帰宅途中路上で喫煙しているのがいた。人気はあまりなかったから直接は危害はないが、後ろをついていく形になった私は、「投げ捨て」を想像した。

 

 そいつを観察とした。六十代かな。すると定年退職後だ。しかもまだ年金もらえない年かもしれない。

 すると大学出ている可能性はかなり低いし。石を投げると大卒に当たる、などと私の学生時は呼ばれたが、それでも比率にするとまだ六人に一人の時代だった。そのふた昔は以前の世代だもの。

 その歳なら若い頃に職に就き、バブルを謳歌していたろうな。日本が元気だったころに思う存分働き、そしていまの若者なんか真似できないほど遊んでいた世代だ。

 

 それのツケを食らったかのように、三十代でバブル崩壊し、路頭に迷ったかもしれない。当時その年代はリストラの対象だった。大卒のエリート社員の幹部職は会社はかわいがるのに、そうした平の労働者は簡単に首切られていたのを知っている。

 若い頃仕事はきついだろうが月給五十万当たり前にもらった世代だろうに、再就職後は手取り二十万なら恵まれている方……なのが、私の近くの工業団地の現実だし。

 まあいまの若者なんかより、はるかに恵まれた人生だろうが。おそらくは結婚して子供どころか孫までいるかもしれない。私は繰り返すが、経済面から結婚できないし、子供を作るなんて考えられない。

 で、そいつ結局。

 

 タバコを火のついたまま、近くに枯れた草地のある道路に捨てる……火事の危険を考えないのか!

 潔癖な正義漢なら、これに怒って注意していたろうが。

 かれを問いつめて責めるような独善者ではないつもりの私だ。

 

 その程度で犯罪者を作るのは、ウィッチ・ハンター(魔狩人、某TRPG『ウォーハンマー』)と呼ぶ行為だ。魔女狩りのヒステリーを繰り返すような愚行だ。

 模範解答としては、そっと靴底で火をもみ消してやる、ただそれだけ……と行き着いた。

 私の作品で某キャラが携帯灰皿をプレゼントするシーンがあるが、そこまでいくほど私はお人好しではない。人によっては偽善者と呼ぶだろうし。