(アメブロ創作同盟有志のキャラが出演します! 著作権はキャラ提供者さまにあります)

 

 快適な温かさの毛布の下で、僕、時雨は目覚めた。なんだ……早朝かな、空が紅いよ。柔らかいベッドの中だ。お腹減ったな。半身起きようとする。

「動かないで下さい!」若い女性の声。看護婦かな。「肋骨が二本複雑に折れ、他の二本もヒビ割れています。自然治癒するには四カ月は必要です」

 見ると僕(二十七歳)と同い年くらいの、茶髪茶瞳の可愛いなんとなく看護婦さんらしい白い木綿の服装の女性だった。チビな僕(155cm)より7cmくらい背は高そうだけど。僕はのんびりと問う。「どこも痛くないけど?」

「麻酔が効いているのです。非力なものでは、とてもこの夕刻には目覚められない負傷と消耗でした」

 夕刻? はっとする。僕は丸一日眠っていたのか! ええと、たしかデーモンの少年と戦って……呼吸すると、たしかにアバラに違和感がある。あの悪魔戦を乗り越えた奇跡に感謝……。しかし。

 まったくうやむやだなあ。僕の運命を司る『紙』の性格の悪さがわかる。見れば左腕に点滴されている。さらに、腰の下からは導尿カテーテルが。この看護婦? マジ恥ずい。と、彼女はかがんで僕の顔に近付いた。思わずドキドキする。耳元で囁かれた。

「秘密を打ち明けます。私、魔人なんです。魔名をベオーク・オセル、ベオセルと言います。誰にも教えないでくださいね、私の魔力は人の怪我や病気を癒すこと……これはティルス王くらいしか知りません」

「では僕を魔法で治してくれるの?」

「世の中に負傷者や病人はたくさんいるのに、私の力は限りがあります。特別に選ばれた患者しか救えない。貴方を完治させたら、私は衰弱して五日は入院ですね」

「僕なんかのために、いいよ。この程度の怪我なら何回かしているよ。接骨医掛かれば済むだけのこと」

「私の息を吸い込んで下さい。飲むように漏らさず」言うや、ベオセルはいきなり僕と唇を重ねた。甘ったるい息が流れ込んで来る……不覚にもビリビリ感じてしまった。陶酔感が……全身に広がる。気持ちいい……意識が覚醒するのか麻痺するのか解らない痺れ。

 まさか行きずりの女性とキスなんて……千秋ちゃんにバレたら殺されるな。浮気? つ~か、千秋ちゃんは僕の彼女ではないのだけれど。

「すみません。これで……治ったはずです。後は……責任を押し付けて悪いのですが、どうか……私を匿ってください、建て前だけ貴方の愛人として……」

 ひええ! 愛人だなんて! 確かに僕結婚していておかしくない歳だけど、僕なんかに不釣り合いだよう! しかしベオセルは力が抜けてくずおれ、気を失ってしまった。これは守らなくては男が廃る!

 息する時の違和感は無くなった。本当に魔法だね、怪我は完治したよ。体力も一気に回復した。いまになってここが病院ではなく、民家の個寝室であることがわかる。ティルス王の配慮か。彼も負傷したというのに、治療を僕に優先してくれたのだな。

 僕は半身起きると点滴針とカテーテルを外し、足を下ろし立ち上がった。ベッドを確かめたら特に汚れていなかったので、床に倒れてしまったベオセルを抱え上げ、さっきまで僕が寝ていたそこに横たえた。

 靴も着替えも、ベッドの下に用意されてあった。メモがあった。別室に沐浴用の水桶があるのでそこで身を清め、居間に配置された軽食を済ませてから王宮へ参るように、と。されたままに僕は水を浴び新しい衣服に身支度を整え、軽くハムエッグトーストを温め直して食べ、久々にさっぱりとしてから登城した。

 身なりはスーツから一転、分厚い漆黒の皮革で出来た、いかしたジャケットにスラックスにブーツ一式。焼いて食べられそうだな、などとあらぬ妄想が浮かぶ。王都の石の大通りをとことこ歩き……

 

 招かれました、切り出した石で築かれた堅牢な城。燭台の蝋燭と壁に掛かっている松明に照らされる夜の王宮は、神秘的な厳かさを感じる。広間には宴会の準備が万全にされてあった。事前にベオセルから連絡があったのだな。ようやくたくさん食べられそう!

 非礼を働いてはまずいから大人しくしていたけれど、若きティルス王は無言で僕にうなずき満足気に笑っている。この悪魔を倒した祝いの席にはグレイルもコウも出席資格はあるはずなのに僕一人悪いな。

 と、黒髪の日本人っぽい少年が進み出、礼儀正しくティルス王に捧げものをしていた。あれ?

 ティルス王へ献上の異国の品……月餅に烏龍茶? これはコウが友人の優輝に渡そうとしていた美味しいお菓子じゃないか。するとこの少年が優輝?

 少年は礼儀正しく語り掛けてきた。「オレは泉田優輝です。貴方のことはコウから武勇伝を聞きました。悪魔に成り果て破滅するはずだった少年をその呪いから解放するとは。大変な英雄ですね、聖騎士時雨卿」

「そう褒められても恥ずかしいな……僕は単なる流れの身、本職は警備員だよ。騎士なんかじゃないから」

「いや、時雨」ティルスは穏やかだが、厳粛に語った。「貴官にキュート王国自由騎士の称号を授ける」

「僕が騎士? それはまた大それた。結構ですよ、不相応だから」思わず慌ててしまった。

「甘んじて受けよ。我の……世界すべての恩人であるペオシィン卿と同じ身分だ」ティルスはあくまで真剣だった。

「ペオ……卿?」問い返す。

「不思議な少女だったな……戦乱を常に最前線で駆け抜け、決着がつくや任官を断り真なる魔剣を背に去って行った。神話の時代の知識と技術を備えた神童」

 ん~っ。歴史の陰にはそんな人間がいたのか。女の子でねえ。

 ティルス王は快活に笑った。「自由騎士は名前だけの名誉称号だから、実力伴わずしては有名無実、なんの意味もない。しかしなんら責任を負うこともない」

「肩書きですか、なにか資格とか免許みたいだな」

「まあ王国内での宿代と飲食代を免除してくれる特典があるが。署名記帳式で、つけは国庫から払われる」

 あ、それはいいな。なにか得した気分。「りょ~う解しました。非才の身ながらお引き受けいたします」

「では晩餐といこう」ティルスが合図すると、居並ぶ十名ほどの出席者のグラスにワインが注がれた。「この日の幸運を祝って、乾杯!」

 

(亜崎愁さま、akiruさま、初孤羅さま。ご参加ありがとうございました。不備があれば訂正します。言動をアドバイスください。他の会員さまもお願いしますね、参加待っています)

(続く)

 

追記……グルっぽ『自由創作表現同盟』のみなさまに貴方のキャラの登場と言動活躍をリクエストします。コメント・メッセージ受け付けます。できる限り本編に反映します。おおまかな概要で結構です。

 『RPG風キャラデザインで遊ぼう†』スレに登録されたキャラでご参加ください。

 背景世界は拙作『籠の鳥伝奇』のラスト直後です。『従軍心理医師の休日』のやや前となります、なのでシントはイレギュラーを受け入れていないのです。

 ややこしくてすみません。キャラの出会いとか前後の話が被らないよう、なんとかごまかして作っています。