7月

3年生になってから3か月が経った。

私はクラスになじめないストレスで5キロほど体重が落ちた。

学校に行く気力がないときもあったけれど

チカちゃんがいてくれることが唯一の心の拠り所だった。


そんなある日、球技大会の種目希望表が授業中に回ってきた。

私は手術後の左手がまだ治療中で(通院して経過を見せるだけでしたが)

左手に負担がかかるようなスポーツはまだ禁止されていた。

球技大会の種目はバスケとドッジとバレー。

どれも左手に負担がかかりそうだったから、名前を書かずに回した。


その日のSHRの後、クラスのリーダー格の女の子に声をかけられた。

「**さん、名前書いてないけど…」

「あ、手がまだ治ってないからちょっと…」

「やらないのね、了解」

それだけ言って、立ち去っていった。

何それ。

やらないんじゃないよ、やれないんだよ

本当にいやだ、このクラス…大嫌い

しかも、さらに追い討ちをかける出来事が。

球技大会前日の夜、携帯を見るとメールを受信していた。

チカちゃんからだった。

『すごい熱出てきた。明日は学校行けないかも』

実はチカちゃんはこれまで欠席も遅刻も早退もしたことがなく

卒業式に皆勤賞で表彰されることを目標にしていた。

この日、チカちゃんは身体がだるい~ってぼやいてて

授業中もほとんど寝ていたのを思い出した。

『大丈夫なの?明日球技大会だけだし、無理しないで休んで!』

と返信した。そして熱が今夜中に下がりますように…と祈った。

翌日

チカちゃんはやはり学校を休んでしまった。

私、一人でこんなクラスの球技大会の応援だけしないといけないんだ…

とりあえず校庭に出て、女子バレーボールの試合を観にいった。


暑い…

みんな、すごい真剣で、点が入るとすごく嬉しそうで、

応援しているクラスの子もすごく楽しそう。

その中で私は一人、無表情でただ試合を見ている。

みんなお揃いのクラスTシャツを着ていて、私だけ一人制服。

とにかく、浮いている。

きっと、クラスのみんなは私のことなんてクラスの一員だとも思ってないだろう。

私も思いたくない

もう、嫌だ…


「もう、帰っちゃえよ」

私の心の中のサボり魔が誘惑している。

サボり魔の誘惑に、簡単に乗ってしまった。

体調が悪そうな顔を作り、担任のH先生に早退させてくださいと言おうと職員室に向かった。


職員室に入ると、クーラーが効いていて、汗がすっとひいた。


「こんなとこで何してるんだ?」


聞き覚えのある声。

おっちゃんが

私の姿を見て、目を丸くしている。

久々におっちゃんに話しかけられ、嬉しいはずなのに少し緊張を覚えた。

球技大会の時には必ず着ているエメラルドグリーンのジャージを、今日は着ていない。

「先生は行かないんですか?1組の応援…」

「仕事が忙しいから、今のうちに片付けようと思ってさ…」

「…大変ですね」

「お前こそ、着替えないで…やる気ゼロだな(笑)」

この言葉が、胸に突き刺さった。

「やる気とかいう問題じゃなくて、できないから」

ムッとしながら言うと、おっちゃんははっとした顔をした。

「ああ、そっか…手…ごめんな」

「…」

「チカは一緒じゃないのか」

「チカちゃん今日風邪で休みです」

「えっ?あいつ休み?珍しくないか?」

「…先生、もう私行きます」

早くH先生の所に行こう…と思って職員室の奥の方へ向かおうとした時

「ちょっと待て、**」

振り返ると、おっちゃんはにやりと笑いながら

「時間あるだろ?ちょっと付き合え」

と言った。