情報はこんな辺境の僻地でも真理の通信魔法で、次々と入ってきた。そして。
あくまで噂に過ぎない女ガンマンが、いきなり実話となった。真理の魔法で『千里眼』ができたのだ。虚空に映像が投影される。
なんて美少女……真理にも迫るな。まだ線の細い体躯のローティーン、相手にするには幼すぎるが。
ん? 涼平のヤツ、息を荒げている。禁断のロリコンセンサーに触れたな、どうやら。破戒僧、いや破壊僧め。
その女の子が瞬時に左右両手で一丁ずつハンドガンを抜き、右左とも次々と連発して、たっぷり30mは離れた目標の数々をすべて一撃で砕いている。まさにマークスマンだな。彼女こそ真のガンマン。
おれなんか抜き撃ち0.7秒ほどかかるのに、彼女は0.4秒くらい。おまけに多連発ハンドガンの左右スイッチガンナー。これは決定的な差だ。致命的といえる。仮におれの道を遮るなら、やっかいな敵だな……
は、将官さまだ参謀さまだなんて祭り上げられても。地位なんて暗殺者に一撃されればあっさり死んで無効になる有名無実だ。
権力者になってなにが楽しい? 毎回飲み食いするたびに、毒が入っていないかと疑心暗鬼に囚われることが? まあおれには真理がいる、毒なんか見抜いてくれるが。
それとも腹心と信じていた兵士が、参謀の地位と財産に目がくらんで裏切る可能性は? 涼平なら信頼できるが。逢香も。知り合った時雨に千秋はどうかな。
と、危険な方向へ思考が傾いていたが、真理の声に現実に引き戻される。
「あの両手撃ちハンドガン使いの子は遠い異国の都市育ちよ。異色な文明の……過度に発展しているかも。他の国に火器を持たせないための『刺客』として生きているらしいわね」
「そうか。敵にしたくないな」
「まったくよ。だってそれより魔王が野に放たれたことで、奈落の門が開いたの! 下位悪魔の軍勢が迫っている……人間同士戦っている場合ではないわ!」
「悪魔とは下位であれ、悪鬼とは比べ物にならない強さだろうな」
「少数精鋭の狙撃兵隊、突撃兵隊、機動兵隊を組織すべきね。それで連携さえうまく取れれば、いくら腕利きとはいえ一人に負けるはずもない……あら?」
真理はあわてて言う。
「前言撤回。王国の火器部隊は、彼女の襲撃を受けて壊滅したというわ!」
涼平は戦慄した声で取り乱し叫んでいた。
「火器工場だけでなく、実戦部隊が壊滅だと……馬鹿な?! もと反乱軍の千秋のたった千の雑兵にだって、三十丁は提供してきた王国の本隊が。軽く数千の火器を持っていて不思議でないのに……」
「最精鋭の兵士たちの部隊と、生産工場と弾薬庫に保管室をすべて破壊されたわ。死屍累々の大惨事よ。派手にみんな吹き飛んだ。これだから火薬炸薬式の火器は……」
「なにか手はないか? 魔王に対抗する戦力だった、王国の精鋭が潰された上にこんな刺客。こんなこと解るか、この低能な名前だけ盗賊参謀!」
おれは涼平に怒鳴り返した。
「解るわけがないだろ、こんな非常時。おれを馬鹿にするなら、おまえが考えろ、のろまの腐れ背徳神官!」
涼平の目が鋭くなり、緊張が走った。おれとの喧嘩は7分勝つ強き悪友……が。
「ひとつ手はあるわよ」
との真理の声に、この場のおれたちは注目した。
「神話にある、魔法の無限袋を探すの」