この前さらりと書きましたが。実は、精神科での緊急診察って、とんでもない特例なのです。よほどの危険がないとありえない、非常事態なのですよ。

 だって、おそらく患者の両親と思えるご夫婦が、精神科の受け付けに向かって、とても深刻に必死に、「待っていられる状態ではないから、いますぐ診察してくれ」などと頼んでも。

 受け付けは、「正式な手続きをすませてからでないと、お受けできません」みたいな答え。

 そんな押し問答を一時間以上繰り返しても、けっきょく緊急診察は認められないという……いやはや。

 

 だからいまとなっては笑い話ですが、わたしが緊急診察を受けたときなんて。受け付けが明らかにいつもと違い、妙に落ち着きがなく、おまけに。受け付けのみんな、わたしが顔を見ていて、視線があったら、即、さっと目をそらしていたという……うわあ……

 だからわたしが入院しなくて済んだのはまさに奇跡的。診察から戻ったら、看護師が。「なぜ無事に戻ったの?」って、信じられない顔で見ていました。

 

 

 ほかに例を挙げると。わたしが、むかし。こんな躁病状態だったとき。看護師に相談したら。その看護師は、「よく自分をわかって、打ち明けてくれたね」と、先生に緊急診察を頼んだことがあったのですが。

 そのときなんて。わたしの主治医、わたしを一目見るなり。即、その看護師に電話して。「まったく悪くないじゃないか! もっと早く診ないといけない患者、たくさんいるんだ!」と激怒していました。

 いや、先生が激怒ってびっくりしました。いつもとんでもない穏やかな理解ある先生なのですよ。

 だって。

 

 とある診察の時。待っていたら。診察室の中から。(ちなみに、ふつうは中の会話なんて外では聞こえるはずはないのに)。女の子の声で、「いやーっ! 助けてーっ! おかあさーん!」なんて絶叫がしていて。それが一時間くらい続き。そして、診察室から出てきたのを見たら。

 おそらく鎮静剤とかの注射で眠らされた、当時はやっていたガングロの金髪ヤンキー少女。

 こんななのに、先生は。

 次に入ったわたしの診察の時、いつもと変わらないけろりとした顔で、「あ、気にしないで。いまの単なる家庭内暴力の子だから」と間延びした声でさらりといっていました。

 

 精神科ってシャレになりませんよ。単なる鬱病なんかで入院するな! って世界ですから。お目汚しですが、失礼しました。