……中略。いちいち述べていたら、きりがないのでさっぱり経過は割愛する。俺たちは宇宙へ向かった。

 隕鉄鉱によるスラスター推力で『宇宙シャトル』は俺たち十三名を乗せて、極めて高い加速度なのにGを感じさせず軽快に宇宙へ乗り出していた。衛星軌道へ上がるや、シャトルは俺たちの旗艦に着艦する。すかさず時空間シフトで外宇宙へ出る。俺たちの旗艦、並びに主力戦艦は全長五百メートルの弩級戦艦だ。

 宇宙艦隊旗艦『ガルーダ』……竜を屠る霊鳥猛禽。鳥こそが竜の眷族。皮肉にも。恐竜に対抗するのに、『籠の鳥』ことレジスタンス『ジェイルバード』は、宇宙艦隊を以て制する! ここに俺たち隊員は矜持を確かめ合い襟を正し困難に脅威に立ち向かう! 戦力は戦艦十三隻、戦闘艇母艦七隻、巡航艦、駆逐艦、偵察艦、補給艦、三百隻強から構成される。『時の鎖』戦役の時より寡兵だな。あれは何年前だったか……俺が二十一歳の時だ。しかし舞台は1999年だったからな。いまの西暦は敢えては述べないでおこう。

 果たしてほんとうに、ナノテック恐竜艦隊が迫るのか!? ダイナソーで台無しになっちまうぞ! 百均だいそーは庶民の味方だが。

 とにかく隊員を配置につかせる。

 提督、涼平。

 参謀、公星。

 航法、不知火、俺。

 機動、霞。

 砲雷、直人。

 運営、朱莉。

 通信、浅尾。

 白兵・宇宙艇戦闘員・交代要員……石田、カズキ、ウィンソン、リム、アレス、リディア。

 と、頭数は揃った。さらに敵居住惑星大気圏制圧用に、飛竜ドラゴンの群れ。毒を持って毒を制す。恐竜対飛竜。いざ、出撃!

「航法、不知火」提督涼平が聞く。「目的地はどこだ? 銀河中央方向か? なんにしても銀河すべて無論相手にはできるはずはないし……」

 俺は答えた。「取り敢えず、地球の隣の恒星だよ。そこの惑星ケンタウリ・アルファ・ワンだ。十光年もしない。容易にシフトできる」

「待ってください!」浅尾が制した。「通信です……『彼』から。私はいかがしましょう?」

 なに……電脳神、神無月から緊急メールが届いた。浅尾の彼女がデート中に失踪した彼を心配して、警察に手配を頼もうとしている。これはまずいな……俺たちの存在は秘密だからな。ならば、浅尾はここで地上に送り返すしかないか。

 浅尾は二つ返事で応じた。なにかと現実のしがらみから逃れ、英雄活劇を演じるところだったからな。しかしこいつもなにより彼女が大切らしい。俺は浅尾の身体を地上、日本の新都心の一角へ正確にシフトさせた。いまは深夜帯だな、周囲に発覚しないはず。

 と、超長波通信が届いた。浅尾からだ。無事彼女と合流できたとか。で、代理要員を遠い後輩から送りたいから、シフトで拾い上げてほしいと。

 座標を正確に計算し、時空間シフト転送する。旗艦艦橋内に現れたのは……ブレザー学生服の小柄な少女だ! 戦場に向かうのに。まあ通信担当には適任か。

里見愛(十七歳)

体力17 精神43 感性84 運命56

 うわ、十七歳のJKかよ! 身長149センチって『紙』ロリコンじゃね? それも近眼の黒縁メガネっ娘。余計なデータでは隠れ巨乳なのがコンプレックス……なかなかに萌える燃える展開である。

 ふむ、漫研所属の文系女子と思わせ、実はサッカー大得意。高校がハイレベル過ぎて目立たなかったか。学科成績もスポーツも部活動もなかなかに優秀だな、なんら取り柄のない俺なんかとは大違いだ。

