ある晩秋の夜、ジェイルバード隊員に非常徴集が掛けられた。集まったのは隊員ナンバー3,4,6,8,12。十代二十代の五人。そびえるは巨大な人影……
直人「0からの司令……なんだ、これは」
涼平「巨大ロボット兵器らしいな、五人乗りの」
時雨「僕ちゃんたちに、これで戦えと?」
逢香「魔言ちゃんなに考えているのか……」
真理「敵は日中ナノテックね」
直人「ふむ、面子はおれ、涼平、時雨、逢香、真理の五人で決まりらしいな」
涼平「後は役割分担だな。まず操縦……うう、なにやら怖いがいちばんできるのが時雨だろうな」
時雨「了解であります!(気合い)」
涼平「後は射撃武器担当……これは直人に決まりだ」
直人「おれでよければ(集中)」
涼平「航法監視要員、逢香が合うかな?(ひらめき)」
逢香「任せて。ついでに剣戟戦闘も行うわ(熱血)」
涼平「サポート、衛生担当は真理だな」
真理「こんなメンバーで大丈夫かしら(加速)」
涼平「愚痴ってもしかたないだろ。俺は指揮・参謀役をさせてもらう(努力)」
 ここでパイロットスーツに着替える五人。色は、涼平が赤、時雨が黄色、直人が緑、真理が白、逢香が紫。
涼平「このカラーリングからして、リーダーはつまり……」
直人「おれだな」
時雨「階級からすると僕じゃない?」
真理「実力からいうとわたしよ」
逢香「カエルゲコゲコ言わないの!」
直人「機体名は超電機ろぼこん・ばとるふぃーばーか。ネーミングセンスからしてイカレてやがる!」
時雨「全長66.6メートル、重量666トンか」
逢香「軽過ぎない? 水に浮くわよそれじゃ」
涼平「ああ、水に浮くよ。なぜって装甲がパイロット席にしかない。あとは張りぼて同然、内部は金属ではなく樹脂製の機器だし、空洞部分多い」
直人「屁理屈はおいて、乗り込もうぜ(必中)」
真理「操縦席は胸部に五人全員一所なのね。合体ロボより、戦隊ものっぽい」
涼平「つまり機能一点張りだな、あのマスターらしい。五体分離したら全機雑魚ユニットになるのが合体ロボの宿命だからな」
時雨「あれ? マニュアルによると、分離できるらしいよ。頭と手脚全部遠隔操作端末兵器になる」
真理「つまりパーフェクトペヤングか! 新潟にしか操れないオレンジ攻撃ね」
直人「真理はヲタ女だな、本当に。酒飲めないくせにマシンに酔っている」
真理「私のカレーはパイナップル~♪(鉄壁)」
涼平「最近著作権法厳しくなったぞ、気をつけろ。たしかに新潟は米どころだ。上戸が多い。ここで漏斗を英語に訳すと……Function!(覚醒)」
逢香「なるほど。でもそれすら禁止なの? 二次創作で。表現の自由が奪われかねないわ」
涼平「われわれが自由と権利を主張して、何度政府に踏み躙られたことか! 哀しみを怒りに変えて、立てよブロガーよ!」
直人「またアニオタの妄言が始まった……涼平はクリスチャンでアニオタでロリコンでさえなければ真人間なのに」
涼平「……敵機に対し、我々の戦力は三十分の一以下である。なのにいま敵機に立ち向かえるのは何故か? それは我々の大義が萌ているからだ! 萌上がれ!」
直人「誤字言っていないか、漢字。お~い、起きろよ……?! 涼平のやつ、酒入っているな(脱力)」
逢香「あちゃ~っ、酒飲んだ涼平くんは、酒飲まない直人くん以上に壊れるものね」
時雨「実は僕知ってたんだ、止めたのに、涼平さんは「こんな馬鹿、飲まずにやれるか」って暴飲して……」
