春の夜、BBQキャンプパーティーを済ませ、食休みと酔い覚ましに缶コーヒーなどを味わう俺たちだった。みんな満腹だが、ここで和む一夜を。まだ食材も酒もたっぷりと余っているし。

 それにしても経理担当したハムスター辣腕家だな。ここまでの五十人前の贅沢な食費で十万円掛からないとは称賛ものだ。そもそもどうやってこいつ買い物に出かけのだかが非常に不思議なところだが……

 ロングピースの紫煙燻らせながら、涼平は述べる。「で、俺たちのリーダーはやはり不知火か」

 直人は応じる。「いまここに集うは奇しくも十三名だしな。かつての『魔王』こと如月不知火、他の人選は考えられない。情報化社会の真の主人」

 霞は俺に問う。「聞いているの、不知火くん。貴方がわたしたちジェイルバードのマスターよ」

 俺は軽く返した。「過大評価だな、俺には人の上に立てる度量はないよ。だいいち、重大なこと忘れているしね。つまり、ウィンソンとリムを一時的とはいえ支配下に置いた敵、ナノテックの真意はなにか不明のままだ。俺たちをジェイルバードと知ってのことか」

 霞は肯く。「そうね、それにそもそもの事の発端の恐竜銀河跋扈騒ぎの事実は? 黙殺されたままよ」

 浅尾は指摘した。「一文学者の私としても、電脳神たる神無月真琴は天才ですよ。プログラミングにも、ある種の言語を駆使する才能が必要とも聞きますし」

 俺はしたたかに酔い、得意げに引用した。「電算機技師、いわゆるプログラマーのスキルは、中二程度の理数知識があれば八割はこなせる。その八割だけで大抵のアプリが作れる。もっとも大学学士並の理数知識を持っていても、どうしても作れない『壁』が零割三分は残るものだが。一線級の科学技術演算処理の現場では、それが使えるかどうかで真価が問われる」

「不知火くんは神無月のスキルを取り戻せるかもね。そうしたら、怖いものなしよ」霞は優しげに微笑む。

「数学と理科は切っても切り離せない。数学無くして理科を解くどころか式を導くことは不可能だし、理科なくして数学の理論式だけでは数式がなにに役立つものかわからず、潰しが利かない。さらに言えば、科学技術にSFは欠かせない。SFは科学の必要性(ニーズ)と技術的先見性(シーズ)を多々表してくれる。ニーズとシーズの兼ね合う科学文明世界こそ健全な文化華開いた理想社会だ」

 涼平はニヤリと笑った。「俺は建築技師、直人は機械工、不知火はSEか。エンジニア志望だった『紙』は技術陣を整えたがるな、真理は薬剤師だし。他の隊員には精密工、電気工、土木工、臨床心理士もいた。名言だか迷言によると、物理の数十年先を常に数学は技術的可能性を提示しながら走り、SFは数学の数十年先へ物理を無視してワープする」

 俺はふと回想した。科学にはいろいろ迷信が付き物だ。音速の壁は、破ると衝撃波で機体が壊れるから無理とされていた。時速八十キロの壁すら、昔の列車は超すとハリケーンに巻き込まれて列車が壊れるとされた。ライト兄弟が飛ぶ頃には、れっきとした物理学者が、空気より重いものが空を飛ぶのは不可能としていた。銃の弾丸の速度は、発射されてからなお加速して速くなると証言した刑事事件検事もいた。光速の壁やブラックホールからの脱出は、強い加速度なら可能で破れるとした有名文学賞受賞作も多々あった。

 だから俺は皮肉った。「数学論理的に三段論法でいくと、大前提、科学とは法則を作るために存在する。小前提、法則とは破られるために存在する。結論、科学はいずれ破られる法則を紡ぎ、それを魔法と呼ぶ。俺たちは粋な魔法使いさ」

 霞は意見した。「まさにその『魔法』が現実のものとなったのね。ナノテックの撒き散らした『精霊』によって……限られた特権的な『魔人』にしか使えないなんて、使い方を誤れば恐ろしいわ」

 まさに同意しようと、俺も他の全員も肯こうとしていた。と、ここで端末に緊急連絡が入った。AIのコウからだ……!?

 ナノテックが暴走して人類を裏切る背信行為に……地上に兵力として恐竜を多々召喚しただと!? 狂気の沙汰だ。

 その数、およそ……? 桁数が多すぎてすぐに読み取れない。指数表示にしてもらった。概算7×10の13乗以上だと!? 億を軽く超えるじゃないか……

 ハムはキューキュー唸り訴えた。「ここは是非我らにお任せを。愛の歌でネズミ算なら対抗できます!」

 巨大な恐竜億の群れに、機動歩兵ハムスター億の群れが地上で交戦する……想像を絶する光景である。

 霞が訴える。「不知火くん、御英断を!」

「却下だ! そんなことをすればおそらく消耗戦になり、地球は荒れ果て取り返しがつかなくなる」

「だったらどうするの」

「それを考えるのさ! 地球を守るためだ。人類全体なんてどうでもいい。ガイア理論に則り、生態系の均衡を保たなければ……たちまちまさに崩壊し混沌としたバイオハザードだ。なにか良い案はないか?」

 朱莉が意見した。「ナノテックとやらは、恐竜を飼い慣らそうと目論んでいるのでは? その力を武器に地上を支配するのが狙いで。人類全員巻き込んで自滅するようなことはするはずないもの」

 カズキは穏やかな表情で朱莉を肯定した。「僕の鬼児人(おにと)としての立場からしても、それが自然です。僕も主に……朱莉に従いますから」

 霞は驚いている。「あなたたち、カップルではなかったの?」

 カズキは温和に否定した。「いいえ。朱莉の意中の想い人は……」

 朱莉が身振りでカズキを黙らせた。

 そんなことより、三位一体の人工知能コウ(考)、ナミ(波)、ケンジ(顕示)はほんとうに未来予測が歪んできていないか?

 設計したのが二十年近く前だからな。知性に目覚めてからは自動進化でより賢くなり続ける算段だったが、ほころびないし老化の傾向が現れたかな……

 そもそも目下問題だった、恐竜銀河跋扈説が確認されていない。かといってほんとうに確認していたら、手遅れということだろう。俺とした事が、後手後手に回って……

 霞が俺の瞳を覗き込んで語る。「不知火くんには、なにか考えがあるわね。秘密なこと?」

「ああ。直人に涼平は知っているが……恐竜ならぬ、ドラゴンが味方にいる。人を乗せて舞う飛竜が」

 

(自由創作表現同盟会員有志さまのご提供キャラに、出演頂きます二次創作です。

 亜崎愁さま、初孤羅さま、akiruさま、秋月伶さま、ゆきえもんさま、すまいるまいるさんありがとうございます。

 スレ『RPG風キャラデザインで遊ぼう†』の登録キャラで構成します。不知火ら一行の敵味方その他、コメントないしメッセージ受け付けます。

 キャラに取ってほしいアクションとかセリフとかあれば、連絡ください。めちゃくちゃに盛り上げるつもりです。

 追伸……著作権はキャラ提供者さまにあります)

(続く)