現代世界、新都心の春の夕暮れ……新たにウィンソン、リムの美形ペアを引き抜きますます大所帯となったジェイルバード混成チームは、シックな喫茶店で一息吐いていた。値は張るが、長時間落ちつける店だ。
俺、如月不知火は……神無月真琴は思案に暮れていた。人間一個人が考えても意味がないとは解っていても、どうしても悩んでしまうのだよな。
「い、しょく、じゅう」こそがこれからの時代だ。「衣食住」ではなく「医職充」。医療介護福祉厚生が行き届き、万民の職の安定した、充実した文化を享受できる精神面に満ちる社会こそが求められている。
宝石や貴金属など、現代さして価値は無い。アクセサリーに何百万円もかける時代は終わった。婚約指輪のキャッチフレーズ、『給料の三カ月分が目安です』などと馬鹿らしい。
宝石の価値なんて、独占企業が供給制限をしているから高いだけだ。それさえ取っ払えば石ころになる。売っても無論購入価格の一割にも満たない捨て値だ。
霞はお嬢様育ちだが、将来家柄に財産に学歴に見栄を張るだけのザマス婆にはならないでほしいな。霞は宝石を欲しがるかな。誕生石は……そんなもの知らないし、検索する気にもなれない。
いや神無月真琴だって大企業(敵となった日中バイオ)会長の御曹司のお坊ちゃんのはずなのだが、偽人格の俺には無縁だしな。普段の俺には一日五百円分のウォッカがあれば良いだけだ。
は、俺は安い男さ、負け組の。霞なんかと釣り合う男ではない。だが霞は俺を愛してくれる。いまがいちばん人生幸せだな。
かすかに思い出すのだが、神無月は膨大な数式の中に忙殺される時間を無上の喜びとしていた。俺なんかとは器が違うよな。
面子を確認する。俺、霞のペア。直人、涼平のコンビ。石田、浅尾のコンビ。カズキ、朱莉のペア。更にウィンソン、リムのペア、マスコット(?)に公星。アレスとリディアのペアも加われば大所帯だな。
メニューに目を通す……なんだってこんなに高いのかね。ファーストフード店からすると呆れた額だ。
喫茶店に入る度、つくづくハインラインを思い出す俺だった。『月は無慈悲な夜の女王』の一節、「無料の昼飯は無い!」だ。コーヒー一杯がディスカウント店のインスタント百グラム分程度するのだからな! 下手をすると俺の一日分の酒代以上だ。
俺が口出しするまでもなく、作戦は決まっていた。ここは『鴉』ウィンソンに一働きしてもらう。かれは自ら立案し志願してくれた。
アレスとリディア、二人の乗った警察の護送車を、白昼堂々鷲掴みならぬ鴉掴みして空へカージャック。銃刀法違反は大した犯罪ではないから警備は手薄なはず。カージャック行為そのものは重罪だが、この際構っていられるか! そもそも怪獣相手なら足もつかないはず。俺はこの破天荒な救出案に賛成していた。
ウィンソンとリムは俺に姿勢を正し一礼した。「謎の世界へ迷い込み、非道な殺戮に加担させられるところでした。まさかあなた方を襲った俺たちを仲間に加えて頂けるとは恐縮です。感謝の念に堪えません。如月さん、貴方は広い見識をお持ちですね」
俺は軽く引用していた。「手酷い反面教師がね。遠い知り合いで、なにかにつけて揚げ足取りに疑う男がいたのさ。募金の金なんて、ほんとうに慈善目的に使われるのか怪しい。店が着服してやいないかとか。
そんなこと発覚すれば店の評判に決定的な落ち度となるからまずあり得ないのに。
あるいは1.5ℓペットボトルいっぱいの一円玉を持ってきて募金した映像を見て、は、偽善だ、そんな額より交通費食費の方が高いだろ、などと罵る。
他には、抽選の当選は商品の発送を以て代えさせて頂きますがほんとうか怪しいとか。繰り返すが仮にもテレビ放映するような企業が微々たる額をごまかし、名折れになる行為するはずがないのに。
人間の情、絆、信頼というものを信じない男だった。偏屈で、人間不信で荒み切って。ただ募金はしなかったが、毎年初詣のお賽銭にはピン札一枚出したとか。ポリシーは崇高なのかもしれないな」
霞は意見した。「そうね、小学生でもあるまいに、赤い羽根募金に二十円払ったなんてことを言いふらすよりはマシかも。小学低学年生なら普通みんな十円のところを二十円払う、とすれば自慢にできるけど」
俺は軽く笑った。「逆に不幸な奴もいる。外見が気弱そうなので、似非慈善団体……いや、詐欺偽善団体のカモにされるのだ。街を歩くと募金箱首に下げた奴が、勝手に歩み寄ってくる。しかたなしに百円募金しようとすると、「この募金は一口二千円からです」とふざけた要求をされる。
立ち去ろうとすると、「海外では食べられない子供が大勢死んでいるんだぞ!」と罵られる。さすがにその時ブチ切れたってね。「俺は童貞だぞ、なんで子供産めるのに子供を育てられない親がいるんだよ!」と絶叫したって。映像に残したら実に絵になる所だ」
「そりゃー絶叫もしたくなるな。偽善者独善者はおれの最も忌むところだ」はっと嘲笑する直人だった。
涼平は軽く皮肉った。「自称血も涙もない直人が、買い物のおつりの小銭そっくり募金していたものな。似非偽善者、おまえはいい奴だよ」
「涼平は震災義援金、教会に五万円以上寄進したろ、そこまでできる庶民なかなかいないぞ」
「震災義援金は三兆円以上集まったらしいから、日本一億の人口比率からして当然の義務の金額さ」
つくづく俺は良い部下を持ったものだ。俺は生保受給者の身、そんな余裕ふだんはない。いまこうして昔取った杵柄で仕事を少ししたら、過去の蓄積から軽く数千万円の金額が引き落とせたが。非合法な金、明るみにできない。俺たちに人並みの生活が営める以上の贅沢を望むようなやつはいないし。
さて本題に戻って、ウィンソンに護送車カージャックお願いするか。たっぷり食事を用意してね。アレスにリディア、救出しなくては。警官にも危害なく。
俺がその旨を伝えるや、ウィンソン・ディウェルは漆黒の長髪をなびかせ厳粛に一礼した。「任務謹んで拝命します、我がハイ・マスター、如月……」
リム・フィテルは年下の恋人を、愛おしそうに見ていた。ふと、神無月の想い人と重なり胸が痛んだ。
(自由創作表現同盟会員有志さまのご提供キャラに、出演頂きます二次創作です。
亜崎愁さま、初孤羅さま、akiruさま、秋月伶さま、ゆきえもんさま、すまいるまいるさんありがとうございます。
コメントないしメッセージ、スレ『RPG風キャラデザインで遊ぼう†』の登録キャラで構成します。過去の出演キャラでも再登場承ります。連絡お待ちします。不知火ら四人の味方役敵役その他勝手にでっちあげますが。
キャラに取ってほしいアクションとかセリフとかあれば、連絡ください。めちゃくちゃに盛り上げるつもりです。
追伸……著作権はキャラ提供者さまにあります)
(続く)