巨匠アイザック・アシモフの主軸作。彼の小説はこの『ファウンデーション』(銀河帝国の興亡もの)と、(『鋼鉄都市』とかが代表な)ロボットものに大別、二分され、後期に両者が融合(これにはファンからの賛否両論だが)する。
これは日本でも有名な巨匠田中芳樹の『銀河英雄伝説』(これは宇宙戦争ばかり繰り返し)と比較されることが多いが、すごいのは『ファウンデーション』では同じ銀河帝国ものでも、ほとんど戦争をしないことだ。「戦争とは無能者の最後の避難所」と主人公が言い切っている。
舞台となる国、最初の惑星(これは戦後の日本みたいな立場だと、感想が多い)が軍事的脅威に晒されても、さまざまな手段で戦争は起こさずに乗り切ってしまうとは、アシモフは偉大だ……アメリカへの亡命者であり、後に輸血血液からの病気感染で亡くなられたのが悔やまれる。
ちなみに、第一巻の最初(正確には邦訳版の二番目)の短編を書かれたのが、アシモフ二十一歳で大学院生の時って……スキップか、エリートさまは違うな。ぼくはそのころ三流大を中退するのに苦しんでいたのに。
これは当初は短編集として最初の一巻が発行されたが、続く二巻・三巻は長編だ。それから長くブランク期間を経て、晩年の完結作へと至る。(厳密には、予定された期間の半分しか記されていないが)
しかし率直……晩年の最後の方の数巻は、SF考証、設定、ストーリー、テーマ……あらゆる素材は素晴らしいのだが、文体に関してだけは手抜きをした感がある。
「……(セリフ)……」、改行、
と、(キャラ名)は、言った。
という描写が繰り返されるから。病魔にさらされて、焦っていたのだろうか。
とにかく、最初の一巻だけでも(それはそれで完結しているから)読む価値は有り! これはロングセラーだから、ほぼ間違いなくどこの図書館にも置いてあるはず。というか途中から読んでは意味不明だろうな。
さて、これもネットではすっかりネタバラシしてあるが、元がしっかりした重厚な作品なので、別に調べてから読んでも評価はそう下がらないだろう。
SF考証の要素が、数学と心理学と歴史の土台からなる新たな(まあいまとしては古典だが、その学問が現実化されたわけではない)分野の自然科学、という堂々たるSF大作だ。