西暦が2000年を過ぎてからいまの日はどれだけ経ったかなど、誰が気にするだろう? 地底の暗闇の中、俺は作業室から暗視スコープ越しに手際良く遠隔作業ポッドのマニピュレーターを操る。
そうして地下の爆破された残骸を回収しつつ、地区の確認を進めていたが。痕跡が見つかる……やはり、自爆か。
やがて俺は作業を諦めて、チーフに連絡した。
「こちらのブロック、生命反応ありません」
「こっちもだ。今回の事件はここまでだな」
「ここには十万人からの人が詰まっていたと言うのに……」
「全地球内、六兆人からすれば微々たる数だろ?」
「しかし、なんだってみんな、こんな簡単に死を選ぶのかね。この地球の中に束縛されて、太陽とやらを拝む自由も無いから?」
「しかたないだろう? 宇宙移民なんて経済的にも物理的にも不可能と証明されてから何年経っていると思う? いや、もちろん私も空なんて直に見たことがないがね」
その先は言われなくても解っている。地球から人間以外の生き物がいなくなって久しいし、限られた有知識層以外は歴史も科学も知らない。
人は快楽の中にただ生まれ、地熱発電で動く介護アンドロイドたちの庇護の社会の中合成食を食べ、戯れては老いて死んで行くだけ。
そんな俺たちの『地球』は、しょせん缶詰なのだと。
(終)