一行は魔王とその軍勢、さらには異国の刺客との対処に解決法を案じていた。

「いくらでも吸いこむ魔法の無限袋……でもそんなものどうやって探す?」

 涼平のうなりに、逢香が答えた。

「過去光の文明の『電子式役割演技遊戯』というものでは、冒険者の定番にして必須のアイテムだったらしいわ。どこにあるかは調べるしかない」

 真理は意見した。

「困難だろうけれど……。街へ手配書を配ろうかしら。懸賞金がいるわね、お金こそたくさんあるけれど、軍の維持費。どう資金繰りを……」

 と、突然千秋がさらりと言った。

「無限袋、それってこれのこと?」

 平易に愛らしい笑みを浮かべ至極あっさりと、真っ白で手のひらサイズの絹製の光沢ある小袋を手にしている千秋だった。

 この場の五人、驚愕した。

 優等生戦士逢香が叫ぶ。

「千秋ちゃん! もとい将軍閣下、どうして……聞くまでもないか。無敵の超能力者だものね」

「途方もない願いだったけれど、事態を打開する手としてすべての生きる者の運命が掛っているから、叶えられたわ。他人の願いなら、私にできないことはないわよ。相応の代償があれば……すごい疲れた。数週間、安眠させてね。おやすみなさい」

「代償か……魔王を直接倒す願いは無理らしいから、私たちの力とあるいは犠牲が必要かな? 名誉に身を捧ぐことは武人の本懐」

 逢香のセリフをはっとおれは嘲った。

「名誉か、くだらないな。おれは自由をなにより尊ぶ」

「とかいって、直人もいまは武人なのよ。拳銃装備するのでしょう?」

「炸薬式の火器はおれにはいらない。王国はかなり鋳造技術が上がったようだから、街の工房にエアガンを制作してもらおう」

「エアガン? 子供のおもちゃなんて……」

 逢香は驚いた様子だが、真理が説明した。

「気圧が高ければ立派に殺傷兵器となるわよ。太陽光とかの加熱で加圧されてエアタンク膨張暴発の危険があるけど……って、直人なに首から下げているの?」

 真理の問いにおれは得意気に答えた。

「名付けてフリー・ドロー・ホルスター。短剣の投げを意識して思いついた。クロスボウ・ピストルを胸ポケットから吊るしたホルスターにしまう。腰にしたホルスターからの抜き撃ちでは「抜き、狙い、撃つ」と、トリプルアクションになってしまうが、これなら一息に横へスライドして撃てる。かなり優位に戦えるはずだ」

「直人……貴方って殺しはしないのね」

「おれは戦士ではない。ただ、虐げられるすべての弱き者の正当な権利として、強者から盗む。それだけ」

「なにを盗みたいのか。直人は地位や権力や名声には無縁に思える」

「もちろん酒と金と女さ、とはまさか直人でも口にできないよな」

「そういう涼平はどうなんだ? 神官といっても下心あるだろ」

「戦士は戦うのに理由を求めないのさ。ただ戦い、勝利することを目標に生きる。戦士でなければこうはいかない。魔法使いなんて、そもそも冒険に出る方が珍しいし。神官は教義に殉じて戦うから、理由はある。独善的であれ。盗賊は勝つことより利益、か」

「戦士は名誉に殉じるのでは?」

 このおれの問いに時雨が答えた。

「忍者は名誉では戦わないよ。目的のためなら手段を選ばないんだ。僕みたいなチビでもなれる」

 おれは内心時雨に賛同していた。おれも目的のためにはなんでもする。ただし、それが戦いを選ぶことではないことが、戦士兵士軍隊たちとの決定的な差異なのだが。