100円税込で買えたので読んでしまいました、いまさらですが『リア●鬼ごっこ』。しかし……ここに感想を真面目に述べます。

 改訂版のためだからだろうか。アマゾンレビューの酷評のようなものは、率直ほとんど受けなかった。たしかに話題作だから、読んでしまった感は否めない。これが無名の本なら、冒頭の一ページを読むことすらなく、書店で手にすることすらなく見過ごしていただろう。

 いま読み終え、単純に公正に評価するなら、Bランクの本である。並みのプロ級、ただし大ヒットとなるには決め手に欠けるはずなのが、皮肉にも愚劣な話題作として叩かれたから、との結論に行き着いてしまう。

 おそらく恐ろしいまでのレビューの評判がなければここまで熱を入れて読まなかったから、ランクはCかDに下がってしまうが、決してEやFのような評価とはならない。ちなみにSが新人賞級、Aが大ヒット級とする。

 レビューのような、極端な日本語の誤りはまず見当たらない。決して美文ではないが、純文学でもない娯楽作、そんな要素関係ないだろう。むしろ平易で簡単な文章で、すらすら読める。難解な要素はないし。そこを追及して批判しても始まらないし。

 オリジナリティとしても、冒頭から転がされるストーリーの設定と主人公の動機の位置づけ、これは見事だ。これなら、普通の小説として文句なく読める。ただし、普通なので金払ってまで最後を読もうとはしないだろうが、繰り返すが話題作なので読んでしまった。

 レビューで叩かれているSF考証の無さとか、ストーリーの陳腐さ、意外性の無さとかは揚げ足取りだ。それをいうなら叩くべき勘違い大作なんかたくさんある。むしろ世界観が普遍的で、受け入れやすいというものだ。

 中身スカスカとかレビューは言うが、それならばなんで天下の副将軍御老公はあのチャンネルで視聴率一位なのだ? 猫型ロボットは? 身体は子供探偵は? 大抵のメジャー連載は、パターン化していて、視聴者はお決まり(印籠とか、四次元ポケットとか、腕時計麻酔銃とか)の決め台詞場面を期待してその場面で盛り上がり、留飲を下げるというのに。

 それに、正統派だ。並みのプロが良く使う、読者の劣情を誘うような低俗な描写は無い。これは賞賛ものだろう。

 加えて読んではいないがこれがもし改訂前の初版本だったら、読者が激怒する超駄作だとしたら……素人の文でも、プロの編集者が校閲して推敲すれば、ここまで仕上がるという見本ともなる! これは売れるわけだ。

 ただし、あくまでBランク作。決して読んで感動したり、涙したり、激情に駆られたりはしないので、買ってまで他人に読んでくださいとはいえないが。普通のプロの駄作も同様なのだから非難できないのだ。とにかく、ぼくの押し入れのストックが一冊増えたな。

 悪名は無名に勝る、をつくづく実感した。もちろん、こんなのよりはるかに名作を作られているブロガーさまはたくさんいる! むしろ前向きになれる一作だった。