出演キャラ

時雨……格闘帝王。素手の格闘技と戦闘機の空中戦において、敵うものはいない無敵の漢。己が馬鹿であることを自覚し始めた。天然確信犯逸般人。

公星……ハムスターのスター。人間サイズ。愛の詩を歌うアーティスト。農業工業、文化サービス業、格闘技にマシン操縦となんでもこなす万能ハム。

アヴィ・ロング……異国の妙齢な女性。栄養状態が悪くつるぺただが、おそらくロリ趣味な男が勝手に近寄ってくる。錬金術の専門分野には博識である。

里見愛……一見文科系メガネっ子のロリ乙女。まさかのEカップは秘密である。ヲタク萌っ娘に思えて運動も得意で、サッカーとかは並の男より強い。

泉田優輝……一見高校生くらいの少年、実は黒猫。家事全般をこなす主夫で家庭的な好人物だが、実はいつか公星を調理して食べたいと願っている。

ディモンド・リッチー……十歳にしてマフィア、エスペランサのボス。葉巻を愛喫している。超人的な能力を持つが、まだまだ泣き虫のガキなのは秘密。

 

 ……六人は突然、異世界へ召喚された……剣と魔法と魔物の世界へ。場所はキュート王国辺境。

時雨「あれ……またここへ来ちゃったよう! 他のみんなは……この六人で冒険者パーティーか。僕はもちろん格闘家だね、こんなファンタジー世界なら……素手で戦い抜く!」

公星「ならば私はアーティストを。流しの吟遊詩人を務めます。世界に愛をもたらすのです……おっと、楽器もマイクもありません。どうしましょう」

アヴィ「私は錬金術士だけれど、ホムンクルス作成は役に立つかしら。材料さえ調達できれば、毒物薬物刺激物作れるけれど……道具も無いわね」

愛「なんで私が召喚されたです? 異世界でモンスター退治なんて私のキャラじゃないです……え、私が女賢者ですか?」

優輝「オレは調理担当で。モンスターなんて片端から食材にしてしまいましょう」

葉巻を吹かしつつディモンド「葉巻があと二本しかない。今日明日中にはもとの世界へ戻りたいな。無論俺はこのメンバーのボスだ」

愛「子供がタバコなんか吸ってはいけませんです」

ディモンド「ボスは俺だ。だから俺が掟だ」

時雨「坊や、僕は止めはしないけれど、投げ捨てはいけないよ。携帯灰皿あげるよ」

ディモンド「灰皿は貰うが、坊やはよせ! 俺はエスペランサのボスだ」

時雨「エスペランサ……マフィアだっけ。めちゃくちゃ人間離れした人材で構成されるとか。僕の警備会社にとっては、いわば敵だね」

ディモンド「敵ならばいつでも相手になるぞ! 俺に命令できるのはこの俺だけだ」

ディモンドの吸い掛けと残りの葉巻を取り上げ頭上に高く掲げるアヴィ「強烈な毒物ね。数十人楽にまとめて殺せる毒素が抽出できそう」

半泣きのディモンド「返してよう、背の高いお姉ちゃん、ずるいよう!」

優輝「それより、本題。オレたちがここに召喚された目的は?」

時雨「どうせ『紙』の気紛れだよ。ああ、また会社無断欠勤で減俸されるな……いくら重役の僕だって甘えは許されない」

公星「端末にメールが届いています。『生き残れ』ってただ一言。捨て置かれましたね」

愛「こんな僻地、サバイバルは過酷ですね。どんなケダモノが襲ってくるか」

公星「愛さん、それは私どもケダモノに失礼です」

時雨「大船に乗った気で構えよう。僕らはデーモンを倒した。神々すら超越した。山より大きいクマは出ない。家より大きいネズミは出ない」

 ズ……ズズズン……やや遠くから轟く鈍重な地響き。あれは……

優輝「うわぁ、巨大虫、それもゴキブリじゃないか! 体長十メートルはあるな、並の家よりでかいよ!」

時雨「家より大きいゴキブリが出た……前言撤回、山より大きい怪物が出る前に手を打とう。『紙』の悪意をひしひしと感じる」

公星「つまりあれを倒すのが、今回の私どもの任務ですね。ああ、愛の歌はまず通用しない痛痒……」

愛はぽつりと言う。「ゴキブリでは駆除できても、調理はできなそうですね。世界最大のゴキブリは三十センチと聞いていましたが……駆除する相手としては驚きです。でもハムが巨大化したならゴキブリも巨大化しておかしくないですか」

時雨「駆除とかいうレベルの話かな? これはまさに戦争だよ。繁殖されたら大惨事だ」

優輝「地上の生態系のバランスを壊しかねません。生存競争です、ゴキブリの生命力は強い。頭を潰しても生きているくらい」

愛「頭を潰しても?!」

優輝「エサを喰えなくなるので、やがて餓死するけどね。そんな状態でも産卵するので始末に悪い」

時雨「いくら僕でも、素手でゴキブリは潰せないよ。火炎放射機の出番だね」

優輝「火炎放射機、そんなもの入手できませんよ、このキュート王国、暗黒の中世レベルの文明圏ですからね」

公星「ここはスプレー缶で代用です。有機溶剤なら派手に燃え上がりますよ。それならシント共和国には捨てるほど捨てられているはず……おっと言葉がおかしい」

愛「大半の虫は、柔らかいとされる人間の肌さえ喰い破れないはずだけど……あのサイズではさすがに例外ですね。西九条くんのために買った、絵の具の溶剤転用できるかしら? 量が足らないですが」

アヴィ「愛さんのそれを利用して、燃え上がるほど大量の有機溶剤を私が合成しましょうか? 火炎放射機は無理でも火炎瓶くらいは作れます」

ディモンド「たかがでかいだけの虫けらなんて俺の銃、デザートイーグルで仕留めてやる。だから葉巻返してよう! アヴィお姉ちゃん!」

アヴィ「葉巻からは良い毒が取れるわ。元の世界に戻るまで我慢しなさい、坊や」

ぐずるディモンド「僕、その葉巻がないとどうやっても落ち着かないんだよ。じゃあ一本だけあげるから残りは返してよう!」

愛「銃があるのですね。ではそれで取り敢えず狙撃して倒してもらいますです。少年、出番です」

 ディモンドは巨大ゴキブリに向かい、銃を連発した。しかし十数発の命中弾を喰らっても、巨大ゴキブリは悠然と立っている。

 優輝が猫のごとき身軽さで近寄り、火炎瓶を投げた……炎は燃え広がったが、さして効果は無い。おまけに、相手は一匹ではなかった。見える範囲だけで数十匹は軽く……囲まれている!

愛「これでは四面楚歌です~! 元の世界へ戻りたいです!」

アヴィ「あいつら、どう始末するのよ!? 毒薬物精製には時間かかるわ」

優輝「こうなれば行く道行くだけです! オレでも爪で引き裂いてやる」

ディモンド「銃がダメならナックルがある!」

時雨「坊やも漢だね! 僕も突貫します!」

公星「私もハムスターナックル新秘儀を披露に! 私の拳が真っ赤に燃えるぅ!(以下略)」

 

(終)

 

後書き コラボ短編また作成しました。初孤羅さま、亜崎愁さま、akiruさま、SPA-kさま、すまいるまいるさんありがとうございます。またネタが浮かんだらアップするかもです。

 つ~か、本編が終わったのに怪しい技をまた身に付けた万能ハム……さすが創造主の御威光ですね。