アニメでは、敵艦隊に対して、ミサイルを撃っているな……しかも、長距離からの攻撃用として。少し計算してみれば、あの……トロい兵器が、宇宙の広さの前に、なんの役に立つの、ものであるが。しかし。

 あまり詳しくは記されていないが、原作では実はそのミサイルとはレーザー水爆、とある。どうやら、質量のあるミサイルを、放っているわけではないのだ。レーザーだから、光の速さ。それが、目標に命中したときに、原理はわからないけれど、核融合反応を起こさせ、つまり水爆となる兵器だ。

 対して、ふだん放火交えている、艦砲は、中性子ビームや過電粒子砲。中性子なら、光の速さかな? そして、過電粒子なら、光よりほんの少し、遅いはずだ。

 もんだいは、レールキャノン。これって、昔観た資料からすると、原理的には、限りなく亜光速に近づけるらしいな。しかし、現代の技術では、秒速数10kmレベルらしい。すると……光に比べたら、遅すぎる。どうなっているかは、記されていない。

 

 さて、戦闘機(戦闘艇)が、皮肉にも近接戦闘用となっている。

 これは、数学的には正しいだろう。宇宙のスケールからしたら、とうぜんだ。

 現代でこそ、戦闘機はそのスピードから、発進すれば目的地に急行し、相手が対処する前に、目的を達成できる。弾道ミサイルに次ぐロングレンジ兵器なのだが。

 

 ラインハルトはランチェスターの法則に忠実だからこそ、接近戦しかできない戦闘艇のことを軽視していたらしいな。さもなければ、あんな愚劣としかいいようのない、ガイエスブルグ要塞でイゼルローン要塞を攻める、なんて真似しなかったはず。あのいつも、必ず敵より優勢な戦力を整えてから戦うはずのラインハルトが、どうみたって不利なあんな作戦を。なんか、ケンプに対して、『役に立たないなら、そこまで。死んでいい』みたいに、妙に冷たかったし。キルヒアイスが生きていたら……と、ヒルダが嘆いていたっけ。

 

 そういや、ケンプ提督。かれ、帝国の撃墜王上がりで提督になった経歴だけど。かりにも作品中最強の提督ヤンと、初めて戦い。そして負けているけれど、実はその時。ヤンの艦隊のエースの四人のうち、二人を倒すという功績を上げている。しかも、生き残ったエースの二人も。片方は運よく助かったが、機体を損傷して命からがら帰艦しているし。もう片方なんて、整備不良で機銃が使えなかったから、事前に偶然引き返していただけ。つまり、そのときにエース四人まとめて全滅していた可能性がある。

 

 とにかく、帝国は戦闘艇を軽視していた。接近戦とは、戦力が大きい側が、執るべき作戦ではないから。ヤン不在のまま進められた、帝国との決戦で。司令長官ビュコックが悪あがきで、戦闘艇を出撃させた奇策を採用したときだって、帝国側は。「なんのつもりだ? いまさら」ていどの反応しかできず、そして焼け石に水程度の効果とはいえ、戦闘艇は任務を済ませられた。

 

 だから、ポプランのライバルとなるような敵は、帝国にはいなかった。もし、あのエースが四人ともそろっていたら……それこそ、バーミリオンで、ラインハルトは死んでいたかもしれない。あるいは、もっと早く?

 ポプランは戦闘艇乗りで最強かに思え。実は、コーネフの方が上手だったりする。そして、トランプのマークの強弱で明らかなように、スペードとダイヤの、シェイクリとヒューズも、ポプランより強かったかも……

 ましてや、スパルタニアンより、ワルキューレは性能が劣るらしい。それなのに、エースとなり。ましてや、大将にまでなっていたケンプって、もしかして、いちばん強いエース? ポプランだって、「撃墜王ランキングのベスト10には入ったな」とすら、述べていたが。最後の階級は、中佐だったのに。

 

 実は、銀英伝の何巻目だったかな? あとがきが、わたしには超不満。「ヤン艦隊のエースが、櫛の歯が欠けたように戦死していく姿は……」うんぬん。

 って……あなた、銀英伝、読んでいないでしょ。それは、史実のゼロ戦パイロットと混同していない? だって、シェイクリとヒューズは同時に一瞬で死んだし、アニメ版なんか特に、一回も姿が映らないまま戦死したことになっていた。まあ外伝ではほんの少し、出てきていたけれど。で、ポプランとコーネフで戦い続け、コーネフはかなり後半で戦死していた。その直接なシーンはなかった。単にその部下から、艦砲射撃を受けた、とだけ告げられただけ。

 で、ポプランは生き残ったわけだから……櫛の歯とやらの表現はどうも不適切。

 

 

 さて。アンサイクロでは。銀英伝は、SF版三国志とされる。そこでは、帝国が魏。同盟が、蜀。なのだが……で、同盟が、あの、北とされている! まあたしかにさ、史実では。あの、金は。独立戦争の英雄らしいから、まさに劉備に当たるのだが……

 

 原作そのものは、同盟は当時のアメリカ。帝国は、その当時にはないが、戦時中のドイツと、そして暗黒の中世レベルの、世の中の専制君主制王国、その非道性から逃れるための、自由民主主義の戦いとされている。

 

 コモン・センスなどを読めば明らか。当時のイギリスは、世界の大半を支配していた大帝国。あの独立戦争は、アメリカにとっては絶望的な戦いだったが、戦い抜いた! そして、聖書の教え通り。神は、王なんて認めていなかった。神のもと、みんな平等。自由。それを勝ち取るための、戦いだったのだ! だからこそ、勝ち目なんかないとしても、戦い続けていたのだ! そして、勝ったのだ! 自由民主のための、革命戦争。

 

 これって、日本の神風、特攻隊とほとんど変わらないくらいの覚悟だよな。いまでこそ、自爆テロはカミカゼ、などと呼ばれ。日本は、そんなものと比較するな! と怒っているが。

実のところ、外国だって、けっこう多いのだ。

 あのナチスドイツだって。ヒトラーって、とんでもないカリスマだった。国民のヒーローどころか、尊敬され、崇拝すらされていた。だから、当時のドイツ青年には。命令なんかされなくても、ヒトラーを守るためなら。爆弾を抱え込んで、敵戦車の下に潜り込み。自爆があたりまえにできた、愛国青年が何千人もいたとか。

 

 さて、そんなアメリカみたいな同盟だが。やはり、完全な正義ではない。神の元平等、なんてしていても、やはり、アメリカは植民地だった国。奴隷だった黒人や、原住民のネイティブ・アメリカンなんかは虐待(ちなみに、原住民を白人が虐殺したのは事実だが、もっと大きい理由は、ヨーロッパの伝染病が運ばれたこと。新大陸の原住民には、免疫がなかったから、広まるとほとんど全滅してしまったのだ)されていた。

 

 だから銀河英雄伝説の中でも。一見、完全な理想的な人格者に思えるヤンでさえ。黒人の、マシューゴに対しては。『あれ』と、呼んでいた。『あれ』って、英語だと、『It』? もの扱いである。人間として、認めていない! ペットに対してだって、そんなふうに呼ぶことは、動物愛護団体が認めていないのに……しかも、それなのに、ヤンの遺体を抱え上げてくれたのは、かれだったし。最後の戦いで、ユリアンを守るため、死んでいったのもかれ……ふだん寡黙なのに、『運命には、逆らえませんから』と、だけは優しい口調で何回も繰り返していた。

 

 と、いうわけで。この大作は、深く読むと、きりがない。やれやれ、また知ったかぶりを書きなぐってしまった。すみません、お時間お借りしました。