? 涼平乱心 ?

涼平「タバコの値段が倍になるって!?」

一典「ゆくゆくは一箱千円くらいになるらしいよ、欧米並みに」

涼平「一典、対地ミサイル貸してくれないか」

一典「いいけど(いいのか?)、なんに使うの?」

涼平「国税局吹き飛ばす! 財務省は庶民の敵だぁ!」

一典「え~っ、そんなのダメだよ、ちょっとどこいくの、涼平さん」

涼平「大義は我にあり! ファシストがあ、愛煙家をなめるなあ!」

一典「ぼく、涼平さんが乱れるのなんて初めて見た」

   ……

翌朝、直人「聞いたか、一典? 昨夜貨物船がシージャックされて積荷コンテナごと奪われたって。たった一人の男に」

一典「悪いやつがいるねえ。テロリストかな」

直人「その貨物船、タバコ輸送していたっていうけど」

ぎくりと一典「え?」

直人「密売目的だろうって警察は捜査しているけど、ブツがまだ出回らないから犯人はわからないってさ」

一典「……まさか一人で全部吸うのかなあ」

直人「そんなヤツいねえよ。そういや、今日涼平見ないな」

一典「はは……。そうだね、どうしたのかなあ」











? 暴風一典一過 ?

一典「おなかへった~、帰りマック寄ろうよ」

涼平「だめだ、一典。また太るよ」

一典「いま千円あるから、九個食べられるよ」

涼平「夕食前にそんな喰うな! ついてこい」

涼平、一典の手を掴んで歩きだす。

駄々をこねる一典「食べたい食べたい食べたい~!」

涼平「ほら、マック通り過ぎたぞ」

一典「やった! ぼくは誘惑に勝ったんだ」

涼平「よかったな、一典」

一典「お祝いにフラチン寄ろうよ」

涼平「おまえダメ過ぎ!」

一典「じゃあ涼平さんの家」

ぎくりと涼平「え?」

一典「食べて食べて食べ尽すぞう~っ、いぇい!」

涼平「やめろ、今月家計苦しいんだ! よせ、止まれ、一典」

一典「自宅のエンゲル係数が下がるのはいいことだ。楽しみ」

涼平「おまえには血も涙もないのか!」

一典「涼平さんはクリスチャンでしょ。奉仕して」

涼平「おまえ鬼だ! サタニスト~~っ!!! あ、直人助けて」

とどめの直人「涼平の家で宴会かい? おれも混ぜて。酒出るよね」










 酒吞童子、直人 

ドライジンマティーニを呑みつつ直人「人生とは酒、酒こそが人生」

涼平、直人の肩を揺する「お~い、起きろよ」

直人「なぜって、人間は酒で出来ているんだよ。キリストは言われた」

涼平「ちょっと~っ! 人の話しを聞けい!」

直人「夏はビール、冬は焼酎で決まりっしょ! ワイン、ブランデー、ウィスキー、ウォッカ」

涼平「出撃前だぞ、しっかりしろ直人」

直人「はふ? へべれ~け。ひっく!」

涼平「使いものにならない……」

直人「まともな話……素面で戦争なんてできるかあ! 狂気の沙汰なんだよ、どう言い繕っても」

涼平「……まあ、な。俺もタバコ吸うしな。紙巻きタバコは戦争用に発明されたんだよ。葉巻やパイプと違って両手空くから。おまけに葉巻なんかよりはるかに発癌性が高いし」

直人「酒もタバコも合法麻薬、それも極めて強いドラッグだ、はは」

涼平、背徳「俺も飲むか。注いでくれ。主の血に掛け乾杯!」










♪ 創世記 ♪

直人「最初に神は言われた。「お酒あれ!」こうして酒の海ができた」

涼平「次いで神は言われた。「タバコあれ!」こうしてタバコの山ができた。天地創造の馴れ初めである」

直人「珍しく意見が合ったな」

直人と涼平は肩を叩き合って爆笑した。

真理「それって猛毒じゃない。タバコのニコチンが酒のアルコールに溶け出したら、飲んだひと絶対死ぬわよ」

直人「ほう、かくて神は人間に死を与えたもうたのだな」

涼平「環境ホルモンってやつか、ダイオキシンみたいな」

直人「神は海に偉大なリヴァイアサンを入れた」

涼平「神は陸に巨大なベヒモスを放ちたもうた」

直人「ベヒモスが海に入ると、溢れてしまい陸地は水没する」

涼平「かくして最後の審判が始まる」

直人「最後の晩餐じゃなかったか?」

涼平「ベヒモスとリヴァイアサンは善なる人間の最後の食糧だものな」

直人「かくて永遠の酒宴は始まり……」

涼平「永遠の喫煙すらも許される……」

真理「言わせてもらうけど……あんたら馬鹿よ」










♪ 迷探偵ごっこ ♪

取調室にて、刑事二人と容疑者一人。横島直人刑事「そろそろ吐いたらどうだい? 涼平くん」

顔面に強力なライト当てられて、剣崎涼平容疑者「ううぅ……俺じゃありません」

直人刑事「調べはとっくについているんだよ、タバコをカートンごとまとめて万引きする常習犯って」

涼平容疑者「ううぅ……」

涼平に差し入れをする加科一典刑事「はい、親子どんぶり」

直人刑事「この場合、普通カツ丼だろ?」

涼平容疑者「……うう、そうなんです、下着泥棒の真犯人は実は直人なんです」

直人容疑者(なんでおれ? しかも下着ドロ!?)「バレちまっちゃあ、仕方ねえな。死んでもらうぜい! グサッ!(と、涼平を刺す)」

一典刑事「バーン(と、直人を撃つ)」

容疑者全滅。事件は解決した。

(あ、探偵出てこなかった。)

一典刑事「でも借金苦の涼平さんが、毎日きままにタバコを吸えるのは腑に落ちないなあ……それに直人さんがくすねていたのは、下着じゃなく酒でしょ」