(R15指定です。初めにお断りしますが、この物語には不適切な表現が多々描かれています。分別とご理解のある方だけ読まれてください。通報はしないでくださいね)
思い出した! 俺は神無月に語り掛けた。「ジェイルバード? 数年前世界を震撼させた謎のレジスタンス英雄組織。先輩はそれに加わっているのか……天才だな」
「いや、才能の天才より、災害の天災なのがジェイルバードだ。それに俺なんかより数学のできる奴なんて五万といるさ。しかし、そうしたインテリをあっさりとゲシュタルト崩壊させる、とっておきの『呪文』がある」
「先輩を超える天才を自我崩壊させる呪文?」
「『ゼロってなんですか?』ただこれだけさ」
「え? そんな当たり前の事でまさか。それはギャグか、なぞなぞかトンチかな?」
神無月はふっと笑った。「一足す一は二、これは三歳児にもできる常識ではあるが。改めて考えると、ゼロとはなにか、一とはなにかを定義付けられる公式など存在しないのさ」
俺は数瞬返答に困った。当たり前の概念ほど突き詰めると曖昧で、まさしく延々と考えても尽きない葛藤になる、か。「なるほど。国語か道徳の授業で「愛」とはなにか、をテーマにしたら、きっと素敵な話題で教室は一杯になるだろうが、単に「あ」とはなにかを尋ねたら、哲学的な会話すら困難になるだろうな。調べても定義は味気なく、本質的な疑問の答えは載っていない」
「そうさ。単に「ゼロとは」をググれば軽く数百万件ヒットするが、数学的に理詰めでは定められていても、概念の実体としてはまず取り上げられていない。おまけに概念だと数学を通り越して哲学になる。
哲学的に言うなら、完全なるゼロ、つまり無など存在するのか。ならば、ゼロより少ないマイナスとは一体何だという『中一病』に陥る。
初めて数学を習う生徒は負の数の概念を教えられると、混乱して一足す一すらわからなくなるものもいる。しかし、そうした概念的なことにつまずく生徒の方が、機械暗記で考えもせずにゼロ引く一はマイナス一としか言わないなんとかの一つ覚え人間より、見識が広かったりする。
物理的に言うなら、宇宙に完全なる無など存在するのか、という話にもなるし、宇宙はどこまで広いのかの無限を思案していたら発狂する。
五次以上の方程式は解けないことが、数学では証明されているが。どんな次元の方程式でも一律に解ける例外がある。各座標軸変数要素数がすべてゼロの場合だ。もちろん、これは式の答えにはならない。単に変数が一律にゼロだった時のみ解る例外だ。しかし、この宇宙最大の謎。無から有、ゼロから無限が生まれた答えはここにあるのではないか。ま、物理は知らない数学屋の妄言だが」
あまりの大きさのスケールのテーマに、俺は圧倒されていた。しかし俺も一言居士だ。「クリスチャンたる俺の私見としてはなんだが、神は偉大では「ない」という事実に最近気付いた。神とは偉いが、小さきもの。このあまりの情報化技術の進歩で、量子コンピューターすら実現がSFではささやかれている。宇宙の始まりから終わりまでを完璧に計算できるコンピューターが存在するものなら、神は宇宙より小さくて済む道理だ」
「俺も詳しくはないが、量子力学からすれば、分子レベルの物質の観測測定並びに運動予測はいちおう可能だが、素粒子では無理だからな。未知のランダムの雲に覆われた素粒子レベルで思考回路を組めば……文字通り、神は実現するかもな。俺は無神論者だが」神無月はニヤリと笑った。「以上、本当のような嘘の話」
「いや、なかなか核心を突いていると思うぞ。神が宇宙を作ったとするなら、神とは宇宙より大きいことになる。すると、「神」とやらのいる世界は宇宙より広いことになる、もっと大きな宇宙が存在することになる矛盾、パラドックスだからな」
「それなら無神論者の俺も共感できるな。宇宙の中に神がいる、宇宙そのものが神だとするなら。はは、ネット辞書ウィキならともかくアンサイクロなら採用され受けるネタかもな」
「俺は時々疑問に思うのだが、無神論者はそれで良く生きていけるな、という点だ。たしかに神に縋れば救われるから、と盲信するなら独善傲慢な欺瞞だが、人間を超越した絶対法則で愛と夢、希望、勇気……その他の美徳が生まれ、世界は真実は動いていると思うのだが」
