『商談』がまとまり、マフィアエスペランサは二十隻もの宇宙艇を手に入れた。あれだけの武装されたのでは、もといた『現実現代』世界は容易に乗っ取られるのでは、と危惧する私、魔女の千秋だった。

 しかしそれも、補給を受けなければ闘い続けられないという事実を聞くまでだった。そもそも長距離移動するには時空跳躍シフト能力持つ、母艦が必要だ。

 いくらエスペランサの資金力でも、宇宙母艦を購入するのは無理だ。

 大地の居る旗艦……巨大補給艦ジンバレルは二隻の母艦が接続されている。ビアジョッキとラムタンブラー。合わせて一個旅団を格納できる。比べたら二十機なんて寡兵だ。地球の衛星軌道上を回っているが、それは異世界だからのこと。『現実現代』ならば、世界はパニックだろう。

 直人に大地の所属するのは、『SDF』スペース・ディスラプト・フォースという名前の一大レジスタンスだ。かつての『時の鎖』戦役等には活躍したが、平和となると管理維持を持て余していた。大半の隊員も民間に戻ってしまった。

 ともあれディモンドは宇宙艇中隊を率い、大麻栽培を成功させるため全力で巨大ゴキブリの掃討に当たった。上空からミサイル攻撃を繰り返す。ミサイル一発だって、数万ドルはするのだが。莫大な収益を望めるマリファナ利権の前にはささやかな投資だ。一千万ユーザーがいるとして、一日一箱の消費で数十億円。百日で数千億、一年で一兆円を超える利潤計算だ。

「大麻で全員ヤク中か……」ぼやく私だった。なんだってこんな気違いめいた戦いを、私が手伝う義務があるだろう? 愛しの時雨ちゃんを探しに行かないと……きっとどこかでお腹すかせているわ。

 と、シント君主国から連絡。ソング総統だ。「あなた方は、シントを脅かす害虫駆除をしてくれました。キュート王国国王ティルスとも連絡が取れています。報酬は純金でよろしいでしょうか? 千キロほどなら用意できます」

 直人が答えていた。「エスペランサへの報酬はそれが良いのだろうな。おれはシントクレジットの方が良い。それよりも、まだ戦いは終わっていない。おそらく地下にゴキブリは潜んでいるはずだ。アクティブレーダー照射で地底を偵察、しらみつぶしにする」

 大地が皮肉った。「ダンジョンズ&ドラゴンズならぬ、ケイブ&コックローチっすか。イカレてるっす」

「? おれと大地は過去、似たような環境下で全滅したような記憶あるな」

「忘れたっす。そんな不吉な過去」

「とにかくやつらの幼虫を全滅させる! 全員銃火器フル武装で機体は使わず、この足で乗り込むぞ」

 ディモンドが割って入った。「その指揮は俺に任せてもらう。エスペランサ隊が乗り込む。他のものは索敵に通信誘導と補給その他のサポートを」

 本来、ここまでハードな仕事にはならないはずだったのだ、私は『全肯定』の魔女、私に願えば私の同意さえあればどんな夢でも叶ったのに。でも、あの巨大ゴキブリはともかく普通のゴキブリは、生態系を保つのに必要悪なの。全滅させては、代謝に不具合が起きかねない。だから願いは、みんなの身の安全のために叶えてあげていた。

 ソングから通信が届いた。「みなさんに防具をフル装備して頂きます。隕鉄鉱製の鎧です、極めて頑丈で軽い。おまけに薄いですから関節の可動域も広く、行動の妨げにはほとんどなりません」

 かくして鎧を纏う一行だった。この素材は何故か、身体に勝手にフィットしてくれる。こうして出陣してゴキブリの巣に入り込むエスペランサの面々だった。

 

(続く)

 

後書き すまいるまいるさん、亜崎さま、akiruさま、ゆきえもんさま、SPA-kさま、初孤羅さまありがとうございます。ネタに詰まっています。今回もすまいるまいるさんのネタ使用させて頂きました。重ねて感謝します! 助けて……同盟に栄光あれ!