ソング(女)「ゼット! 起きなさい、貴方を召喚します」
ダグア(男)「……うるさいなあ、寝かしといてくれよ……それに僕はそんな名前じゃない」
ソング「貴方こそは人類に残された最後の切り札、短剣ゼット」
ダグア「僕はダグアだ。短剣は当たっているね、ただ原始の短剣がダグアこと僕だけど。僕を呼ぶとは……きみは誰だい?」
ソング「私はシント共和国士官ソング。古来の盟約により、貴方を隊長に竜騎兵小隊を結成します」
ダグア「僕はもう、戦いはごめんだ。お断りするよ」
ブレード(竜)「我が友、そうはいきません」
ダグア「ブレード! また逢えるなんて。仮にもシザーズに競り勝てたきみだものな……おや、見慣れない顔だね」
ラドゥル(男)「初めまして閣下、よろしくお願いします。仕込杖の軍士、撃墜王ソードケイン卿ダグア。僕はラドゥル、あなたの血を引くものです」
ダグア「僕の血を引くとはね。そっちの女の子も竜騎兵かい?」
ペオ(女)「俺はペオだ。よろしくな」
ダグア「こちらこそ。で、任務はなにかな?」
ソング「シントに未確認戦闘機が迫っているのです!」
  
霞(女)「不知火、腰ぬけくん! リンクして」
不知火(男)「もうゲームは終わったんだ。なにを慌てて、霞?」
霞「美嶋少佐の命令よ。なにか非常事態が起こったみたい」
不知火「時雨のおっさんまで」
時雨(男)「また遊べるね、不知火ちゃん」
不知火「ちょっと待てよ。このウォッカ飲み干してから行く~」
霞「酒飲んでいるの!? こんな朝から。まったくろくでなし! 金森先生に頼んで胃洗浄させようか?」
美嶋(男)「神無月から緊急連絡だ。ゲーム世界がジャミングされた! 現実が異世界と繋がってしまったんだ。不知火、戦闘機小隊を率い敵を撃退せよ! これは遊びではない、この世界の死は現実の死を意味する!」
不知火「って、俺が隊長なの? 俺は三飛曹、霞は飛曹長、時雨は准尉なのに。敵影……これってドラゴンじゃない?」
  
数値は順に攻撃、防御、機動、速度
ダグア   ブレード
 4363
ペオシィン シザーズ
 4156
ラドゥル  ハーケン
 5614
不知火 零戦21式改
 5137
霞   紫電改
 5128
時雨  スピットファイア
 3526
  
ダグア「あれが敵機か……武装が機銃のみの、古代の戦闘機」
ラドゥル「いかがされます、ダグア隊長」
ダグア「正面から応戦するしかない。僕の後に続いてくれ」
ペオ「ダグア隊長の騎竜は速度が遅いな。シザーズの半分だ」
  
時雨「敵ちゃん、突っ込んでくるよ」
不知火「応戦だな、全機最大戦速!」
霞「危険では? しかたないけれど」
  
ラドゥル「速度が違い過ぎる! 殺られる」
ダグア「落ち着け、旋回半径の小ささを生かせ」
ラドゥル「振り切れない! ハーケンは機動性が唯一の弱点なんだ!」
ダグア「仕方ないな、そいつは僕が引き受ける。ペオはシザーズ、敵機に迫れる速度だ。隙を狙え!」
ラドゥル「あの速さでは、ハーケンお得意の白兵戦だってかわされてしまう……手の打ちようがない」
ペオ「ラドゥルは楯になりな。その間隙に俺が仕留めてやるよ」
ダグア「ペオ、気をつけるんだ。シザーズの弱点は防御力にある」
ペオ「敵機も軒並み、防御弱そうだけどな」
ダグア「そうだね、一撃でも浴びせれば倒せる」
  
