悩みはもう中断して、朝までをゆったりと睡魔の心地よい酩酊の中過ごす。徒然なことをいつまでも繰り返し考えるのは眠っていても止められない。こんな穏やかな眠り……学校でテストと成績、通知表に追い回されていたころはなかった。ATの可能性を模索する。

 過去記憶媒体はテープだったのだよな。ディスクに変わったが。それをコンパクトだから、と誤解している人は多い。事実はディスクだと、随意の個所に瞬時にアクセスできる利点からだ。テープ媒体は、順次にデータを読み書きするしかない。しかし、容量なら圧倒的だ。いまだに天文学的に巨大なデータを格納する場合は、テープ媒体も利用されているのだ。

 これを知らないでテープを馬鹿にするものこそ馬鹿だろう。ディスク媒体にしたって、メモリの小型化から、むしろ過去の媒体に埋没しつつある。現行を桁外れに上回る次世代記憶媒体の開発は難航しているらしいし。しかしそれさえあれば、ディスク一枚で映画数千作品入るというから……決定的に、ハードの差は出る。

 そしてハードソフト問わず人間の文化の進化は、戦争と共にあったことも否定できない。

 『ハードウェアに頼って戦争に勝利した試しは無い』などと小説内では言われているが。それは読者を誤誘導させる『二次元のお約束』だろう。現実はハードの技術競争こそ、常に勝利の鍵であった。

 しかし、経営戦略がハードの質の差を圧倒して勝利した事例は数多ある。ハードの正しい運用あってこそだ。青銅器は石器を駆逐したし、鉄器は青銅器を駆逐した。槍の発明で狩猟は有利になったが、弓矢の発明はそれを凌駕したし、銃は弓矢を圧倒した。

 だから現代において、戦争となれば……過去のような殲滅戦の愚策を、大国が執るものか。情報を活用しピンポイントで要所を速やかに制圧する。これは海神が言っていたし、女幹部賀茂芹菜が実践した。

 現地へ歩兵で乗り込み小銃弾撒き散らしての、消耗戦など愚の極み。それは敵より犠牲が桁違いに少なくても、超大国のはずのアメリカが破れたベトナム戦争が如実に証明している。自爆テロ横行したイラク然りだ。とっくに周知のはずだ。

 情報面を完全に乗っ取れれば、そもそも物理的に要所を乗っ取る必要すらない。クラックすれば容易に機能は麻痺するし、あるいは完全にシステムを乗っ取れればどんな細工も思いのままだ。

 ほんとうは肥大化する中なんかより、依然最大国防費の米のほうがはるかに脅威なのだ。かれらの『鶏鷹』派は、その気なら全世界征服してやるくらいの気でふんぞり返っている。だから政治的にも地理的にも反対の中は、急速に防衛力を増す必要があったのだ。露が出方として、むしろ中立とも冷戦とも取れる立場ならなおさら。

 自国の経済問題を、外国の軍事問題にすり替えているだけ。日本は経済・環境・資源ともたいへんなのに、それを国民に非難させないよう、外国との脅威を言いふらしている。

 右翼左翼はピエロだ。外交問題なんてしょせん政府の都合の良いように宣伝されている。

 現実は軍隊とは異国との戦争よりも先に、自国の治安を守るためにある。自衛隊も然り。つまり不満分子を弾圧、思想言論統制する……

 日本の環境汚染はひどいのに、それは黙視されている。福島原発メルトダウン時、浅薄な根拠のないカルト宗教の過激派は、東日本の人間はあと五年でみんな死ぬなんて吹いていた。それから何年かたったけれど、人口の千分の一も直接放射能の影響では亡くなっていないのに。報道は抑えられているが、被災者の健康診断結果が気になるところだ。

 ひどい汚染のただ中にあるが、これから問題になるのは放射能が蓄積される数十年後だ。どこぞの大国の過去の無茶な核実験で被爆した兵士の寿命は、五十歳くらいとの説もあったし。たしかにガンや白血病を招くのだよな。

 これらの現実から目をそらすため戦うべき敵を作り、その打倒と言う共通の目的に向かって進む。シナリオに踊らされたな。事実は容易く倒せる悪と言う大義名分を作って、それをいじめなぶり、勝利の優越感と戦利品にあやかりたいだけだ。

 つまり……ほんとうは外国なんかより、国内の経済と資源環境に問題がある。それを国際問題に外へ向けていたが、いざ異国と戦争とは矛先を向けるわけにはいかない。

 そこで、各国が共通して安易に倒せる強大な悪の敵をでっちあげる必要があった。それがほんらいのキメラだったのだが……これに竹田は便乗し、富と権力と軍事力を手に入れようと画策した。自らの欲望のままに。

 だから人間の敵は常に人間だ。キメラなどと遊んでいる時ではない。竹田我流……許せない。潰す必要がある。