私は連邦軍技術士官エリック特務准尉。私はメカニックと同時に、海兵隊要員も任された。なまじ地上の重力に縛られて生きているから、コロニー住民に比べると肉体的に強靭なのだ。


 さて、私は特務准尉だが、この特務という言葉を貴方は知っているだろうか? これは下士官兵士上がりの証拠なのだ。私は士官学校を出ていない。そもそも、ハイスクールすら通わなかった。地上の職人見習いとして、親方のもとで電子機械工学を専門に教わりながら働いていた。


 そんな私が徴兵され、二等兵となったが。敏腕な第一線のメカニックとして通用することが解ると、一気にいまの地位に据えられた、って筋書きだ。前線行きも避けられたことで、多くの徴兵された二等兵は私を羨んだ。


 ここで私は驚いた。極秘裏に進んでいたのだ、モビルスーツ開発が。連邦はジオンより五年とか十年とか技術的に遅れている、とされる。それでもモビルスーツ計画の最精鋭機『ガンダム』は、一機で戦局を一転しかねないほどのスペックを誇る!


 兵器の火力・装甲・機動性・ブースト推力、どれをとっても信じられない能力のモビルスーツだ。戦艦主砲並みの出力のメガ粒子砲を、『ビームライフル』として装備している。


 まだ完成こそしていないが、シミュレーター計算上は敵味方同じレベルのパイロットに操縦させれば、ザク相手に一対一なら必勝、一対二でも優勢、一対三からで苦戦だが、高速なので離脱可能という素晴らしい性能だった。


 もっとも、私はガンダムの担当ではなかったのだが。その量産機GMの開発でもない。GMは一対一ではザクに火力と機動性で二、三分勝る程度の性能だ。本家のガンダムの二分の一機ほどの性能か。もっとも量産ラインに乗せるのだから、コストは桁違いに廉価なはずだ。


 それからボール。モビルアーマーということだが、これは劣悪だ。ザク相手に二対一なら優勢、一対一なら絶対的に不利という程度の能力しかもたない。これは量産ラインがほぼすでにできている。宇宙作業ポッドが原型なのだ。それに強力な180mmカノンを付けただけの兵器。決定的に動きが鈍い。


 ボールにせよGMにせよ、装甲からして貧弱だし。連邦政府のお偉方が、現場兵士の人命をいかに『大切に』しているかが克明に解る。


 これらをまさに皮肉に感じていた時。上官から私に任せられたのはさらに非情なものだった。


 私は指揮官室で、馬鹿みたいに聞き返していた。


「なんとおっしゃいました、中佐。人工知性生命ですか?」


「どうした、エリック特務准尉? きみは耳が悪いのかね」


 怖気がしたが、上官に口答えはできなかった。ここで設計プランが表、グラフ、テキストと映像音声でモニターされた。戦慄する。悪魔の計画だった。


 ジオンに対抗しうるモビルスーツ開発と並行して、ハードウェアにしてソフトウェア……コールネーム、『河馬鳥』。人工生命体の人工知能兵器だった。


 生命の神秘に対するなんて冒涜……遺伝子操作されたバイオモンスターに、モビルスーツなどの兵器の操縦をさせるなんて。


 上官は感情を交えず、厳粛に言い放った。


「よいかね、エリック特務准尉。悪い事に、この技術情報が敵ジオンに漏洩しているのだ。密偵がいるのか、裏切り者か? ジオンでは亜種に改造し、これを『パンダオバケ』と命名したらしい。命令は一つだ。『遅れを取るな』……以上だ、退出せよ」


 敬礼して退室する。胸中を虚しい想いが渦巻いていた。


 


 


後書き ゆきえもんさま、カバパンダさま参加ありがとうございます。これで連邦、ジオン、中立と勢力が別れた。今後もカオスなストーリー続きますよ! 会員さまのご協力で成り立ちます。


  ゆきえもんさま
  カバパンダさま