それはぼくがママのお使いから帰った、夏休みの日だった。
「ただいま~。ドラえもん。今日のおやつはもう来ている?」
ぼくは異変に気付きました。ドラえもんは返事もしないどころか、身動き一つしないのです。
と、部屋に手紙が置いてありました。
『のび太くんへ。
急なメンテナンスが入って、ぼくとぼくの道具は今日からしばらく使えなくなるよ。いつまでかは不明。夏休みの宿題は、自分でかたづけてね。
ぼくは壊れたわけでなく、電源を切ってスリープしているだけだから、誤解して埋葬なんかしないでね。
では、ぼくの電源を落とすよ。がんばって、のび太くん。
ドラえもんより。』
ぼくは慌てて、ドラえもんの様子を見たよ。一見、いつものようにぼくの部屋に座ったまま穏やかに微笑んでいる。
困ったな。夏休みの宿題、ドラえもんの道具でこなそうと思っていたのに。
ドラえもんの腹の、四次元ポケットに手を入れる。これが使えないのか! ただのポケットだ。
次いで机の引き出しを開ける……ない! タイムマシンの入り口が消え、ただのからっぽの引き出しになっている。
押入れのスペアポケット……これもダメか! すると、ドラえもんの道具は一つも使えないのだ!
……と、いうわけで。ぼくは友達にこの事態を説明し、集まってもらった。
「しずかちゃん、ジャイアン、スネ夫、なんとかしてえ!」
「駄目よ、のび太さん。宿題は自分で済まさないと」たしなめるしずかちゃん。
「のび太、俺もドラえもんには期待していたんだぜ。この夏、どんな冒険ができるかなって」と、ジャイアン。
「ああのび太、おれなら買い物次第でどうにでも済ませられるけど。友達に金をやるな、って厳しく止められているんだ」これはスネ夫。
ぼくは問う。「なにか策がないかな」
「ドラえもんを質に入れたらどうだ?」スネ夫だった。
「ひどい! スネ夫さん」怒るしずかちゃん。
「スネ夫、仮にも友達を売るって俺にだって悪いことと思うぞ」と、ジャイアン。
「違うよ、質屋に置いておくだけおいて、質流れしない程度には支払いを続けるのさ。最終的に買い戻せば、質屋って割とコスパいいんだよ」
ぼくは断った。「それは反対するよ。他の手を探そう」
しずかちゃんは主張した。
「みんな、自力で宿題終えましょうよ。まあ、学科のテストだったら答えの見せ合いくらいしてもいいけれど。丸写ししたら、カンニングバレるわよ。それくらいなら、白紙のまま提出したほうがマシよ」
ふと、ぼくは意見した。「自由研究は? それならこの四人で協力し合ってできるよ」
「のび太さんらしくない名アイデアだわ。では、テーマは? どうする、みんな?」
「ドラえもん、はどうかな? ほかにこんなテーマのヤツ、一人もいるはずないしな」ジャイアンは得意げだ。
「賛成。ドラえもんの秘密を明かそうよ」スネ夫はやる気だ。
ぼくは迷いました。「いいテーマだけど……ドラえもんのどこをどうやって調べるの?」
しずかちゃんは提案した。「ここにちょうど四人。学校の主要学科も四科目。これらを手分けして、四つの視点から持論を述べては?」
つまり、国語・算数・理科・社会にジャンル分けして、ドラえもんについてのエッセイを作ることになりました。
科目 担当
国語 のび太
算数 しずか
理科 ジャイアン
社会 スネ夫
のび太
ドラえもんは友達です。たいせつな家族です。ドラえもん自身は、子守りロボットと名乗っていました。
しずか
ドラちゃんは未来の世界から来ました。こんな奇跡のような出逢いの可能性は、万に一つどころか、億に一つもないと思います。
ジャイアン
ドラえもんは体重129.3kgあるんだぜ! それを背負って運ぶのび太も強ええよな。
スネ夫
ドラえもんはおれの親でも買えないよ。未来に量産されて、各家庭にいるとは。社会は変わっていくんだな。
しずかちゃんはてきぱきと進行役をしている。「かんたんにまとめるとこうね。時間余っちゃった。あとは道具についてよね。なにからにしましょう?」
スネ夫「タイムマシンだよね。そこからドラえもんはやってきたんだ」
ジャイアン「タケコプター。これがいちばん活躍した道具では?」
「どこでもドア……」ぼくは言いかけた。
「あれか、のび太さん!」しずかちゃんは怒っている。
「違うよ、ドラえもんの道具は故障すること多いんだ。事故だって!」
…………
…………
ポケットがなくてもドラえもんは大切な友達だし。
どこでもドアがなくても、どこかへ行けるドアがある。
二次創作です。