 霞が鋭く聞く。「不知火くん、あなた状況を先読みできる先見の明が取り柄でしょう、確信犯なの!?」

 俺は嘲弄した。「まさか。俺たちの『紙』はトーベ・ヤンソンのムーミンを伝説の水没し滅んだ文明、ムー大陸の原住民『ムー民族』だと言うような馬鹿だぞ」

 霞は反論した。「ちょっとボケをかましただけじゃない。歴史や化学に英語に漢字とにかく単純暗記物はユーモアセンスがないと試験で点は取れないわよ。語呂合わせで楽しく暗記するのが秘訣だから。下手な教育番組よりは笑点を見た方がためになる」

「だが俺たちの『紙』は数学の天才を常に魔王とする。何故か? 『紙』が学生時代、数学の単位をすべて落としたからだ! それも数学がいちばん重要視される情報科で。痛過ぎるよ。留年しなかったのが不思議とされている。嫌がらせに遭って三年で中退したが」

「『紙芝居』ってやつではない? 確信犯よ」

「そんな器用なやつではないさ。ただの馬鹿だよ。根っからの馬鹿ってことにかけては、間違いなく確信犯だ。それを認めることだけは美徳かな」

 直人は意見した。「ムーミン谷のゴルゴ13って知っているか? 大戦時侵略を受けたフィンランドの英雄シモ・ヘイヘ兵長さ。圧倒的多数で迫り群がるロシア兵を、僅か数十名の部下を率いて応戦し、単発のスナイパーライフルで五百名は狙撃して屠って撃退したそうだ。一分十二発の速射、ほぼ一発必中。その後五階級特進して少尉。おれは人殺し以外なら、彼を尊敬している。まあ戦争では仕方ないが」

 俺は問う。「ならば直人、おまえは砲雷長として……恐竜やエイリアンを殺せるのか? 知的生命体は……クジラは賢いとはいえ俺は捕鯨賛成派だ」

「おれは右翼でも左翼でもないが、どうかな。酒が欲しいぜ」軽くうそぶく直人だった。

 霞は意見した。「食用にするなら、殺すのは自然の摂理よ。恐竜は食べて美味しいかしら?」

 直人は苦笑した。「前世紀のSF巨匠が、そんな悪ふざけ短編書いてたぜ。それ以外食べ物と言えなくなるほど美味いってさ」

 石田が口を挟んだ。「なんにしても、そろそろ腹ごしらえの、準備しないか? 各種食材が二千人前保存してあるとは驚いたよ! 五十日航行できるな。俺にまかせて。リクエスト受け付けるよ」

 霞と朱莉、リムとリディアに新入りの愛の女性陣、それに公星は調理の協力を申し出た。

 俺は敢えて言及は避けた。宇宙間航行ともなると、五十日なんて短すぎる。飲料水入浴水その他、廃棄物はリサイクル処理するように出来ているのだが。

 かつての『時の鎖』戦役からの敵企業ナノテックの技術だ。植物性・動物性プランクトンに肥料と水を与え、太陽光に近いが省力化できる周波数帯の電磁波を掛けてあげれば、半無尽蔵に人造食料は得られる。

 これは闇に葬られた技術だった。人間どころか地球の生態系を一転しかねないから。植物動物無しで食糧が得られるなら、急進派は動物に対し過激策を執りかねない。過保護に狩猟や畜産を禁止するか、無軌道に殺戮、乱獲するか。

 経済危機無しに食糧の供給が満たされる技術はあるのだ。しかしそれを下手に広めては地球を食い潰す。ならばどう手を打つ?

 

(グルっぽ『自由創作表現同盟』(管理人、月村澪里さま)の会員有志さまのご提供キャラに、出演頂きます二次創作です。

 亜崎愁さま、初孤羅さま、akiruさま、秋月伶さま、ゆきえもんさま、SPA-kさま、すまいるまいるさんありがとうございます。

 スレ『RPG風キャラデザインで遊ぼう†』の登録キャラで構成します。不知火ら一行の敵味方その他、コメントないしメッセージ受け付けます。

 キャラに取ってほしいアクションとかセリフとかあれば、連絡ください。めちゃくちゃに盛り上げるつもりです。

 追伸……著作権はキャラ提供者さまにあります)

(続く)