(アメブロ創作同盟有志のキャラが出演します! 著作権はキャラ提供者さまにあります)
いいかげん辺鄙な草木まばらな草原でお腹が鳴って飢え渇き困る僕、時雨だった。とりあえず、川に行き当たる。水はそこそこ澄んでいるな、泳ぐ小魚も見えるけど網も釣り針も無いよ。雑魚に食欲が湧く。
どうしようかなあ、僕タバコ吸わないからライター持ってないし。狩りや漁をするにも、獲物を食べるのに火を通せない。飲み水を煮沸するのも無理か。
ここで川の水を飲もうと手ですくうつもりで、身体をかがめた!? 瞬間、頭上を後ろからなにかさっとかすめた。石?
攻撃を受けたな。僕は即座に臨戦態勢を取っていた。ひらりと側転し、次いでバク宙決める。後方をそれで確かめ、至近に敵はいないことを知ると向き直り構えもせず余裕で佇む。やや遠い間合いに数人。数える。
ふむ、薄汚い身なりのちんぴらが九匹か。石なんかで倒そうなんて甘いね。銃や剣どころか、布製の棍棒を持っているだけだ。どうやら砂利石が詰まっているな、出血させずに敵を倒す、身ぐるみ剥ぐ追いはぎならではの武器だ。だったら。
この僕が素手で負けるはずはない! 突っ込んで行く。いちいち相手にするのは空腹だからめんどい。最小限の力の突きで人体全面中央線の急所を連打する。賊どもはころころ倒れた。最後の三人は短剣を抜いていたけれど、そんなものかすりもしなかった。
勝利! RPGなら経験値と金が手に入るところだ。物色する。小銭かな、銅貨なら一人当たり五枚程度は持っていた。円に直すと幾らになるだろう?
それより気になったのは、ボスの不在だ。みんな同程度の小銭しか持っていないのはおかしい。元締めがどこかに潜んでいると考えて自然。そもそも、こいつら一人も食糧を持っていないんだ。ひもじいよう!
辺りを確認する……長身でブロンドの、王子様のような衣服のイケメンが! こいつが元締め?! 憤りを感じる。僕は突進した。スーツに皮靴ではオーバーアクションだけど、とにかく飛び蹴りかます。
敵は蹴りを正面から受けた。手の平で! びくりともしない。なんて体力! 僕はその手で蹴り上がって反転して手で着地、半回転して足で立ち正対した。
男は冷静に手で制した。「貴方と戦う理由はない。私はグレイル。ただはぐれた弟を探しているだけだ」
へ~っ。グレイルか。僕シグレとグレ繋がりだ。もっとも僕はグレたことないからね! 本職警備員だし、高校では風紀委員長だったんだよ。
グレイルは困った口調だ。「ここは私の女神プラフの創造した星ではない。イシュタルとも違う。弟を探しているんだ。一緒に迷い込んだはずなのだが……名をリオンという。見た目は十歳児だ」
ここで僕はグレイルを値踏みしていた。彼も僕と同じ組織「ジェイルバード」の隊員だ。ただし創造主の違うアナザーデッキか。僕は創造主が『紙』のファーストデッキ。対してこの世界の正規隊員はインフィニティデッキとされるな。
ジェイルバードはゼロデッキが始まりとされる。1994年に結成され揺れていた世紀末の世界を六年間駆け抜け、恐怖の大王を制し世界の破滅を防ぎ、1999年に解散した若者魔法使いたち……。
西暦2000年度のITバブルの立役者ともされている。彼らのおかげで、平和がもたらされたと思ったのに。新世紀世界的テロを機に新メンバーの少年少女たちで再結成されたのが、いまのファーストデッキ。
僕はそのナンバー5らしいな。らしい、というのはジェイルバードは秘密の組織なので、隊員同士が接触するなんて例はマスターが蜂起の檄を飛ばした時くらいしか無いためだ。
と、白いふりふりな衣装のローティーンの小柄で萌萌な金髪の美少女と、パステル色鮮やかな可愛らしい衣装の十歳くらいの美少年が歩いてきた。幼いころのグレイルかな、すると。「きみ、リオン?」
グレイルは叫んだ。「違う、ヘイトだ! 外見は双子だがまったく違う。イシュタルに特化された存在、まともに戦って勝てる相手ではない」
ここではっと気付く。紅い目をした美少女、手に枷を科されている! 囚われの身なの?
「ふふ……遅いよ」ヘイトは呪文の詠唱を終えていた。「ダークドラゴンイリュージョン!」
虚空から巨大な漆黒のドラゴンが出現した! 僕に襲ってくる! 幻影のドラゴンか。闇の魔法。
グレイルも対抗呪文を詠唱していた。こちらは光の魔法だな。「ヘブンサンレイ!」
ヘイトの生み出したドラゴンの幻影に、グレイルの眩い光線が直撃した。ややヘイトの力が上か……僕は残っているドラゴンの急所人中(竜中?)をドロップキックで直撃した? 硬い! こいつ強すぎる……
幻影のはずなのに、やけに頑丈だな。打撃技をコンボする。次々攻撃し敵に反撃の機会を与えない。数十発連打でようやくドラゴンは消え失せた。手強いな。
僕を睨むヘイトは驚愕の目だ。「おまえいったい、なんなんだ?! 怯むとか恐れとか憎むとか哀しむとか……感情と言うものを知らないなんて……それで人間か、それとも知性が無いのか?」
「良く鈍感とか図太いって呼ばれます」僕はさらりと答えていた。「逆に感受性高すぎとも……」
「時雨。私に乗れ! 離脱するぞ」
グレイルが姿を変えていた……煌く黄金の竜となる。僕はその大きな背に乗り、空へ舞いあがり恐ろしい実力の子供から逃げていた。助かった!
グレイルは警告した。「ヘイトも竜になれるから油断はできない。私でも正面勝負では勝てないだろう。しかし大人と子供の体格差、そうそう追ってはこられない。それより彼はどうするつもりなのだろう……彼の女神はここにはいないのに」
僕は意見した。「なんとかしてヘイトに捕まっている少女を助けないと……警備員として見逃せない」
「それも必要だが、大切な人質を殺したり虐待したりするほどヘイトは愚かではない」グレイルは考え込んでいる。「先日、この世界ではデーモンとの戦いと、シント共和国オスゲル帝国との決戦があったとか。シントは鎖国政策を止めてくれたら、安全な城塞都市に暮らせる理屈だ。もっとも、キュート王都も表通りとなると華やかに栄えている。身元の知れない流れ者も入れるから、ひとまずそこへ身を預けよう」
僕は飢え餓え渇いていたことを思い出した。いまになって旅と戦いの疲労が襲う。グレイルの背で、うつぶせになって深い心地よい眠りに落ちていった。
(亜崎愁さま、akiruさま。ご参加ありがとうございました。不備があれば訂正します。言動をアドバイスください。他の会員さまもお願いしますね、参加待っています)
(続く)