「絶対の法則など数学の理論上でしか存在しないさ。だから俺は数学以外完全な劣等生だ。その論理学的に完璧に思える数学ですら実証物理学に応用すると矛盾点が出る始末だし。それに法則は破られるために存在するようなものさ」
俺は持論を展開した。「破る、といえば。宇宙は光より速く広がっている。すると次第に薄らいでいるわけで、エントロピー増大則そのまま再利用できないエナジー、単なる熱になっていく。そのまま世界の生命規模そのものも縮小しもし量子力学的にプランク定数を割り込めば、グルーオンをダイレクトに操作でき宇宙は意志の力と物質が等価になり、オカルト染みた御都合主義な魔法の使える世界、永遠の宇宙になる」
神無月は苦笑している。「きみとは話が合いそうだな。エナジーと質量が等価なのはとっくのむかしに証明されている。実験現場は日本の広島長崎でね。ここで仮説だが、光より速く宇宙が広がっているなら、その臨界線上で激しい反応が引き起こされ、質量が生み出されはしないか、ということだ。これなら宇宙は文字通り無限で永遠だ」
俺はここではっと我に返り、ふと疑問に思った。なんでさっきまで千秋と間抜けな会話をしていたのだろう……俺はできる男だよな。まあテストで百点を取ったくらいで、「俺は優秀なんだぜ」なんて自称して、赤点落第した生徒を馬鹿にするような奴は傲慢だし厚顔だしそいつこそ馬鹿だが。
そういや、高校で超痛いのがいたな。「俺は英語が一番得意だった。テストで八十点台を取り、一度通知表が4だった」なんて自慢しているのが。五段階評価で最高成績が一回一科目だけ4なんて、どれだけ落ちこぼれだよ。そいつは通知表を誤解していたな、五段階の平均成績は2.5だから自分はこれでも平均に近いと。まあ小数を知っていただけ褒めてやるか……。結局高校中退していたな。典型的な贈賄裏口入試組だ。金(円)の切れ目が縁の切れ目。
とにかく、酒は理性を狂わせることと、女は怖いことは分かった。では、目下無敵の俺たち……俺悪魔使い美嶋、魔女っ娘千秋、格闘技の帝王時雨、天才数学者神無月……と飛竜ニードル、悪魔ベレスで悪魔退治に乗り出すか! 悪魔より強いこのメンバーでくだらない世の中支配してやれ!
かくて雲蒸竜変な冒険の旅は始まった!
* 竜騎兵の変人! 序章結 *
思い出した! 俺は神無月に語り掛けた。「ジェイルバード? 数年前世界を震撼させた謎のレジスタンス英雄組織。先輩はそれに加わっているのか……天才だな」
「いや、才能の天才より、災害の天災なのがジェイルバードだ。それに俺なんかより数学のできる奴なんて五万といるさ。しかし、そうしたインテリをあっさりとゲシュタルト崩壊させる、とっておきの『呪文』がある」
「先輩を超える天才を自我崩壊させる呪文?」
「『ゼロってなんですか?』ただこれだけさ」
「え? そんな当たり前の事でまさか。それはギャグか、なぞなぞかトンチかな?」
神無月はふっと笑った。「一足す一は二、これは三歳児にもできる常識ではあるが。改めて考えると、ゼロとはなにか、一とはなにかを定義付けられる公式など存在しないのさ」
俺は数瞬返答に困った。当たり前の概念ほど突き詰めると曖昧で、まさしく延々と考えても尽きない葛藤になる、か。「なるほど。国語か道徳の授業で「愛」とはなにか、をテーマにしたら、きっと素敵な話題で教室は一杯になるだろうが、単に「あ」とはなにかを尋ねたら、哲学的な会話すら困難になるだろうな。調べても定義は味気なく、本質的な疑問の答えは載っていない」
「そうさ。単に「ゼロとは」をググれば軽く数百万件ヒットするが、数学的に理詰めでは定められていても、概念の実体としてはまず取り上げられていない。おまけに概念だと数学を通り越して哲学になる。
哲学的に言うなら、完全なるゼロ、つまり無など存在するのか。ならば、ゼロより少ないマイナスとは一体何だという『中一病』に陥る。
初めて数学を習う生徒は負の数の概念を教えられると、混乱して一足す一すらわからなくなるものもいる。しかし、そうした概念的なことにつまずく生徒の方が、機械暗記で考えもせずにゼロ引く一はマイナス一としか言わないなんとかの一つ覚え人間より、見識が広かったりする。
物理的に言うなら、宇宙に完全なる無など存在するのか、という話にもなるし、宇宙はどこまで広いのかの無限を思案していたら発狂する。