涼平「キリストは言われた。ワインは神の血だ。酒の一滴は血の一滴と」
逢香「ではいまシラフなのは、わたしと時雨ちゃんだけじゃない。直人くんはいつだって飲んでいるし、いちばん真面目な真理がナチュラルハイ。というか時雨ちゃんだってシャブ中疑惑掛けられた、サイコパスとまで呼ばれたマンチキンよね。せめて0が助けてくれたらなあ……あ~っ、魔言ちゃんの馬鹿!」
時雨「僕らジェイルバードのマスターにすら不可能か。こうなったら、『紙』にでも頼るしかないね」
逢香「紙って?」
時雨「涼平さんが信仰しているのとは違う創造主」
逢香「ふむ……そいつの悪意をヒシヒシと感じるわ。きっと性格悪いわよね」
時雨「僕の聞いたところによると、直人さんがその『紙』の生まれ変わりというよ」
逢香「つまり酒色に狂ったお馬鹿ね。真理はよく直人くんと交際しているなあ……」
時雨「真理さんは『紙』の最愛の女性の化身らしいよ。なんでもそっちの世界で亡くなったから僕らの世界へ転生したんだって」
逢香「日本書紀に聞く、イザナギとイザナミか……」
時雨「日本書紀はさすがに引用しても、盗作にはならないよね。著作権何年切れているかな?」
真理「♪ネズミハウス、ネズミハウス、ネズミネズミハウス~、ネズミハウス、ネズミハウス、ネズミネズミハウス!♪ 著作権濫用ネズミ会社は~♪」
逢香「やだ、真理まで壊れないでよ! って、なに直人くん涼平くんと酒飲んでいるの? それに涼平くん、狭いコクピット内で喫煙しないでよ! 空調操作して、真理。換気を! あら、真理、そのエクセル会計書おかしい……この商法、ネズミ講じゃない! まったく魔言ちゃんったら」
時雨「なるほど。つまり軍需産業で儲けようとしている日中ナノテックを潰して漁夫の利、ぼろ儲けするつもりだね(激闘)」
真理「儲かるはずよ。行きましょう、わたしたちの生きる世界を守るために(幸運)」
逢香「結局ジェイルバードはそこに落ち着くのよね。一気に決めるわ、涼平、時雨。マップ兵器天上天下唯我独尊砲フォーメーションよ!」
時雨「OK! 逢香さん」
直人「ダウンジェノサイダークラスターEX、発射!」
 カッ……(閃光) ちゅどぉおおおおんん!(爆音)
涼平「雑魚は一掃した。敵旗艦のラスボスに二段攻撃用意!(魂)時雨、肉薄せよ! 突撃!」
真理「逢香、任せるわよ(必中)」
逢香「行くわ、五機分離Ⅴ連乱舞抜刀! 凶の太刀『暇乞い』! 修羅の太刀『粉雪』! 凶の太刀『天誅』、修羅の太刀『柔笑』、剛剣『死の暴風』!」
 チャキーーーーーンンンン!(金属轢断音)
直人「終わったな、帰って一杯やろうぜ!」
真理「でも帰るには飛行ドライブ燃料足りないわよ。総力戦だったから使い果たしたもの」
逢香「え? これからわたしたちどうするのよう!」
時雨「僕ちゃんの予感が当たった。このメンバーで潰れないはずがないもん。援護か補給来ないかなあ……」
涼平「戦いには勝ったんだ、後は潰れるまで宴会しようぜ! 食糧、酒に煙草の備蓄は裕に一週間分はある」
直人「賛成! ウォッカの語源はウォーターと同じ、水なんだよ。水のように痛飲するものさ」
逢香「そうね、仕方無いか。天災少年、飲酒の経験は?」
時雨「え? 僕未成年だよ。十三歳だもん」
真理「堅いこと言わない、こんな時は楽しみなさい」
 五人はハイになった……後には灰だけが残った。
  
(終)