いつも抜き打ちテストで痛い目に合っていた……

 その少年は、友達のロボットを失っていました。

 少年にはなんの道具も残されていませんでした。

 

 

 少年が道を歩くと、同年代の悪いのに絡まれそうになります。少年は、見た目それだけ頼りないのです。

 

 しかし、少年はそんなとき。そっと、自分のポケットに右手を伸ばします。

 べつにふつうの服やズボンやバッグの、ふつうのただのポケットですよ。

 

 

 これを見ると、みんな驚きます。そして平静を取り戻し、少年のもとからあわてて立ち去ります。

 

 なぜでしょうね。ポケットにはなんの種も仕掛けもありませんよ。

 

 これだけで余計な、けんか騒ぎを止めていたのです。だから成長すると。

 

 

 それから少年が、青年と呼ばれるころになったときは、青年は、もはやポケットすら無関係です。

 

 青年は指先ひとつで、いろんなことを操作できるエンジニアの力を有していました。

 

 でもそんな力すら無関係。

 

 青年が大人となり、長くなってからは。目ひとつ、で相手を動かせる器になっていました。

 

 かといってなにも無法なことを求めたりしないのが、かつての少年でしたね。

 

 

 

 かれは平凡……かどうかは知りませんが、それなりの人生を送り、発言ひとつで物事を動かせる、というのに。

 

 決定的な発言はなにもしなかったのです。

 果たしてそれで良いのかは……きっと、みんな呆れますが。

 

 それでも、世界のほんの1%にも満たない人たちでも、かれの力を知ると。みんなも、心得ればその力を使えると知ると。

 

 世界は平穏になっていったのですよ。

 

 

 

 なんの魔法の話かって? なんでしょうね。

 こんなこと現実に起こりえるかって?

 さて、現実に続いてきたではないですか。

 

 

 

 身も蓋もありませんが、かれはただ、自分が幸せであるように生きたかっただけなのです。

 

 周りが幸せかどうかは、かれは知りませんが。

 でも、周りが幸せなら自分も幸せかも。誰しも。

 

 

      (終)

 

 

         追記……二次創作ごめんなさい。