救難艦隊『黒色拍車』に、クラウンナイト提督から新たな厳命が加わった。地上部隊は完全に部隊を離れ孤立し、独立行動するものと。艦船戦力は、宇宙艦隊部隊にすべて集中させることと。
このため、地球から離れることを決断した病院船女船長ウィッズだった。目下、有志の戦力は地上へ残れ、と指示する。
そしてユウキらは地上に残ることにした。エリック、ロウ、ヨウ、公星も同様だ。もっともロウの戦闘艇は彼女の私物、所有したままだったが。
この意向を伝えると、船長ウィッズは好意的に、祝福の賛辞を送ってくれた。
「諸君らの無事を祈るよ、どうかつつがない旅を……」
こうして病院船、『平和の家』号は離陸した。ユウキたちは、これが見納めになるとは考えてはいなかった。しばし、見送り……
エリックは切りだした。
「自由の身となった私たちですが。目下の懸念は……」
ユウキは答えた。
「ジオンのモビルスーツに対する、戦力の欠如ですね」
「その点は、お任せください。モビルスーツといかなくても、河馬鳥を搭載予定だった連邦兵器ならおそらく、私のOS割り込みで乗っ取れます」
公星は申し出た。
「私のまとうフルアーマーなら、無敵です。ご注文はオーダーメイドで受け付けております。まさに宇宙の戦士! 鎧だけで武器はありません。愛こそが世界を救うのです。だから私は歌うのです。よほど愛に満たされていない、戦地の飢え渇いた貴方たちへ向けて……」
ユウキはかぶりを振る。
「なにも、戦闘車両に乗って戦うことだけが戦争ではないさ。オレは平和を愛するものとして、戦争を憎む……みんなもそうでしょう?」
ロウは寂しげに意見した。
「そうでもないわ。以前の私なんか完全な甘ちゃんだったわ。戦争へ行って武勲を上げて、英雄になるんだなんて夢想して。でも、この戦争から眼をそらして安穏と生きている、地上の富豪連中よりはマシなつもりよ」
エリックは通信機をいじっていたが、ほっと安堵した表情になった。語る。
「戦闘車両とまではいきませんが、捨て値で水陸両用キャンピングカーが売られていますよ。目下しばらくの私たちの拠点としませんか?」
公星も通信端末をいじり言う。
「あれ、連邦61式戦車は生産ライン活発ですね。これでは生産台数より、操縦士の数が足りなくなる勢いです。戦闘機フライマンタも……ドップ戦闘機よりスペックが劣りますが。いずれにしても、ジオン一つ目の悪鬼、ザクに敵う兵器ではありませんし」
「それらを鹵獲することは、きっと私ならできます。しかし、戦争には関わりたくないですね」
ヨウが意見していた。
「青龍刀機に、適当な母港ないし母艦が必要です。補給なしには稼働しませんから。ですがどこの施設が信頼して利用できるでしょうか?」
エリックは答えた。
「難しいですね。民間の中立ドッグなんて、地上にあるでしょうか? 整備抜きに補給だけ済ませるなら、どこにでも民間施設はありますが。私の技師としての腕をしても、道具に資材が無い事では……」
「当面はそれで済ませるしかない、ということですね」
ユウキは、サイド6に残してきた妻を切なく偲んでいた。無事に暮らしているだろうか、家事はどうしているだろうか。自分の稼ぎだけでは、満足な収入にならない。大作家の妻に比べたら微々たるものだ。だが、後戻りはできない……
後書き 二次創作+コラボ作という、我ながら無茶な企画も進んだものです。少し休みがちになるかも知れませんが、連載します。