剣崎涼平は『操縦席』の前に立っていた。眼前いっぱいに広がる永遠の夜、太陽の日の届かない太陽系外、彗星軌道の外宇宙。星空の映し出されているモニター以外の機器は無い、闇と同化しそうな操縦席に。計器もパネルも、操舵輪すらも無い。
それを見つめている涼平は、茶色のチェックのコートに白いジーンズと、秋物のカジュアルな服装をした、二十一歳の普通の青年だ。外見も。身長176センチ、手入れ不要の、自然のままの黒い短髪。後ろは刈り上げ、前髪はやや伸ばしている。長身で細身だが筋肉質の引き締まった体格。顔は真顔だと凛々しいと呼ばれるが、穏やかな笑みの方を好む。その涼平がいるのは。
広大な虚空にぽつんと浮かんでいる、ちっぽけな宇宙船。名を、『ドラゴンフライ』。
全長はほんの十四メートル、なまじ空を飛ぶ戦闘機より短いが、外見はなまくらなくさび型をしているので体積・質量は勝る。シルエットは鋭角な直線で構成され、曲面が無い。内部は長細く、前面に小さな操縦席が一つ。その後方に四畳間ほどの居住スペースがある。上方には、通行用のエアロック。機能的にデザインされた、最新鋭試作機の小型船なのだ。
そのコクピットにいる操縦者としては、涼平は場違いな人物かも知れない。だがそれを言うなら、涼平の唯一の相棒なんて。
操縦席を後ろから抱くようにして立っているのは、ピクシー。ほんの十歳そこそこの少女だった。やや栗色かかった髪はポニーテールで、水玉模様のワンピースを着た、小柄な少女。
まったく、場違いな二人……ましてや、この船。ドラゴンフライの、存在する目的をわきまえているならば。それを思うと可笑しくなる。涼平は苦笑した。これから行う行為について。
襟をただす意味で、しっかりと足を踏み締める。艦内での人工重力は、量子力学の当然の帰結として生まれていた。
涼平は覚悟を決めた。後ろに目配せする。
「ピクシー、用意はいいかい?」穏やかに問う。
ピクシーは快活に答えた。「もちろんよ。システム、オールグリーン。涼平こそ気をつけて」
「きみにとっては初めての地球だ。よく、状況を把握するんだよ」
「調べられる限りは、勉強したわよ」
「そうか」微笑むや、サングラスをかける。とたんに、四方を闇が包む。眼前いっぱいの夜が、さらに広がったのだ。涼平は見渡す限りの暗黒の宇宙に浮かんでいた。船内の、隔壁やモニターは消え失せた。
見えるのは毒々しい原色表示される各種計器のパラメーター、それに涼平と同じく浮かんでいるピクシーだ。サングラスは、同時にヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)でもあるのだ。
コンピューターによる、仮想現実。いまどき陳腐な設定だ。こんなもの使わずとも人間の脳に思念派を送って映像を見せる機械は、存在するのだから。全周囲モニターだってホログラムだって、同様に時代遅れだ。
それでも旧式なシステムを使うのは、偏に信頼性の点に於いてだ。
「推力と重力場、カットするわよ」
ピクシーが言うと同時に、涼平はガクりと落ちる感覚に襲われた。重力が無くなったのだ。自由落下。これが外宇宙。涼平はマジックテープで固定された靴を確かめる。浮遊感が全身をくすぐる。
対して。ピクシーを振り向く。彼女は無防備に宙に浮いている。ゆっくりと息を吐き、命じる。「では、行こう。エーテルドライブ作動、シフトエンター!」
言葉と同時に周囲の風景が、切り替わった。目を刺す眩い、日の光。下面に、眩く青い巨大な水晶球……地球が現れた。
「見つかっちゃった! あいてが、こっちを見ているわよ!」ピクシーが緊張した声で、報告する。
