タンは鬼の一雑兵としての粗末な衣服から、戦闘機搭乗員の飛行服に着替えて意気揚々と初陣に臨んだ。
鬼の身長の五倍はある、左右に両翼広げる、流れるような形状の美しい全面灰色の飛行機……これが自分のシック。プロペラとやらがエンジンとかで回され、疾風が巻き起こる。そして離陸! 軽快に曇り空に舞い上がる。
全面に二門ある正面固定機銃の試射を虚空にする。パパパッッッ! 放たれる銃弾。快調! 後は地図通り水平飛行。
たちまち前線へたどり着き、余裕で危険の無い高空から舞い降り地上掃射した。撒き散らされる機銃弾に撃ち抜かれ、無力な人間の兵士どもはあっさりと転がっていった。前線を縦断する。
慌てて逃げ惑うだけの人間たち……いままで強大だと信じていたもののなんと卑小な姿! この兵器の前には、敵にならないか!
余裕で降下速度を高度へ変えて離脱、たちまち反転して再突撃。歯止めの利かない殺戮、何十人殺したか……これは爽快だ。で、弾を撃ち尽くした。
悠々と帰還し無事に着地する。機体に損傷は無い。
戦果の報酬は金貨四○枚だったが、次にどん底に突き落とされる。
激しく問い返すタン。
「燃費と銃弾費、整備費に金貨三〇〇枚払えだって?! 暴利だ!」
巨鬼の師団長コーズは冷ややかに答えた。
「不服か? ならば機を去れ。我らの軍隊に、戦闘機の値段に釣り合わない搭乗員はいらない。訓練費と戦闘機費用にはもとから利子が無いだけ感謝しろ」
自室に引き下がるしかなかった。タンは泣いた。高すぎるよ、こんなんで金貨一〇〇〇〇枚稼げなんて……それまでに何人殺せば良いのか? 地上の人間兵士木っ端一人殺したところで、金貨一枚にもならない。むしろ、弾薬費で赤字になるなんて……ここで女鬼参謀チキから情報が届いた。
「倒すとしたら大物ですよ。敵指揮官、司令官、砦、城、街の要所の撃破……それに戦闘機と戦闘車両とドラゴンを狙いなさい。貴方ならできます」
そこでタンは俄然『賞金首』を探した。いた! 賞金首最高位は一機金貨七〇〇〇〇枚の戦闘機乗り、その名も撃墜王ダグア。人間の王国の元ソードケイン勲爵士……『魔王』とすらされた化け物とか。
お釣りが六倍の相手、魔王か、上等。化け物狩り、乗った!