不知火「なんという機動性、オーバーシュートした、ヤバい!」
霞「いえ、ドラゴンの吐息は射程が短い。一撃離脱戦に徹するべきよ」
不知火「まさかゼロを圧倒する機動性とは……あの大きいドラゴンだけは、鈍そうだな。ここは優先的に叩くか」
時雨「でもガードは堅そうだよ。後回しにして、僕たちは隙の側背に回って敵の機動性に対抗したらどうかな」
不知火「そうだな、うまく包囲できれば攻撃は当たる。最大速度の利点を生かすか。よし、いったん転進、距離を取れ」
  
ダグア「敵機は間合いを取った……うかつに踏み込めないな」
ペオ「かといって、背を向けて逃げることは危険だ。最大速度の利点は敵にある」
ダグア「僕を先頭に、縦列隊形を。ラドゥルは真ん中、ペオは後ろだ。前進して一点突破し、格闘戦に持ち込む」
ペオ「敵が乗ってくれば、の話だな。戦闘機連中は格闘戦をしたくはないだろうし」
  
不知火「敵は陣を敷いたか。優位な体形を崩さないつもりだな」
霞「どうする、腰ぬけくん。こちらも陣形を取ったまま接近する?」
不知火「いや、ここは最大速度の利点を生かす。思い切って散開しよう。敵をおびき寄せて再集結、包囲して一気に叩く」
時雨「僕ちゃんの機体は遅れをとるかも……なら、僕を囮にしていいよ」
  
ラドゥル「敵機は散ったぞ、逃げる気かな?」
ダグア「いや、こちらを分散させて一撃離脱に持ち込む算段だろう。包囲網を敷かれる前に突撃だ。最も速い敵機に向かえ! 敵機は再集結するはずだ」
ペオ「なら、俺が突出していいのか?」
ダグア「だめだ、編隊を崩すな! きみのシザーズは防御力が無い」
ペオ「隊長自ら盾になってくれるのか」
  
時雨「あれ? てっきり敵ちゃんは僕に向かってくると思ったのに」
不知火「とんだ誤算だ、まさか霞が狙われるとは。時雨は追いかけろ、急げ! 霞は反転だ、間合いを保て」
霞「無理よ! いまさら反転したら背後を衝かれるだけ。一直線に敵竜を突破するわ」
  
ペオ「突っ込んできたな。ジェットストリームアタックをかませるか?」
ラドゥル「なんのことだい? また古語かい」
ダグア「真正面から迎撃する。続け!」
ラドゥル「かわせない! 被弾した、墜ちる!」
ペオ「ラドゥル、脱出しろ……やった、命中! 仇は取ったぞ」
ダグア「すまない! 消耗戦になったな」
  
不知火「霞! よくも……」
時雨「不知火ちゃん、熱くならないで」
不知火「わかっている、急速離脱せよ」
時雨「僕の機体じゃ無理だよ、速度が対等では」
不知火「やむないか、その速い竜を同時に狙う! ……当たった!」
時雨「うわあ、僕の機体燃えているよう! 助けてよう~!」
不知火「時雨まで……」
  
ダグア「ペオが墜ちた……一対一か。まさかこれほどの混戦となるとは……敵機、聞こえますか? 貴官の名前を伺いたい。僕はソードケイン卿ダグア」
不知火「不知火……本名は神無月真琴だ」
ダグア「! 神話初代王子ですか、魔王とすら伝説に残る」
不知火「なんのことだ? 俺はとっととお前を倒して、電脳世界のジャミングを解除する」
ダグア「貴方は『過去』だ。故に僕には貴方を殺すことはできない。どうかシントから退却してください、戦いは本意ではないのです」
不知火「システムを立ち直す必要がある。そちらの電算機をOSレベルから点検させてもらえれば、承諾を認めるが?」
ダグア「断る理由はありません。ソング指揮官! 神無月機のシントへの入港を許可願います」
ソング「撃墜王ダグア、了解します。御無礼致しました、英雄神無月陛下、この世界の異常を駆除願います」
不知火「やれやれ、お祭りは終わったか。みんなで一杯行きたいところだね」

(終)