涼平は知っていた。こっちを見ているというのは、敵のレーダーがドラゴンフライを捕らえ、なおかつ火器管制装置を作動させている、という意味のピクシーの言葉なのだ。「大丈夫。攻撃の意志はないな。こっちが手を出すまで、相手からの反撃はないさ。その、一番近い相手は?」
「地上、いえ水面にある、対空兵器群みたい。海上艦船、っていうの? 距離、二千キロメートル弱。獲物の、護衛ね。推定される反撃の到達時間は、質量兵器なら120秒強」
「ならば、余裕は十分だ。ピクシー、感想は?」
「本当に重力が実感できるわ。地球、近づいて来てる。あ、もちろん、本当はわたしたちが落ちていることくらい、わかるわよ。報告。シフトアウト地点、計算値よりX+0.01%、Y+0.00%、Z-0.02%の誤差。現在高度1790キロ、衛星軌道内なので加速的に下降中、相対速度は……」
「もういいよ。獲物のデータを」
「涼平は、いつもそうなんだから。せっかく正確なデータを、教えてあげてるのに……」
「だけど物事には、優先順位というものがあるのさ。データは種々選択しなければ、ごみ。教えたろう?」
「その点が、わたしと涼平の相違、なのよね」ピクシーはふてくされはしなかった。むしろ、信頼の目で相棒を見つめる。「情報通りね。攻撃軍の、最新鋭宙戦機(宇宙空間戦闘機)の、テストが行われているわ。お目当てのクェルガイスト、見つけたわよ」
「計画通りだな。頂こう。シフトランチャー、撃て!」
「発射……? 駄目、外した!」失意と驚愕の声で、ピクシーが言う。
シフトランチャーの発射は単調なビープ音で知らされる他は、なんら爆音もなかった。振動すらしない。HMDにも、なにも射線は映らない。閃光もない。実弾を使う質量兵器ではないのだから。
HMDには船外カメラからの直視映像のほかに、三次元レーダーも表示されている。秒速数千キロというシフトランチャーの軌跡と着弾はそれに映像化されている。というか当然直接目視できる距離ではない。
目標は宙戦機クェルガイスト。『悩ます者』、を意味する驚異の新兵器だった。これを奪うのが今回の仕事。レーダーのかなたに目標を表すレッドポイントで示されている。別のウィンドゥではその情報と、データ映像。シャープかつ流線形をしたそれは、三角形のデルタ翼をした現世紀の戦闘機にむしろ似ている。
レーダーでは同時に、敵からの反撃も確認された。対処が早いな、とは思ったがこちらは秒速三〇キロもない。距離は千キロ以上離れているのだ。これなら猶予は十分だ。
「連続して狙って」冷静な、優しい声を崩さない。
「2回目、ミス。3回目、ミス。4回目……駄目、あんなに逸れるなんて!」
「落ち着いて、ピクシー。そうだ、深呼吸するんだ」いいつつも、レーダーを確かめる。敵弾は接近しつつある。やばいか? いや、ぎりぎりまで……。
「深呼吸? そんなこと、出来るわけ無いでしょ。……10回目、至近。11回目……目標ロック、確認! やったわ」
「よし、ズラかろう。シフト!」
「シフトドライブ、作動。本艦の時空間シフトエンターまで、あと13秒……11……10……」
機体が微妙に振動する。シフトドライブは負荷が大きいので、作動中は攻撃・移動・防御の各性能が、低下する。もっとも攻撃に弱い、危険な数瞬。涼平は直立したまま、腕組みをして冷静に事態を観察していた。
レーダーに反応……もう、視認できるはず。来た! 超高速で飛来する数千発の敵弾の雨。マスドライバー・キャノン(質量兵器、主に電磁気砲、リニアレールガン)だ。秒速数十キロで飛来する、口径50センチ級の砲弾の嵐。果たして涼平たちを直撃するか?