五次以上の方程式は解けないことが、数学では証明されているが。どんな次元の方程式でも一律に解ける例外がある。各座標軸変数要素数がすべてゼロの場合だ。もちろん、これは式の答えにはならない。単に変数が一律にゼロだった時のみ解る例外だ。しかし、この宇宙最大の謎。無から有、ゼロから無限が生まれた答えはここにあるのではないか。ま、物理は知らない数学屋の妄言だが」
あまりの大きさのスケールのテーマに、俺は圧倒されていた。しかし俺も一言居士だ。「クリスチャンたる俺の私見としてはなんだが、神は偉大では「ない」という事実に最近気付いた。神とは偉いが、小さきもの。このあまりの情報化技術の進歩で、量子コンピューターすら実現がSFではささやかれている。宇宙の始まりから終わりまでを完璧に計算できるコンピューターが存在するものなら、神は宇宙より小さくて済む道理だ」
「俺も詳しくはないが、量子力学からすれば、分子レベルの物質の観測測定並びに運動予測はいちおう可能だが、素粒子では無理だからな。未知のランダムの雲に覆われた素粒子レベルで思考回路を組めば……文字通り、神は実現するかもな。俺は無神論者だが」神無月はニヤリと笑った。「以上、本当のような嘘の話」
「いや、なかなか核心を突いていると思うぞ。神が宇宙を作ったとするなら、神とは宇宙より大きいことになる。すると、「神」とやらのいる世界は宇宙より広いことになる、もっと大きな宇宙が存在することになる矛盾、パラドックスだからな」
「それなら無神論者の俺も共感できるな。宇宙の中に神がいる、宇宙そのものが神だとするなら。はは、ネット辞書ウィキならともかくアンサイクロなら採用され受けるネタかもな」
「俺は時々疑問に思うのだが、無神論者はそれで良く生きていけるな、という点だ。たしかに神に縋れば救われるから、と盲信するなら独善傲慢な欺瞞だが、人間を超越した絶対法則で愛と夢、希望、勇気……その他の美徳が生まれ、世界は真実は動いていると思うのだが」
「絶対の法則など数学の理論上でしか存在しないさ。だから俺は数学以外完全な劣等生だ。その論理学的に完璧に思える数学ですら実証物理学に応用すると矛盾点が出る始末だし。それに法則は破られるために存在するようなものさ」
俺は持論を展開した。「破る、といえば。宇宙は光より速く広がっている。すると次第に薄らいでいるわけで、エントロピー増大則そのまま再利用できないエナジー、単なる熱になっていく。そのまま世界の生命規模そのものも縮小しもし量子力学的にプランク定数を割り込めば、グルーオンをダイレクトに操作でき宇宙は意志の力と物質が等価になり、オカルト染みた御都合主義な魔法の使える世界、永遠の宇宙になる」
神無月は苦笑している。「きみとは話が合いそうだな。エナジーと質量が等価なのはとっくのむかしに証明されている。実験現場は日本の広島長崎でね。ここで仮説だが、光より速く宇宙が広がっているなら、その臨界線上で激しい反応が引き起こされ、質量が生み出されはしないか、ということだ。これなら宇宙は文字通り無限で永遠だ」
俺はここではっと我に返り、ふと疑問に思った。なんでさっきまで千秋と間抜けな会話をしていたのだろう……俺はできる男だよな。まあテストで百点を取ったくらいで、「俺は優秀なんだぜ」なんて自称して、赤点落第した生徒を馬鹿にするような奴は傲慢だし厚顔だしそいつこそ馬鹿だが。
そういや、高校で超痛いのがいたな。「俺は英語が一番得意だった。テストで八十点台を取り、一度通知表が4だった」なんて自慢しているのが。五段階評価で最高成績が一回一科目だけ4なんて、どれだけ落ちこぼれだよ。そいつは通知表を誤解していたな、五段階の平均成績は2.5だから自分はこれでも平均に近いと。まあ小数を知っていただけ褒めてやるか……。結局高校中退していたな。典型的な贈賄裏口入試組だ。金(円)の切れ目が縁の切れ目。
とにかく、酒は理性を狂わせることと、女は怖いことは分かった。では、目下無敵の俺たち……俺悪魔使い美嶋、魔女っ娘千秋、格闘技の帝王時雨、天才数学者神無月……と飛竜ニードル、悪魔ベレスで悪魔退治に乗り出すか! 悪魔より強いこのメンバーでくだらない世の中支配してやれ!
かくて雲蒸竜変な冒険の旅は始まった!
* 竜騎兵の変人! 序章結 *