子供の世界って、とんでもないバカなのだよな。理由はどうあれ、戦って勝てばヒーローなのです。だから、大勢でよってたかって弱いものいじめしたって、正しいのはいじめる側だし、いじめられた方は負け犬で最低の卑怯者扱いされて周りのみんなから嫌われます。
これが現実です。
わたしが中学を卒業した次の年度、とんでもない不良が生徒会会長に圧倒的な得票を集めてなったのですが。その理由というのが。
校長先生に殴りかかって、叩きのめしていたからなのです。
しかし、事実はすべて不良生徒が完全に悪いのです。そいつは不良たちのリーダーで、やりたいほうだいやっていました。弱いものいじめはもちめん、恐喝や、窃盗、美少女を不良全員で取り囲んで交際を迫るような恥知らずな真似していたとか。
対して当時の校長先生は、他の無責任でクラスの問題にかかわりたがらないような教師とか多かった荒れた環境の中では、とても温和でユーモアも理解もあるいい校長先生だったのです。不良のリーダーを一人で校長室に呼びつけて、一対一で話し合おうとしていたことだけで、その度量がわかると思います。
しかし、子供にとってそんなことはどうでもいいのです。とにかく戦って勝てば正義のヒーローなのですよ。だから校長を殴り倒したことは大評判になり、その不良完全に中学の中ではアイドルスター扱いだったとか。憧れて付き合う女の子もたくさんいて、そいつとっかえひっかえ〇〇行為していたみたいです。
結局そいつどんな高校にも進めないような成績でしたから、中学を出てからは暴走族していました。
いまでこそ過去のものですけれど、当時流行っていた暴走族ってとんでもないですよね。いきがってかっこつけているだけ。取り締まりに来る警察に対して、「俺ってあの警察と対等に戦っているんだ。強いんだ、すごいんだ、かっこいいんだ」なんてヒーロー気取りですが……
実は警察官ってそうではありません。よほどの犯罪行為をしていない限りは、バカだからなにも知らずに危険な運転をしている暴走族のガキを守るために働いているのだから……
だからむかしの有名な青年漫画に、『サラリーマン金太郎』というものがありましたが。あれ、設定そのものはもと暴走族だった主人公が、サラリーマンになって努力して成功していくという、なかなかのものでしたが。あるシーンで呆れかえりました。
大人になってそんな大企業に責任ある地位で勤めているのに、あるときもとの暴走族の仲間と合流し、また暴走に乗り出すところです。そこで、「喧嘩上等! いくぞ!」って……こんな恥ずかしい真似しているとは、もう読む気なくなりましたよ。
おまけに主人公、他人の不正は見逃せないかに思えて、自分には意外と甘いのです。だって、妻がいるのに浮気しているシーンがあります。しかし主人公は特別扱いで問題にされていませんでした。
他の男がこんな真似をしていたら、その主人公なら許さないはずなのに。ほかにも自分だけは特別に許されるからと、傲慢なシーンが意外と多くありましたよ。
主人公はほかのお偉いさんたち大勢から特別にひいきされていて、明らかに厚遇されていましたし。そもそも大企業に入れた理由だって、その会長を命がけで助けようとしていたからですから……かといって、なんでも許される特権階級扱いって、いけないと思うのですが。
はっきりいって、弱いものを守ってやるからとの口実で、お金をせびる暴力団のメンタリティーと大差ないのでは?
ま、あれって舞台が建築業界だし。もともといまでいう暴力団は、そうした土建屋が建築業界で大きな取引があるときに、どの会社がそれを引き受けるかの争いの時に、出向いて戦える戦力隊員だったのが、始まりといいますから。
いまではそれはむかしの話とはいえ、現実はきれいごとだけではすみませんね。
一見平和でのどかな生活に思える日本のいなかの農家だって、戦後の時代すら、しばらくは。たとえば水不足のとき、だれの田んぼにどれだけの水を引き入れるかの争いで、農村同士の実力行使があり、血の雨が降っていたとか聞きました。
おまけにそれを鎮圧に来る警察官も実力行使だったというから……ほんとうは、日本って意外と完全な平和ではなかったのですね。