いや。慎重に、回避行動を取るドラゴンフライ。できるだけ砲火の弾幕の薄いところへ逃れる。閃光とともに、至近弾が次々と炸裂する。爆風と轟音がドラゴンフライを揺さぶった。
ドラゴンフライは、小型だ。ほんらい一人乗りの強行私掠艇であり、一発でも直撃を喰らえばひとたまりもない。持つのか、どうだ!?
敵の攻撃が、最も密になる瞬間。それは……早くも、7秒後か。それまでに……。
「2……1……シフトエンター!」詠唱するピクシー。ピーッ、と無機質なリレー音が鳴った。
涼平は大きく腕を振り払いながら、指をパチンと弾く。
目の前が一瞬真っ白に染まり……次いで、漆黒の暗闇が映し出された。数々の白い点。星々は瞬いてはいない。永遠の沈黙が支配する、外宇宙。深呼吸した。結局、直撃はなかった! 涼平と相棒は、生き延びた。勝ったのだ、今回も。
「お疲れさま、ピクシー」優しく声を掛ける。サングラスを外し、現実の視界に戻る。
「あなたもね、涼平。きゃあ!」ピクシーは、慌てて隠れる。涼平から離れると、すうっ……と身体が消える。「終わったら、呼んでね」
涼平は取り出した煙草にジッポライターで火を付ける。ピクシーは、この煙がとても嫌いなのだ。操縦席に座り込み、ゆったりと一服した。
宇宙海賊。そんなもの、現実にできるなんてね。いまは、まだ20世紀だぞ。もっとも涼平の本来の時間は21世紀であり、宇宙船等々の技術は27世紀のシロモノなのだが。涼平は白い煙とともに嘆息すると、遥かに思いを馳せた。
大航海時代にのさばっていた昔の海賊は、商船を襲っていた。新時代、新たな商品、新たな交易地、新たな交易路を見つけた冒険商船を。そして、海賊は、商船の金銭狙いというより、その高価な積み荷、商品を狙っていた。胡椒やシナモンのような異国の香辛料。黄金のような貴金属に宝石等の装飾品。異文化の生み出した、美術品。そして異人の、慰み物にする美女もかな……涼平は、皮肉に一人笑いした。
それを見つめている涼平は、茶色のチェックのコートに白いジーンズと、秋物のカジュアルな服装をした、二十一歳の普通の青年だ。外見も。身長176センチ、手入れ不要の、自然のままの黒い短髪。後ろは刈り上げ、前髪はやや伸ばしている。長身で細身だが筋肉質の引き締まった体格。顔は真顔だと凛々しいと呼ばれるが、穏やかな笑みの方を好む。その涼平がいるのは。
広大な虚空にぽつんと浮かんでいる、ちっぽけな宇宙船。名を、『ドラゴンフライ』。
全長はほんの十四メートル、なまじ空を飛ぶ戦闘機より短いが、外見はなまくらなくさび型をしているので体積・質量は勝る。シルエットは鋭角な直線で構成され、曲面が無い。内部は長細く、前面に小さな操縦席が一つ。その後方に四畳間ほどの居住スペースがある。上方には、通行用のエアロック。機能的にデザインされた、最新鋭試作機の小型船なのだ。
そのコクピットにいる操縦者としては、涼平は場違いな人物かも知れない。だがそれを言うなら、涼平の唯一の相棒なんて。
操縦席を後ろから抱くようにして立っているのは、ピクシー。ほんの十歳そこそこの少女だった。やや栗色かかった髪はポニーテールで、水玉模様のワンピースを着た、小柄な少女。
まったく、場違いな二人……ましてや、この船。ドラゴンフライの、存在する目的をわきまえているならば。それを思うと可笑しくなる。涼平は苦笑した。これから行う行為について。
襟をただす意味で、しっかりと足を踏み締める。艦内での人工重力は、量子力学の当然の帰結として生まれていた。
涼平は覚悟を決めた。後ろに目配せする。
「ピクシー、用意はいいかい?」穏やかに問う。
