『非常事態』はマフィアエスペランサ隊が巨大ゴキブリの巣へもぐりこんで、直ぐに発生した。全隊員通信途絶、地上の各種探知機にも反応しない!
大地から通信が入った。「なんらかのジャミングを受けているっす! これはマジピンチっすね!」
「どういうことだ?」ウイスキーのポケット瓶を片手に、直人は呆けている。
シント君主国ソング総統は慌てている。「かれらが私たちの支援指示を受けられないということは、遭難させてしまったということです! 私の魔力シーカーセンサーにも何故かヒットしません」
直人は宣言した。「俺は対戦車スナイパーライフルを用意し、地底の入口を守って地上から支援するよ」
ここは魔女である私、千秋の出番だった。ソング総統に連絡する。彼女の願いは「エスペランサ隊を助けられる人員を呼ぶ」ことだった。私は直ちに叶えた。
これでひょっとすると時雨ちゃんが召喚できる! 天下無双の豪傑だもの。打ち出の小槌を振る気分。
しかし現れたのは剣を帯びた背の高い私と同じくらいの歳の女性、同じく背の高いイケメン青年、六十代くらいのおじいさんだった。かれらの服装ってまるで中世西洋風ファンタジー世界……アレスの仲間か!
四人パーティーの冒険者。すると自然勇者、剣士、僧侶、魔術師だな。典型的なRPG。アレスと合流できて四人組は喜んでいる。女性はリディア、青年はセオ、おじいさんはドーハンと、互いに自己紹介した。
ドーハンは聞いてきた。「ところでアレス、どうやってわしらを召喚する魔法など使えたのかのう?」
セオは意見した。「いえ、これは異種の魔力です。どうやら異世界のようですね、ここは……」
リディアは答えた。「私はアレスと訪れたことあるわ。まさかまったく何回も異世界へ来るなんて」
アレスは話した。「実はここの世界の仲間が地底に閉ざされたんだ! なんとかして助けないと」
セオは微笑した。「報酬は頼まなかったらしいですね。人の良いことです」
ドーハンは息巻いた。「どんなモンスターであれ、わしの魔法で吹き飛ばしてくれるわい」
リディアは辺境はるか彼方を指差した。見渡せば一面丸焦げになって死んでいる、人間など一飲みにできそうな巨大ゴキブリ数百匹の群れ……
ドーハンは前言を撤回した。「いや、何事も限度というものを弁えぬとな、痛い目に遭うぞいまったく……野火で焼き払うとは無情過ぎるしのう」
リディアは諭した。「相手は害虫なんだから、容赦はいらないわ。これは人間の自然な生存競争よ!」
アレスは話した。「俺たちのパーティーなら、地底探索の経験もありますし適任でしょう。全員にこの」と、胸を指差す。「フルプレート鎧をまとってもらいます。金属鎧などよりはるかに堅固な上、軽い」
リディアは賛同した。ドーハンは抵抗があった様子だが、セオが魔法を掛けるのに妨げにならない、と告げると覚悟を決めて着込んだ。さっそくアレスを先頭に、ディモンドたちの救出に向かう四人だった。
私は喜んでいた。時雨ちゃんじゃなかったけれど、良い人たちじゃない。私も行かないと。「三好先生、ハムちゃん、乗り込みましょう! あら、アヴィさんと優輝くんはどうしたかしら、いないわ」
優輝のいたナックルファイターのそばでは、黒猫と白猫が仲良く猫トークをしていた。公星はそれを見てぶるぶる震えていた。公星は人間サイズで身体は大きいのに何故かな?
(続く)
後書き すまいるまいるさん、亜崎さま、akiruさま、ゆきえもんさま、SPA-kさま、初孤羅さまありがとうございます。いまだに佃煮ネタに詰まっています。助けて……同盟に栄光あれ!