が変化しないのは
常にベストな生き方をしているということですよね

それに、スティーブ・ジョブズ氏の名言を思い出しました

(以下引用)
"私が17歳のとき、次のような格言を読みました。
「毎日を最後の日であるかのように生きれば、いつか間違いなくその通りになる。」
私はそれに感銘を受けました。そしてその時以来、過去33年間、毎朝鏡を見てこう自分に問い続けてきました。
「もしも今日が人生最後の日だとして、今日しようとしていることをしたいだろうか。」
その答えがあまりに長い間に連続して「いいえ」になったときは、何かを変える必要があるとわかるのです。"
"自分が遠くない将来に死ぬであろうことを思い出すことは、私が人生で大きな選択をする助けとなる、今まで出会ってきた中で最も重要な手段です。
なぜなら、ほとんどすべてのもの、つまり、外部からの期待、プライド、恥辱や失敗への恐れ、こうしたものは死を前にしてはまさに剥がれ落ちてしまうからです。本当に大切なことだけを残して。
自らの死を思い出すことは、失うものがあると考えてしまう罠を避けるのに、私が知るかぎり最良の方法です。あなたたちは既に丸裸です。自分の心に従わない理由はありません。"
ジョブズ氏が言われるこの言葉、
『終末のフール』を読むと、同じことを問いかけられているような気持ちになりました
