……その日も、神々の馬鹿げたお遊戯は続いていた。人に多大な試練を課し、それを楽しみ、かつ人には魂がないかのように、痛みを兵器で与える愚かしい神々……そんな奴らの築く欺瞞で独善的な狂った世界で、すべては生み出され、苦しみ、死んでいった……
 ……
  ……
一行の四人。全員人間、中立
直人 男 盗賊 漆黒の革鎧、短剣、縄、火酒
真理 女 魔法使い 紫のローブ、杖
涼平 男 神官 白銀の鎖鎧、鉄鎚、楯
逢香 女 戦士 深紅の板金鎧、剣、楯
  
 新規キャラをかくて作成し、魔法魔物蠢く中世西洋風ファンタジー世界への冒険は始まった!
直人「この四人でいざ、小悪鬼の居城へ!」
真理「小悪鬼退治とは、定番ね。弱い者いじめみたいだ、小悪鬼可哀そうと非難も多いわ」
涼平「でも最弱のモンスターの代名詞小悪鬼相手とはいえ、一個中隊三十匹は軽くいる砦をたった四人で陥落させるのは無理があると思うぞ。あたりまえだけど俺たち全員レベル1だし」
逢香「そもそもこのゲーム、ゲームバランスいいかげんだものね! まともにプレイされた例の方がはるかに少ないわ、プレイヤーがマンチキン的な反則をするか、マスターがなんらかの助け舟を用意するかで決まる。さもなければ全滅直行!」
真理「シビアなルールよね、反則したくなって当然」
直人「つ~か涼平、たしかおまえいつだったか死んだはずじゃなかったか? おれが後を継いだような……」
涼平「あのときの俺は戦士。俺は僧侶として復活したんだよ。だいいちいまの俺の魂『紙』じゃないし」
逢香「まともに前線で戦っていられるのは私だけね。涼平はあるていどカバーしてくれるのでしょうけど。真理と直人は後方支援よろしくね」
真理「まかせて。呪文を唱えるだけが魔法使いじゃないわ。作戦考えた」
逢香「なにか手があるの?」
真理「私たちが戦っている隙に盗賊直人は分離行動を取り、お宝さらう。裏口から入ってもらうわ」
直人「それはいいな。盗賊の忍び足のスキル生かせる」
涼平「あ、直人。縄くれないか。使い道を思いついた。それから火酒よこせよ、こんな時に酔っ払われたらかなわないからな」
 数十分経過した……小悪鬼の居城から、煙が立ち込め内部は炎に包まれている……
背中に刃傷矢傷負った直人「おまえらはあぁ! おれを囮にしやがったな! 放火なんかしやがって」
真理「結果的にはそうね、成り行きよ、怒らないで」
直人「どこが成り行きだ! おれの火酒を燃料に、縄を導火線にして放火したんだろ」
涼平「回復魔法で治療してやるよ。それはおいてお宝取りに行こうぜ、金貨換算で五千枚は眠っているぞ」
逢香「まだ燃えているから入れないわよ。お宝も焼けて価値が下がるでしょうね、五分の一くらいに……あ、まずい!」
 ガラガラ……ズン! と響く轟音。四人が見守る中、小悪鬼の居城は脆くも崩れ落ちた。
涼平「あちゃ~っ、お宝が。掘り出すか?」
真理「でもこの世界金貨の価値って、『紙』の世界では一枚一ドルくらいよ」
 一瞬絶句する一同であった。
直人「馬鹿らしい、たった千ドル取るために砦のガレキの山まるまる掘り返す重労働なんて! 重機を使ってもレンタル費用燃料費用でペイしない」
逢香「この世界重機なんてないわよ、銃器もね」
直人「バイトしたって一時間十ドルは稼げるぞ、いまこのゲーム世界造ったもとの『コメ』世界インフレだから」
真理「この世界、バイトっていったら奴隷のような労働者階級の日雇いだから、飢餓的賃金よ」
逢香「粗悪な金貨ね、金の含有率がよっぽど少ないのか……悪貨は良貨を駆逐する、かしらね」
真理「純金の金貨なら、一枚で千ドルはするのにね」
直人「誰だ、こんな馬鹿な作戦考えたのは!」
涼平「俺だ! すまない、みんな。灰燼に帰したな」
真理「まあ小悪鬼たちを退治できただけでも任務は成功だし、損して得取れというわよ」
逢香「損して恥掻くじゃない? このゲーム、財宝の価値で経験値決まるのよ! 金貨一枚経験値一点。一人金貨千枚ちょっともらえばみんなレベル2に上がれたのにね」
直人「千ドル程度でレベルアップするのも安っぽいが。金も経験値も貰えず、俺だけ怪我しておしまいかよ!」
真理「でも名声は得られたわ。次回のミッションに期待しましょう」
直人「俺たちは騎士ではない。名誉で飯が食えるかよ!」
逢香「一応廃城物色しましょう、小悪鬼の武器武具装備も叩けば売れるかもだし。粗悪なシロモノとはいえ、一ドルよりは高いはずよ」
真理「無駄と思うわよ、雑魚の粗悪な武具の鹵獲品を持ち帰って換金した例なんて聞かないわ。それに武器防具冒険装備の街での売値は、この世界は格安だしね。魔法のアイテムでもない限り。そんなの小悪鬼が持っているはずないし」
直人は呻いた。「おれ自棄酒飲む!」