それはこんな秋の過ごしやすい好天の昼日向からうす暗い、煙草の紫煙に白濁した場末との呼称がふさわしい居酒屋でのことだった。
「横島直人。貴方を王国軍独立遊撃実戦部隊前線参謀に任じる。下士官長待遇だ」
との命令口調の図太い声に、席に深くもたれ半ば眠っていたおれこと直人はいささか酩酊した酒のぐるぐる回る頭を、ふと現実に戻らせた。なんかとんでもないこと言われたな……相手は王国士官か。部下を三人連れている。
同席していたおれの女、魔法使いの真理(まり)があからさまに驚いている。
おれは直人。横島直人(よこしま なおと)という。おれは今日とんでもない事態に陥っていた。まんまとぼったくったあぶく銭で真っ昼間から居酒屋で酒を飲んでいたのだが。しかも女……それも最愛の……連れで。これだけでもおれには珍しいのに。
しがない駆け出し盗賊のおれに、王国軍の参謀になれだって? 最初から下士官長で。いや、これは夢だな。寝なおそう。
「直人! 馬鹿、起きなさいよ!」
真理が呼んでいるのは承知していたが。おれみたいな貧乏人の三十歳のオヤジが、真理みたいな銀の針を思わせる清楚で潔癖な美少女、優等生メガネっ娘魔法使いと居酒屋にいるほうが夢に決まっている。真理酒は飲めないし。だいいち未成年。
衣装からしておれの一張羅の黒い皮革の鎧に、真理の高級な紫色のビロード製ローブがいささか不釣り合いだ。って、あれ……おれ大金稼いだような気も。が。
ここでおれは睡魔に襲われ、眠ってはいけないのに席でテーブルに突っ伏していた。は、どうせ真理とならもっとお洒落な居酒屋にしろよ、おれの馬鹿……。声がする……おれが生まれる前の……いつかの記憶?
……
……
……天界。そここそは時間と空間がわき出る宇宙の源泉。そこでは神々がサイコロを使って、罪の自覚もなく愚かしく残酷な賭けごとを興じている。掛け金は人間と妖精と小人……それから某大な魔物の命だ。
神々のなかでも間抜けで浅薄な『紙』は、その日もあるじかみさま(God Master以下GM)と対して、悲鳴を上げていた……
「あちゃーっ! ぴったりHP0だ。またかよ……」
「って、おまえの馬鹿さ加減ゆえだぞ。少しは懲りろ。雪ダルマに殺されてどうする!」
「横島直人。貴方を王国軍独立遊撃実戦部隊前線参謀に任じる。下士官長待遇だ」
との命令口調の図太い声に、席に深くもたれ半ば眠っていたおれこと直人はいささか酩酊した酒のぐるぐる回る頭を、ふと現実に戻らせた。なんかとんでもないこと言われたな……相手は王国士官か。部下を三人連れている。
同席していたおれの女、魔法使いの真理(まり)があからさまに驚いている。
おれは直人。横島直人(よこしま なおと)という。おれは今日とんでもない事態に陥っていた。まんまとぼったくったあぶく銭で真っ昼間から居酒屋で酒を飲んでいたのだが。しかも女……それも最愛の……連れで。これだけでもおれには珍しいのに。
しがない駆け出し盗賊のおれに、王国軍の参謀になれだって? 最初から下士官長で。いや、これは夢だな。寝なおそう。
「直人! 馬鹿、起きなさいよ!」
真理が呼んでいるのは承知していたが。おれみたいな貧乏人の三十歳のオヤジが、真理みたいな銀の針を思わせる清楚で潔癖な美少女、優等生メガネっ娘魔法使いと居酒屋にいるほうが夢に決まっている。真理酒は飲めないし。だいいち未成年。
衣装からしておれの一張羅の黒い皮革の鎧に、真理の高級な紫色のビロード製ローブがいささか不釣り合いだ。って、あれ……おれ大金稼いだような気も。が。
ここでおれは睡魔に襲われ、眠ってはいけないのに席でテーブルに突っ伏していた。は、どうせ真理とならもっとお洒落な居酒屋にしろよ、おれの馬鹿……。声がする……おれが生まれる前の……いつかの記憶?
……
……
……天界。そここそは時間と空間がわき出る宇宙の源泉。そこでは神々がサイコロを使って、罪の自覚もなく愚かしく残酷な賭けごとを興じている。掛け金は人間と妖精と小人……それから某大な魔物の命だ。
神々のなかでも間抜けで浅薄な『紙』は、その日もあるじかみさま(God Master以下GM)と対して、悲鳴を上げていた……
「あちゃーっ! ぴったりHP0だ。またかよ……」
「って、おまえの馬鹿さ加減ゆえだぞ。少しは懲りろ。雪ダルマに殺されてどうする!」