私たちジェイルバード隊は異世界シント共和国から出撃しました。たちまち巨大な目標群と接敵です。

 敵ナックルファイターと遭遇し、戦線を固め展開して交戦にもつれ込み……ロボット同士の殴り合い蹴り合いです。できる方は、投げ技や関節技を使います。

 こんな激しいロボット格闘はそう体験できるものではありません。私ことハムのスター公星は鎧をまとっているとはいえ、ロボットに生身で応戦しました。

 戦い始めてもはや四半刻が経過していました……ナックルファイターは味方七機、敵十三機でしたが、指揮官ソングの機動戦術で善戦して片端から四機餌食にしてやりました。私も生身で一機拿捕しました。これで戦力比はほぼ対等。むしろ後方支援があるだけ、味方の方が優勢。ですが。

 味方だって無傷ではありません。隊長アレス機は頭部を激しく損傷していましたが、戦線を退きませんでした。それも敵パイロットを殺さないよう、手加減して戦っています。リディア機は右腕を破損していましたが、それを楯とし左腕と足で戦っています。

 アヴィ機は打撃に胸部を小破しました。危なく、アヴィの身まで負傷するところでした。アルバート機がかばっています。

 石田機・浅尾機は背中を合わせ、最前線で敵を引き付けています。攻撃は他に任せ防御に専念ですね。

 その間隙に、真理亜機が宙を舞った! 後方二回転宙返りで危険の無い間合いから華麗にサマーソルトキック連発を決めています。大した腕ですね。

 グレイルらの魔術師・魔物隊は、後方から雨あられと攻撃魔法や遠距離攻撃を掛け支援しています。

 優輝と里見は、補給物資のパック転送を前線にひたすら繰り返しています。しかし……

 強い、強過ぎる敵隊長ナックルファイター初号機。ライン生産の量産機とは比べ物にならない。すべての能力が三割増し程度、掛け算して量産機の四倍以上強い! おまけにパイロットはとんでもない手練です。

 ああ、最前線の浅尾機が攻撃を受けました。左腕をもがれています! 石田機が割って入りましたが、地に押し倒され……激しい衝撃、無事でしょうか? 真理亜機が背負い投げを決めましたが、敵隊長機は余裕で着地して立っています。アレス機とリディア機が猛烈なラッシュを掛けながら続きます。次いでアルバート機とアヴィ機が突撃用意しますが……

 グレイルたちは魔法とかで他の雑魚量産機を牽制しています。この間隙に乗じて、ここは私が突貫し、コクピットに潜入、強奪する手で行きましょう。目標隊長機に張り付き……!?

 ガンッ!!!   ナックルファイターに蠅のように弾かれ、私は地面に叩き付けられました。重力場に作用し慣性を吸収するこのアーマーでなければ全身の骨が砕け、内臓が破裂して死んでいたでしょう。打撃がずんと身体に響きます。意志をしっかりしなければ気絶ものです。胃液が逆流するのを耐えました。

 負けるしかないのか……! いくらフルアーマーでも……と、私のとなりにもう一人フルアーマーをまとった小太りの青年が!「貴方は時雨大佐!」

「大佐の地位は捨てたよ、ハムちゃん。新都心警備員監査役が僕、時雨だよ。さあ立ち上がって行こう」

 まさしく一騎当千の天上天下無双の漢! 彼が味方なら怖いもの無しです。タッグを組み初号機に張り付きます。ワイヤーを駆使し手際よくよじ登り、コクピットハッチを開けました。中にいたのは……!?

 私は叫びました。「直人さん! 何故貴方が……」

 直人は意識の混濁したどんより曇り濁ったどろりとした目で、パイロットスーツに黄色い胃液をたくさん吐いていました。はっと気付きます。酒以外のドラッグを盛られているな……急いで身柄の確保です。

 とにかく隊長機を失い、敵機ナックルファイターのパイロットたちはみな降伏しました。これで終わり、勝ったのか、なんとか生き延びた。ざまあみろ、私を食べようとしたやつら。私はここに生きているぜ!

 

(続く)

 

後書き 決戦が終わり……数々の魔の手からなんとか逃れハムは生き残った! 初孤羅さま、秋月伶さま、SPA-kさま、亜崎愁さま、akiruさま、ゆきえもんさま、すまいるまいるさん、キャラ出演ありがとうございます。