ピクシーは快活に答えた。「もちろんよ。システム、オールグリーン。涼平こそ気をつけて」
「きみにとっては初めての地球だ。よく、状況を把握するんだよ」
「調べられる限りは、勉強したわよ」
「そうか」微笑むや、サングラスをかける。とたんに、四方を闇が包む。眼前いっぱいの夜が、さらに広がったのだ。涼平は見渡す限りの暗黒の宇宙に浮かんでいた。船内の、隔壁やモニターは消え失せた。
見えるのは毒々しい原色表示される各種計器のパラメーター、それに涼平と同じく浮かんでいるピクシーだ。サングラスは、同時にヘッドマウント・ディスプレイ(HMD)でもあるのだ。
コンピューターによる、仮想現実。いまどき陳腐な設定だ。こんなもの使わずとも人間の脳に思念派を送って映像を見せる機械は、存在するのだから。全周囲モニターだってホログラムだって、同様に時代遅れだ。
それでも旧式なシステムを使うのは、偏に信頼性の点に於いてだ。
「推力と重力場、カットするわよ」
ピクシーが言うと同時に、涼平はガクりと落ちる感覚に襲われた。重力が無くなったのだ。自由落下。これが外宇宙。涼平はマジックテープで固定された靴を確かめる。浮遊感が全身をくすぐる。
対して。ピクシーを振り向く。彼女は無防備に宙に浮いている。ゆっくりと息を吐き、命じる。「では、行こう。エーテルドライブ作動、シフトエンター!」
言葉と同時に周囲の風景が、切り替わった。目を刺す眩い、日の光。下面に、眩く青い巨大な水晶球……地球が現れた。
「見つかっちゃった! あいてが、こっちを見ているわよ!」ピクシーが緊張した声で、報告する。
涼平は知っていた。こっちを見ているというのは、敵のレーダーがドラゴンフライを捕らえ、なおかつ火器管制装置を作動させている、という意味のピクシーの言葉なのだ。「大丈夫。攻撃の意志はないな。こっちが手を出すまで、相手からの反撃はないさ。その、一番近い相手は?」
「地上、いえ水面にある、対空兵器群みたい。海上艦船、っていうの? 距離、二千キロメートル弱。獲物の、護衛ね。推定される反撃の到達時間は、質量兵器なら120秒強」
「ならば、余裕は十分だ。ピクシー、感想は?」
「本当に重力が実感できるわ。地球、近づいて来てる。あ、もちろん、本当はわたしたちが落ちていることくらい、わかるわよ。報告。シフトアウト地点、計算値よりX+0.01%、Y+0.00%、Z-0.02%の誤差。現在高度1790キロ、衛星軌道内なので加速的に下降中、相対速度は……」
「もういいよ。獲物のデータを」
「涼平は、いつもそうなんだから。せっかく正確なデータを、教えてあげてるのに……」
「だけど物事には、優先順位というものがあるのさ。データは種々選択しなければ、ごみ。教えたろう?」
「その点が、わたしと涼平の相違、なのよね」ピクシーはふてくされはしなかった。むしろ、信頼の目で相棒を見つめる。「情報通りね。攻撃軍の、最新鋭宙戦機(宇宙空間戦闘機)の、テストが行われているわ。お目当てのクェルガイスト、見つけたわよ」
「計画通りだな。頂こう。シフトランチャー、撃て!」
「発射……? 駄目、外した!」失意と驚愕の声で、ピクシーが言う。
シフトランチャーの発射は単調なビープ音で知らされる他は、なんら爆音もなかった。振動すらしない。HMDにも、なにも射線は映らない。閃光もない。実弾を使う質量兵器ではないのだから。
HMDには船外カメラからの直視映像のほかに、三次元レーダーも表示されている。秒速数千キロというシフトランチャーの軌跡と着弾はそれに映像化されている。というか当然直接目視できる距離ではない。
