(アメブロ創作同盟有志のキャラが出演します! 著作権はキャラ提供者さまにあります)
僕の前にそびえるデーモンの群れは軽く千五百体はいた。シントから提供された太陽光周波数のライトで深夜の闇に照らしだされる異形の陰。これでもかなりは帝国皇子土師が戦闘機による陽動作戦で、戦力を割いてくれたはずなのだが。対する味方軍団は一個師団、三万名以上。数では上だけど、あまりにデカい化け物のデーモンに対抗するには士気と戦術が必要だ。
各中隊長以上の指揮官には、これもシントからの寄贈品の通信端末が渡されていた。有機的に連携指揮可能だ。シント共和国とキュート王国は、共通の敵の前にイデオロギーを超え団結を果たしたのだ。
「自由の戦士時雨、突貫します!」僕は自分と最至近のデーモンとの間合いがそのデーモンの身長分、つまり三十メートルくらいになると全速で突っ走って間合いを詰めた。得意の白兵肉弾戦闘態勢となる。
リディアも毅然と言った。「私も行くわよ! 突撃する。人間として、こんなただ大きいだけの化け物に負けられない。弓兵隊は援護射撃を! 各々の一番近いデーモンを狙って寄せ付けないで。倒すより、部隊の安全を考えて布陣して。無理はしないでね」
グレイルも凛々しく断言した。「斬る! 弓兵隊は各々の中隊長の指揮に任せる」
この僕らの突撃に、デーモンの群れは怯んだのか少し退いた。群れの大半は海に浸ったままだな、好機! さっと背後を確認すれば、僕、グレイル、リディアの一個連隊は歩みを止め、セオリー通り弓矢の一斉射的の態勢に入っている。泰雄ちゃんの指揮だな。
隕鉄鉱製のブラスナックルをした僕に、魔剣を持つグレイルとリディアが突撃し、デーモンの陣を乱す。そこへなお突撃し、敵前衛大半を海に追い落とす!
ははは、背水の陣とは愚かなり! よく馬鹿な自称熱血教師が「逃げるな、戦え! 特攻精神だ、背水の陣だ」などと軽く引用するが。現実は負けると解っているなら、戦わず逃げた方が得だし、特攻とかいって自殺して花実が咲くものか。自爆テロかよ。
背水の陣とかいって、少し水に浸かればどれだけ消耗するか。武装した兵士、水位がひざ下程度でも夏ですら三十分もすれば戦闘不能になるぞ。
これらの戦術を僕に教えてくれたのも、『ジェイルバード』の先輩たちだったな。僕もそれまではこれらのトンデモ熱血用語かっこいいと盲信していた。
意外過ぎるほどデーモンは弱かった。デーモンは僕のブラスナックルが触れた先から蒸発して塵と消えるという脆さだった。ただの負傷なら即座に回復するのに、隕鉄鉱製の武器には無力らしい。
消えた箇所から大胆に踏み込み、身体に大穴空けくず折れたところを、急所の心臓を一撃して丸ごと消し去り葬る。部下の弓兵隊の矢の雨も効果は絶大だ。次々とデーモンは塵と化している。
一個師団全体の動きとしても、見事な連携だ。ここで、泰雄は一気に勝負を付けようとしたらしい。魔剣ないし光の剣、ブラスナックルを持っている兵士を集結させ、一斉に投じるつもりか。集結地点はやや遠かったが、雑魚デーモンを薙ぎながら急いだ。
グレイル、リディアも駆けつけていた。双方、力も技も卓越した剣士だ。グレイルのフレイムタン、リディアのアイシクルの一薙ぎでデーモンはあっけなく塵と消える。これなら楽勝の勢いだな。
しかし、デーモンの群れに対抗するには絶対数が足りない。街への侵入を許してしまった! 泰雄ちゃんから辞令が下る。「時雨、おまえがいちばん軽装でおそらく足が速い。街に入ったデーモンを排除せよ! 王宮にいる予備兵力以外、ほとんど街は空っぽだ! 対処できる最精鋭は時雨が適任だ。駆逐せよ!」
はは、人使いが荒いな。大隊指揮官自ら陣頭に立つのがこの国のやり方か。それを言うなら、師団長泰雄にリティン王自らが最前線で戦うのだもの、この王国は。雑草精神の意地、ここは押し通すしかない!
僕は海岸の遠浅の砂浜側から直ちに、キュート王都の市街地へ引き返す。しかしそびえていたのは……通常の三倍増しの恐ろしく大きなデーモンだった。否、ただでさえデーモンは高層ビルサイズなのだが。街民を捕食し肥大化したのか……なんてことだ。
そいつはお菓子を拾い食いをするかのように、家屋から人々を摘みだし、幾つあるのだか分からない口の中に放り込んでいる。早く仕留めないと!
僕は地上から駆け寄り、はるか上高くそびえ立つデーモンの、薄気味悪い露出したヒダヒダの荒縄のような筋肉の、波打つ足に着いた。は、こいつ足五本か。腕は十三本かな? すると$アーガのようだが。
そいつは大き過ぎて、僕一人のことなんか気付いていないな。で、山登りをするかのように、ピッケルみたいにブラスナックルを突き立て、デーモンの足をよじ登る。そいつは無頓着に歩き、僕は幾度も振り落とされそうになる。だが、急いで心臓へ!
しかしデーモンの胸部から下腹部にかけては、薄気味悪い悪趣味なグロテスクな触手が何千本とある。小さいのでも、直径五センチはあるな、振り回されれば並の棍棒より脅威だ。僕に攻撃が始まった。それをブラスナックルで迎撃し、気化させながら一気に胸へ突き上げる! 直径数十センチある大きな触手は目立つし遅いから、かわせる。小さいのは恐ろしい速さでしなって一秒に三、四発は来るが、格闘家というよりほとんど調理師の手並みでことごとく弾く。
ズ…… ん?!
防いだつもりでいたのが、一発ボディーに入ってしまった。水月ではなく、左レバーだが。一気に気分が悪くなり、こらえきれず反吐が出た……たっぷり鮮血が混じっている! ヤバい。シントのバトルスーツは防刃防弾防炎効果あっても、打撃には効果無い。硬直した僕に次々と追い打ちが入る。防げない、ひええ、時雨フルボッコ!?
デーモンの触手は大して威力はなかったのだが、猛烈に痛い! こんなクリーンヒットを受けるなんて、迂闊だった。まさにクリティカル。
心臓が痛む。鼓動が止まった? 息ができない! まさか……この僕が、こんなところで……思考が麻痺していく……自分が倒れたのだけはわかった。視界は闇に覆われ、壮烈な轟音の耳鳴りも沈黙した。
(すまいるまいるさん、亜崎愁さま、akiruさま、初孤羅さま、月村澪里さま。ゆきえもんさま。ご参加有り難うございました。不備があれば訂正します。言動をアドバイス下さい。他の会員さまもお願いしますね、参加待っています)
(続く)