俺は友人に科学トピックを提示していた。植物にもなんと動物でいう、知性に当たる部分がはるか過去あった痕跡が突き止められていたという学説……
「どうせ単なるとんでも仮説だろ」
「いや、植物から動物は別れたのは事実だ。太古のプランクトンの時代に。バクテリア、アメーバ……そして、大絶滅の悲劇は起こった」
「なんのことだ? 恐竜が滅んだのは山脈級の隕石の衝突によるものだって、ほとんど確定されているじゃないか」
「その以前に、それよりひどい生命種の絶滅があったんだ。五回に亘る大氷河期による。隕石で滅んだのは70%弱だが、こちらは最悪で96%以上滅んだとされる。そして……その氷河期は、植物が引き起こした」
「すると、光合成の過多による二酸化炭素の吸収か」
「その通り。仮説を立てると……植物は、他の生き物を捕食して食べる自らとは異端な動物に脅威を感じ、この氷河期を自ら招いたんだ。しかし結局は、植物自らも過半が死滅し、植物と動物は共生関係を保つことが繁栄の道となることに行き着いた。故に、知性をそっくり動物に乗り換え、植物は果肉を食われる存在に甘んじた」
「さすがにそこまで行くと、ファンタジーだぞ。五回も大量絶滅を繰り返したのでは大戦争だな。植物たちの逆襲、か。ま、現在地上でたった百年単位に半数の種が絶滅の危機にある方が、過酷ではないか?」
(終)