むかしむかし……世界には四季、春夏秋冬がありませんでした。
 南北の違う国によって、いつまでも変わらない冬の国、春と秋の国、夏の国……それは安定した生き物たちの生態系を築いていました。気象も落ち着いていて、いつも穏やかでした。
 動物たちはみんなその国に栄え、むやみに移動することなくその地の植物を食み、自然の生存競争こそあるものの平和に暮らしていました。
 
 しかし、世界にいつのころからか現れたとある種は違ったのです。かれらは他の国を妬むようになりました。なぜ妬んだって、欲がありすぎたからです。
 過酷な寒い、冬の国のかれらは春秋の国の実りと暖かさを求め、平穏なはずの春秋の国のかれらは夏の国の情緒と安寧の作物をうらやみ、厳しい日の照り付ける夏の国のかれらは冬の国の豊かな動植物を欲しました。
 
 そして戦争が起きました。こんな愚かな行為をする種は、まず他にないでしょうね。かれらは異国の同族を殺したのです。国内の反対派も殺したのです。
 
 世界は無残に壊れました。取り返しがつかないほど多くが滅んだのです。
 
 そして……世界の中心である、大地は悲しんで、泣きました。大声で叫びうつむき涙を流したのです。
 だから……大地の中心となる、「軸」は傾きました。
 
 結果、世界には四季が訪れたのです。
 それは大きな犠牲を払いました。空と海、それに大地はとても荒れ狂いました。
 多くの生き物は、その四季……それがたった一週するまですらも、生き延びられません。生きられる動物も、たいていは無理をして、世界を移住したりする必要に迫られました。
 
 しかし、そんな結果を招いた当の、『種』はむしろ四季のある世界に適応したのです。かれらは悲しみと怒り……それを克服して強く生きました。
 さらにかれらは知りました。この世界の空に浮かぶ、月が……そんな大地をまたまっすぐに立てようと、努力していると。そう、かれらは感じ、知るだけでなく考え、学べたのです。
 
 
 貴方ならご存じかもしれませんね。この大地が丸い球でできていることも、地軸が傾いていることも……そして、そのかれら……『種』とは、なんのことなのかも。