精神科の主治医から「きみうつ病ではないでしょ」の一言で、抗うつ剤が外されたのはおととしだったかな。たしかに過去とはちがいいまの私に憂鬱な症状はない。今年は抗不安剤も外された。
 これは精神科の患者にとっては信じられない措置である(みんな、「そんなことってあるの?」とか「大丈夫?」とか「うそでしょ」とか連呼していた)。
 
 抗うつ剤がなくなるなんて、すごいことだ。うつ症状が出たひとに初めてその薬を飲ませると劇的に変わるから。私も最初そうだった。
 しかし、残念ながらその薬は発作時に症状を重くした感じもいまとなってはある。うつの状態でいやなこと思い出すのは単に自分の中だけの抑うつで済むが、そう(躁)の状態でイライラすると、周りに危害加えかねない怒りの爆発となるのだ。
 まあこれは私の個人的な症状だから第三者が参考にしてはいけないだろうが。ちなみにその薬はアモキサンカプセル。
 
 対していま飲んでいる中でおそらくいちばん強いのはジプレキサザイディス。これは新薬で、多幸感発生するというかなり効くがある意味危険なものだ。麻薬みたいなものだから。副作用で肥るという、とても困った症状が出るし。
 まあそのおかげか、精神はかなり安定してきた。
 
 しかし過去の妄想と現実の境目が不明なままだ。こればかりは仮にフラッシュバック(自生思考による発作)が無くなるとしても、どうしても治らないだろうと自分では思っている。
 精神病は回復しても完治はしないと習った。精神科医は患者が病気かを診断することはできる。しかし、誰かを診察して「あなたは健常者です」と診断することはできないという。
 
 このジレンマの迷宮の中、私はずっとさ迷ってきた。これからもそうだろう。私にはどうやったって、この世界の現実は見えないのだ。
 というか……精神を病んでいなくても、現実を完全に把握できるひとなんかいないのだろうな。