まだまるで情報が入ってきませんが、銀河英雄伝説のリメイクアニメが始まるはずなので。

 あの作品を見て。とんでもない誤解をする若者がいるかもしれないので、ここに記しますね。

 

 あの作品、主人公ラインハルトが。初めての戦いから帰ってから、二十歳というのに軍人としては最高位の元帥になりますよね。そしてその部下も。みんな三十歳代くらいの青年壮年と若いのに、すでに中将なのが大勢でますよね。だから、ここで誤解されるみたいなのですが……

 

 実は士官の中でいちばん下の、少尉になるなんて、ふつうのひとには無理の、雲の上の存在。士官学校に入るって(ようするに日本の防衛大ですよ)単に成績がとても良いだけでなく。体力的にも優れ。かつ、気質的にも勇敢で冷静で、責任感が強かったりと、いろんな才能に恵まれていないと不可能なのですから。

 

 そうした平均的な少尉が、二十年かけて中佐くらいになるのが普通らしいです。軍人は退役が早いですから、ほとんどみんな大佐がせいぜいで経歴を終え。まして、将軍になれるなんて特別優秀過ぎる場合だけ。

 

 そんなわけで、銀河英雄伝説だけを見たひとが。ほかの戦争もの(その時は、ケロロ軍曹だったのですが……)を見て。「なんだ、こいつ。軍曹なんて。とんでもねえ下っ端じゃん」なんて馬鹿にしたりします。

 

 しかし、現実の軍隊とかってそんな甘いものではない。

 海外のむかしのある戦争の激戦区なんて。ほんらいならエリートであるはずの少尉ですら。「新米少尉の平均寿命二週間」なんて呼ばれたまさに地獄。

 

 戦争が始まれば、とても兵力が足りないから、戦える若者はみんな徴兵されるかもしれませんが(ただし、日本はまずありえないらしいです。自衛官ってとんでもない訓練と教育をされる全員精鋭の、しかもそれぞれ違う専門分野のプロフェッショナルだから、素人なんて使い道がない、それどころか迷惑な足手まといとか)。そうしたとき、兵士はみんな二等兵。

 

 二等兵って最低の地位に思えて。軍隊ってとても厳しい訓練しますから。その二等兵が勤まる時点で、街のちんぴら、ようするにいきがって弱いものいじめしているようなのなんて、素手で戦って軽く叩きのめせる、実力になっていたりします。

 なのに、軍隊では階級の差は絶対的。一等兵ですら、二等兵にとっては絶対に逆らえない神さまなのです。上官の命令に背いたら、即射殺されてとうぜんなのが、現実の軍隊。

 

 でもって。銀河英雄伝説では、登場人物が功績を上げては、どんどん階級が上がり出世していきますが。現実は。

 二等兵がいくらがんばって、ちゃんとした功績の結果を残しても。みんな一等兵にもなれないまま、戦死していったのだよな……

 

 だから、軍曹なんていったらさらにすごい。下士官って職業軍人だから、徴兵されて一定期間任期を務めれば退役できる兵士とは違う。下士官って前線ではいちばんの主力。兵士を率いて自ら最前線に立って突撃しなければいけない責任の地位の、切り込み隊長です。並みのひとにつとまりませんよ。死傷率いちばん高いのですから。

 

 

 少し歴史を知ると。戦時中のこの日本も。学徒出陣で大学生がいきなり少尉となって、前線へ行かされましたから。(じっさいは適性のない学生は下士官にされたのですが、あまり知られていない)

 だったら大学さえ入れば、自分も少尉になれるかも? なんてこと、甘すぎます。

 きけ、わだつみのこえ で明らかなように、学徒出陣なんて手の打ちようがないまで追いつめられているときだけ。ほんらい一流大学にいた、平時であれば将来有望な学生が、絶望的な戦力差の前線で、無為に次々と戦死していったのですから。

 

 現実は。防衛大出以外は、どんな一流大学を卒業していたって、自衛隊に入ったら。幹部候補生コースに進まない限り、最初は二等陸士とか、つまり二等兵からなのですよね。

 

 もちろん原作者の田中芳樹氏、さすがに歴史に詳しい巨匠だけあり。こんなことわかっていますが。

 以下はネタバレになるので、原作を知らないで初めてリメイクアニメを楽しみにされるかたは、読まないでください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 外伝では、一流大学にいたけれど、戦争とは関係ない分野の学生が、徴兵され二等兵として艦に乗っていて。ラインハルトのピンチのとき、その専門知識を使って助けています。

 

 原作者はほんらいは歴史小説を作りたかったというので、単に娯楽作として割り切って作った銀河英雄伝説は、あれほどの大ヒットとなったのに、原作者としては不本意らしいのも有名なところです。

 

 

 なにより。

 ヤンが宇宙でもっとも嫌っている人物。あの誰もが知れば、きっとみんな大嫌いな、腐敗した卑劣な政治家、最悪最低の悪役とされる、トリューニヒト。かれってとんでもない大物ってわかってしまいました。最後までよく原作を読めば。かれは、ヤンなんかがいなくても、むしろあんな大戦争していなくても、原作エンディング後の世界と大して変わらない世界にしていたはずの、政治的工作をしていたって、明らかになりますから。いや、これではトリューニヒト、根強いファンいるはずだわ。

 

 そんな社会派な深い作品の現代のリメイクだから、期待して待っています。