明けて朝。今日は平日だが仕事もなく休み、アパートで満足した生活を送る予定だ。昨夜の狩りの獲物を調理する。
鹿肉尽くしだな。食費が助かる。とりあえず冷凍庫に保存。今日食べる分は大鍋で骨からダシを取り、野菜と入れて煮込んでスープにする。塩コショウ、醤油で簡単に味付け。
料理酒を入れてもいいな……いままであまり余計な調味料は買う予算が無かった。まして外食なんて出費はとても考えられなかったし。
で、熱々を皿に取りスプーンですする。くせのある匂いだが美味い。こんな贅沢……
ひもじい時に不味い物なし、というが。さもしい時に美味い物なし、だ。生活にゆとりができるのは良いな。飛竜ゴーストがいてくれれば、生活に困らないはず。
しかし乱獲は避けなければいけないし、そもそも密猟行為であると思うが、詳しい法律は知らない。僕は単なるレベル低い文学部出だからな。
満足すると、机に向かいパソコンを立ち上げる。ネットでSNSを楽しみ、僕自身も無料作成サイトで、自作小説をアップしていた。内容は主に甘ったるい恋愛ものだ。
横繋がりのブログ友達も増えた。どうも女性は恋愛ものを、男性は戦闘ものを好んで作る傾向が見られるな。
それらのたいていは『ラノベ』に属するものだ。学園ものか、中世西洋風ファンタジーがかなりのウェイトを占める。趣味に打ち込めると幸せだな……
僕の作品はどれだけ評価されているのかな。読者からの感想は、無い時はまるで無いが、多い時は十件くらいつく。日々のアクセス件数は、三ケタを維持している。四ケタの壁は、なかなか破れないが。それも純粋な作品読者は少なく、大半は商売目的だ。
と、チャイムが鳴った。見ればこの前の物乞い……チェーン超しに応対する。
「来ないでくださいと、言ったはずです。そしてその約束をしたから、お金渡したのです」
「だってよ、姉さん。他に頼れるところ無くてよ……お願いだから、後生だからまた恵んでくれねえか」
「これを持って行って。そしてここへ二度と来ないでください。約束を破っただけでなく、さらに借りを作るようでは生活できるはずありません。来たら警察を呼びます」
僕はゴーストが焼いて、その後塩漬け冷蔵保存にした鹿肉の塊、たっぷり2kgを渡していた。僕の倍ほども生きている歳の男は、へこへこして去って行った。
……こんな現状なのに、いまの国家政府はなにをしているのかな……職に就けないものを保護できないようでは、国の質が疑われるというものだ。震災の傷も癒えないのに。
僕は偽善者だよ。お人好しに思われてもね、自己満足に浸りたいだけさ。
で、机の前に座りパソコンで執筆に戻った。金にならないと知っていても、趣味の創作は楽しいし止められないな。でも。
僕の彼氏は……こんな僕をどう見ているのかな。互いに依存しているのか、していないのか……それすら解らない。
彼もフリーターで、倉庫内作業。フルタイムで働いても月給20万円に届かない。
某北欧王国のランキングだと、Aが貴族、Bが社長、Cがサラリーマン、Dが肉体労働者、Eがフリーター階級と位置付けたという。するとSが王族でFが乞食か。
なんて傲慢な人間がいるのだろう。このランキングを発表したのはさぞかしできる高学歴エリートの社長か、生まれながらの大富豪貴族特権階級なのだな……
とにかく僕の創作に、ドラゴンが加わった。