(アメブロ創作同盟有志のキャラが出演します! 著作権はキャラ提供者さまにあります)
 
 私、クワイエット・ラプターはすっかり酒宴に酔っていた。カルアミルクの甘さは、ケーキの甘さを隠してしまうな、食べ合わせは絶品だがいささか食べ過ぎたか。名ばかりは従軍心理医師、シント共和国随一の将官なのに不養生極まりないな。
 宴会の夜を迎え、昼間眠っていた連中はエレベーターされてくるふんだんな具材の手の込んだ調理法の見た目も華やかな豪勢な肉魚穀物野菜果実の食事を酒とともに済ませると、三次会に突入していた。この世界極東の島国光の文明文化のカラオケだ。
 ただでさえ電子要塞化されたシントの中枢部、総統の働く地下三十階の執務室は電子機器ならなんでもそろうな。いまや亡き前総統閣下にはこのくらいの息抜きをさせてあげるべきだった。
 さんざんアルコールを嗜んだので、みんなできあがっている。まあリオンは子供だから別だが(の、割に今朝は飲むところだったが)、セラフは何歳だ? ワインなんて飲んでいいのか。
 かくして「のど自慢大会」は始まったが、こいつらサイコ野郎どうしてくれようか。テーマを絞って、神話光の文明華開いた、伝説の二千年紀前後の歌を選ぶことにしたのだが……
「仰げば尊しならぬ甘いな唐菓子(とうかし)!」と、可愛く歌い出すリオン。シラフだよな、それともいつの間にか酔っているのか? 純真なこの子供が。
「団子ならぬ談合三兄弟!」真理亜が熱唱する。なんだこれは! 前時代の見事な社会風刺であるが。
「乾杯ならぬ完敗!」優輝が振り付けまでして激しく歌う。失敬な歌だな。
「Ζガソダム、落ちこぼれへ哀を込めて!」アーダはゆとり教育時の世代とやらを歌っている。
「エヴァ、残酷な原子のテーゼ!」知的な総統閣下、ソングが壊れた! 放送禁止ものだぞ、これは禁句、犯罪だ。やはり中央集計処理の仕事は辛いのだな。
「森のクマさんではなく、居酒屋のウワバミ」クールな浅尾先生がまさか! 彼まで壊れたか?
「ホタルならぬホテルの光」と、セラフ。ヤバいだろ! 羞恥心ないな、この餓鬼は!
「地上の星ならぬ地上の食」と、まさにこんなカオスな宴会に適した歌を熱唱するアレス。
 
(以上私の自作替え歌。法に抵触するのでここでは歌詞は公開しません。歌詞を知りたい方は連絡下さい、メッセージにて転送します。著作権法に触れるので、ネット公開は避けて個人の利用のみにしてください。商売目的に使うことを禁じます)
 
 歌いつつもすでにフルコース料理食べた後というのに、ポテトフライやピザのジャンクフード食いまくり、健康な青少年期の食欲を満足させていた。みんな若い、飲み食いしてもそうそう太らない年頃である。飲み物といえば気軽に飲めるビールが流行っていた。
 浅尾は引用した。「『紙』によると、人生とは酒、酒こそが人生。酒とは忘憂の物、酒とは天の美禄」
 ……酒豪の言うことは違うものだな。真理亜もなかなかの酒豪だ。軽く十杯は空けたか?
 ……兎に角かくして三次会も仲良く終わろうとしていた。長い宴会もここでおしまいである。ツンデレで知られる浅尾先生も満足気に、感謝の意を表している。
 そういや、タバコ吸う人いないな。総統の部屋だから遠慮したのかな。ほんらいシントではタバコは合法、酒は違法だったのに妙なカリカチュアである。
 ここでラストオーダー、最後の一杯を頼んだ。私はカルアミルク、アーダはミルクティーブランデー割り、イノセントはコークハイ。
 ソングはシャンパン、真理亜はブラッディー・マリー、浅尾は気取ってプース・カフェ、石田はスティンガー、優輝(年齢不詳)はミント・フラッペ、アレス(十九歳)はスクリュードライバー。
 セラフ(何歳だ?)はレッド・アイ、リオンはセラフから勧められた発酵蒸溜葡萄ジュース……ん? それって!
「待った、飲まないでリオン!」
 私の制止は遅かった。リオンは苦しげな顔をし、息を……!? 口からドラゴンみたいに火炎噴射した! なんたって子供、それも闇魔術師がブランデーストレート飲んだものだからな。
 ここで火災探知機が作動し、室内に消火用の霧状の水(ミストシャワー)がさんざん噴き付けられた。すぐに止めようとしたが、防災端末はなかなかいうこと聞いてくれない。全員はすっかり濡れそぼってしまった。制御室の電子機器は防水加工だが。
 私はセラフに詰め寄る。「誤りを謝りなさい」
 セラフは意に介していない。「あの謝りは誤りだった。いえ、あの誤りは謝りだった」
 普段三枚目なんてとても演じない浅尾は、ぐったりと言った。「どっちなんですか?」
 優輝は怒っている。「飲食物で遊んじゃいけないと言ったのに! 片づけはオレがします」
 石田は冷静に言った。「とにかくあったかいシャワー浴びて着替えましょう。風邪を引く」
 私は念のため忠告した。「人肌並のぬるい湯にしろ、心臓麻痺とか脳卒中にならないように」
 リオンはまた半泣きだ。「服が濡れて肌に張り付いて脱げないよ……」
 セラフはリオンの衣服をまた脱がそうとしている! このガキは……ったく! って、アーダも近づこうとしているな、止めろ、親友よ。ここはイノセント、男の気概を見せてくれ。
 アレスが進み出た。「セラフさん、浴室は男女別です。リオンくんの世話は俺がしますよ」
 真理亜もたしなめた。「いっしょに来なさい、セラフ。小さい男の子辱めるなんて最低よ」
 セラフはぼやいていた。「同性同士それも多人数で風呂に入るなんて不潔よ!」
 私はぐったりしていた。この面子は……平穏に終わるということを知らないのか!?
 
(月村澪里さま、初孤羅さま、亜崎愁さま、ゆきえもんさま、SPA-kさま、akiruさま、秋月伶さま。有り難うございました)
(終)