あれ? さっきまでなにかファンタジックな夢を見ていたような……でも現実に戻れた、図書館司書の仕事が待っている。ほっとする……しかし。

 図書紙媒体の限界は近いな……いまどき電子書籍の方が、トータルで見れば断然安いもの。ひとたび端末仕入れれば。ネット環境が必要だし、端末は一つまだ数千円掛かるとしても、それを一年も使い一カ月に三冊も本を買えば、明白に紙媒体本より電子媒体の方が安く済み、しかも場所を取らない。強いて言えばまだブックオフの方が安いか。

 よく出版社は苦し紛れに、『紙の本の暖かみ』の良さとか宣伝するけれど、所詮詭弁。電子媒体も画素が細かく鮮明になったし、雨に濡れても平気だし、落としてもまず壊れないし、軽いし小さい……バッテリー持ちも良くなっているし。

 寿命もメモリ劣化が新素材で改善したとかで、紙の本でも限界とされる数十年たっぷり持つと広告されるし、技術革新の速さからいって、さらに軽量化、低額化された上、保守性と強度も増す見込みだ。後継機への互換性も。

 だからといって、『貴方のブログを低額で電子書籍化します』なんて広告に踊らされてはいけない。ネット小説ならいくらでも定額制で閲覧し放題なのに、自分のサイトのアクセス数が少ないのは、僕を含むC級アマチュア作家誰しも悩みの種だろう。

 単純計算で一カ月四千円、一年で五万円くらい定額制は費用掛かるのに、そして日本のネット普及件数は数千万件あるはずなのに、電子書籍の売り上げは全部合わせてせいぜい年額数千億円。つまり一人一万円しか掛けない計算。読者の数ってこんなに少ないんだ!

 これは決定的に通信費と比べるとイーブンを割り込むし、かつこれから低コスト化される計算だから釣り合わない。パチンコですら数兆円産業なのに。

 つまり、印税で元が取れるなんてまず絶望的だ。そもそもそう簡単に元が取れるなら電子書籍からの誘いで、電子出版費が著者の有料負担となる道理がないだろう。

 元が取れる作品だというなら、その業者が肩代わりしたって儲かる理屈なのだから当然だ。逆算すれば、一千万も発信者がいて、年間千億の稼ぎしかならないとしたら、年間一万円にしかならないのだから。これでは数万円出して電子出版した過半は損する。だいたい、人気作しか読まないのが当然だし。ネット無料動画ですら、十万件も閲覧があるのは珍しい。

 ええと、机上の空論では発信者が百分の一の、十万人なら。平均年間百万円稼げる計算になるが。現実はそう甘くは無い。だって。

 本屋に入れば新刊が平積みされているが、それを普通の客は手に取るか? いや、馴染みの雑誌や好きな作家ないし出版社のコーナーへ即刻移動して、無名の新人の新刊なんてまず触らないだろう。いくら並みのあまねく賞のタイトル受賞作ですら。

 この点をネット検索すると……話題沸騰していても良さそうなのに、もう何年も書き込みが無いな。企業の圧力で消されたか? あ、電子出版は個人ですれば無料なのか。つまり。

 時代は移ろいだのだ。いまは全国民発信者の立場の世界へ変わった。限られた特権者のみがメディアに向けアートを発信して儲ける時代ではないのだ。

 あらゆる文化を全国民が定額制であれ、ほぼ無料で相互通信できるのが、現代なのだ。文化の享受に、それ以上の費用を割かないで済むのだ。