(アメブロ創作同盟有志のキャラが出演します! 著作権はキャラ提供者さまにあります)
爽快な眠りは、不意に終わった。やっぱり寝ているところを無理やり起こされるのは機嫌が悪くなるな。自然に起きる規則正しい生活が一番だよ。腹も減っているし喉渇いたことを思い出す。見ればもう夕刻だ。
つうか、はっとする。ここって空中じゃない、先刻知り合った美形の西洋王子様風貴公子、グレイルが変身した黄金の竜の背中だ。急旋回している。振り落とされてはたまらない! 腕と膝でがっしり抱きつく。
よくよく眼下を見渡せば、街の上であることが分かる。中世ファンタジーのような石造り煉瓦づくりの高い建物が大通りに面して立ち並び、そんな路地裏には木造に漆喰造りの民家が見える。でもって、長弓を構えた兵士数百人から、矢の雨が飛んでくる! ひええ、当たったらいくらぼくでも死ぬよ!
グレイルはやむなく街の外へ出た。彼の竜の身体に命中した矢は数十本あったが、強靭なグレイルにはかすり傷らしい。鱗で弾かれていた。
人間の姿に戻ったグレイルはやりきれなさそうに語った。「ここではドラゴンは敵扱いされるのだな、一端外へ出て、しきり直そう。ふむ、私の衣装はともかく君の衣装はシント紳士の正装だ。王国とは不可侵条約を結んだはずだから、どう扱われるか……」
僕は提案した。「十分お世話になったし、これ以上僕はご迷惑をかけられません。いったん分離行動は? 警備員の仕事としては、定番の手段です」
グレイルは微笑んだ。「そうか、お互い特徴が甚だしいから別れても合流するのは容易そうだな。王都広場の掲示板に出会いの連絡を書き込もう。それでは、ひとまずさらばだ」
グレイルは歩み去って行った。王都の外だから肥沃でなだらかな大地に息づくのどかな農村に田園が連なるな。改めて王都へ足を運ぶ。交通路を遡っていざ豪華絢爛華やかな王都へ! とことこ早足で歩く。
路上、十五歳ほどの少年が近付いてきた。背丈は人並み、つまり僕より15cmは高い。なんか東洋だけど異国風だな。彼は丁寧に僕に問う。「すみません、見た目十五、六歳の猫目で黒髪で、生意気そうな男を見ませんでしたか?」
ふとそれまですれ違った人を思い出そうとしたが、無理だった。「え、きみくらいの年頃の少年? 知らないよ」
ぐうぅ……きゅるるぅ…… と、このとき僕のお腹が情けない大いびきをかいた。
少年は好意的に申し出てくれた。「お腹を空かしているようなので、僕の国の菓子でよければ、烏龍茶と月餅を数個お裾わけします」
「げっぺい?」
「母国の菓子でおまんじゅうのようなものです。友人の優輝に頼まれた「月餅」と「烏龍茶」を届けるため、バイトを抜け、この世界を徘徊中なのです。甘いもの大丈夫ですか?」
「大好きだよ! 頂きます」
この真ん円で平たいお菓子が月餅か。アンが甘くて実に口の中に染みわたる。生地は卵黄が練り込んであるのかな、こってりとした風味。これがさっぱりした烏龍茶に合うなあ、美味しい、生き返るよう!
思わず感激の涙を流していた僕だった。うるうるうる……嗚呼感涙とはこのことだなあ。大切なのは人の縁だよね。あ、自己紹介も済ませてなかったのに。
僕は一礼して述べた。「時雨と言います。本名とは別ですが、僕の責任ある役職上名乗れないので」
少年も一礼した。「コウ・ソンです。貴方と同様、この世界になんらかの力と理由で招かれたらしいですね。そんな友人の泉田優輝を探しているのですが」
僕はこの少年も値踏みしていた。ふむ、体力は人並みだが、精神力、感性とも秀でているな。真っ向勝負で僕と張り合えるかも。グレイルはその点、体力こそ超人的だったが戦うとしたら土俵が違う。
ふと、問う。「きみはなにか格闘技をしてないかな? 身のこなしからして違うよ」
コウはふっと笑った。「少し体術を嗜んでいます。貴方には及びませんよ、その筋肉質な肉体は、柔術家特有のものです」
「だったら頼みがあるんだけど、なにもお礼できないかも知れないけれど、悪いヤツに捕まっている女の子がいるんだ。なんとか助けたい」
「人買い商か、悪質な。そいつら何人くらいつるんでいます?」
「いや、一見子供一人なんだけど……半端でなく強いよ! 人間と思えない。武人が正々堂々と一対一で戦えないなんて情けないけど、この魔法使い相手ばかりはどうしようもない」
「魔法使い……」コウは考え込んだようだ。「道士として聞き捨てなりませんね、お手伝いします。そいつはどこにいるかわかります?」
「わからないけど、追われているのはむしろ僕……違うな、グレイルっていうこれも強い美男子だよ」
「ここの世界は混沌としていますね。いくら犯罪多発していても、元の世界が平和に思えます。ではその美男子に会いましょうか。三対一ならなんとか……」
折しも夕闇が近付いていた。これからどうなることやら……破天荒波乱万丈な僕の人生も語るに多すぎるよ!
(亜崎愁さま、akiruさま、初孤羅さま。ご参加ありがとうございました。不備があれば訂正します。言動をアドバイスください。他の会員さまもお願いしますね、参加待っています)
(続く)