東京は萌とジャパニメーション文化の発祥の街、昼間の秋葉にて。定番のこんな施設……メイド喫茶にはとても場違いな正装した男女がいた。

「とんだ不始末だな、公共の施設への、バイオマテリアル……キメラの襲撃とは。起こってしまった事故だが、残骸の後始末をする身にならないものか」

 と、やれやれと言う体格の良い三十路のスーツ紳士だった。

 スラックスに正装したすらりとした妙齢の女性が、それに辛そうに意見していた。

「しかしこれがみんな中学生たちの集団幻覚というのは、無理がありませんか? 事後処理は不完全です。キメラの角や牙とか、一部生徒たちに持ち去られていますし」

「ああ、無理がある。だが、まさか犠牲を出さず戦い抜くとは。立派な少年たちではないか。かれらが正しく、強い。そもそもこの企画考えた馬鹿は誰だ? そいつに比べたら!」

 女性は深々と紳士にお辞儀した。

「確かに。しかし、敵意を植え付けたのは失策です。キメラは来るべき脅威に対する『援軍』で、この日本の世界に先んじる大いなるアドバンテージなのに」

 紳士は一杯二千円のロシアンティーで口を湿らし、穏やかに聴いた。

「『彼』の容体は? βテスターとして終わらせるには惜しい」

「病院へ収容したままそれきり、連絡はありません。仮にも魑魅魍魎が二体同時に憑依しているなど、考えられない事態ですから」

「おまけに暴走する危険があるしな。では彼と戦ったと言うもう一人、は?」

「放置して構わないでしょう。そちらは単なる非力なガキです」

「しかし、スキルは計り知れない。将来性があるな。その将来も、閉ざされそうだが」

「はい、あらゆることが無意味に帰するのですよ! もし時空が轢断破砕されたら……」

「それを防ぐ手が、専制体制への移行というのが愚かしいな」

「策を……両方とも避ける手を考えるべきです」

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