目標は宙戦機クェルガイスト。『悩ます者』、を意味する驚異の新兵器だった。これを奪うのが今回の仕事。レーダーのかなたに目標を表すレッドポイントで示されている。別のウィンドゥではその情報と、データ映像。シャープかつ流線形をしたそれは、三角形のデルタ翼をした現世紀の戦闘機にむしろ似ている。
レーダーでは同時に、敵からの反撃も確認された。対処が早いな、とは思ったがこちらは秒速三〇キロもない。距離は千キロ以上離れているのだ。これなら猶予は十分だ。
「連続して狙って」冷静な、優しい声を崩さない。
「2回目、ミス。3回目、ミス。4回目……駄目、あんなに逸れるなんて!」
「落ち着いて、ピクシー。そうだ、深呼吸するんだ」いいつつも、レーダーを確かめる。敵弾は接近しつつある。やばいか? いや、ぎりぎりまで……。
「深呼吸? そんなこと、出来るわけ無いでしょ。……10回目、至近。11回目……目標ロック、確認! やったわ」
「よし、ズラかろう。シフト!」
「シフトドライブ、作動。本艦の時空間シフトエンターまで、あと13秒……11……10……」
機体が微妙に振動する。シフトドライブは負荷が大きいので、作動中は攻撃・移動・防御の各性能が、低下する。もっとも攻撃に弱い、危険な数瞬。涼平は直立したまま、腕組みをして冷静に事態を観察していた。
レーダーに反応……もう、視認できるはず。来た! 超高速で飛来する数千発の敵弾の雨。マスドライバー・キャノン(質量兵器、主に電磁気砲、リニアレールガン)だ。秒速数十キロで飛来する、口径50センチ級の砲弾の嵐。果たして涼平たちを直撃するか?
いや。慎重に、回避行動を取るドラゴンフライ。できるだけ砲火の弾幕の薄いところへ逃れる。閃光とともに、至近弾が次々と炸裂する。爆風と轟音がドラゴンフライを揺さぶった。
ドラゴンフライは、小型だ。ほんらい一人乗りの強行私掠艇であり、一発でも直撃を喰らえばひとたまりもない。持つのか、どうだ!?
敵の攻撃が、最も密になる瞬間。それは……早くも、7秒後か。それまでに……。
「2……1……シフトエンター!」詠唱するピクシー。ピーッ、と無機質なリレー音が鳴った。
涼平は大きく腕を振り払いながら、指をパチンと弾く。
目の前が一瞬真っ白に染まり……次いで、漆黒の暗闇が映し出された。数々の白い点。星々は瞬いてはいない。永遠の沈黙が支配する、外宇宙。深呼吸した。結局、直撃はなかった! 涼平と相棒は、生き延びた。勝ったのだ、今回も。
「お疲れさま、ピクシー」優しく声を掛ける。サングラスを外し、現実の視界に戻る。
「あなたもね、涼平。きゃあ!」ピクシーは、慌てて隠れる。涼平から離れると、すうっ……と身体が消える。「終わったら、呼んでね」
涼平は取り出した煙草にジッポライターで火を付ける。ピクシーは、この煙がとても嫌いなのだ。操縦席に座り込み、ゆったりと一服した。
宇宙海賊。そんなもの、現実にできるなんてね。いまは、まだ20世紀だぞ。もっとも涼平の本来の時間は21世紀であり、宇宙船等々の技術は27世紀のシロモノなのだが。涼平は白い煙とともに嘆息すると、遥かに思いを馳せた。
大航海時代にのさばっていた昔の海賊は、商船を襲っていた。新時代、新たな商品、新たな交易地、新たな交易路を見つけた冒険商船を。そして、海賊は、商船の金銭狙いというより、その高価な積み荷、商品を狙っていた。胡椒やシナモンのような異国の香辛料。黄金のような貴金属に宝石等の装飾品。異文化の生み出した、美術品。そして異人の、慰み物にする美女もかな……涼平は、皮肉に一人笑いした。