原作小説は未読です。ネタバレは含みません。
【シナリオ】
それなりに複雑な舞台設定ではあるが、説明方法が実に丁寧である。たとえば、最初に翼の逃走を描き、翼の身体能力の高さを説明する。また、いきなり被捕獲者を惨殺することで、鬼に捕まるとヤバイということを説明。さらに、佐藤姓の死亡が報道されることで、二つの世界のリンクを説明する、といった具合である。
それに加えて、説明や独白に対する煙幕のかけ方もまあまあ上手い。特に、翼が妹とヒロシを助けに行くことを決心するときの心の有り様を、キャスターを絡ませて表現しているところが上手いポイントである。
たしかに妹が説明マシーンになっている点が気になったが、設定の複雑さを考えればこれは仕方ないだろう。
【映像】
走るシーンが見所らしく、なにげに多彩な撮影技法が用いられている(といっても、一度観た程度じゃほとんど分からないけど)。手持ちやクレーンを使い、目まぐるしく視点を変えて、かなり説得力のある逃走シーンとなっている。おそらく、アクション映画の殺陣のごとく、相当の時間をかけて撮影されているのだと思う。監督インタビューによれば、ハリウッド映画のカーチェイスを参考にしているらしい。まさに「見所」というにふさわしい出来映えだと思う。
これに対し、セットは明らかに簡素で、数も少ない。多分、予算やスケジュールの制約があってのことだとは思うが、この素っ気ないセットのおかげで上記逃走シーンが際立って見えるので、むしろ良かったのではないだろうか。
【ライティング】
なーんかライティングが好きになれないんだよなあ。
どうも、夜のシークエンスでノワールっぽい雰囲気を出そうとしている印象を覚えたのだが、不要だろう。
特に、冒頭の夜の逃走を学ランでやるなと言いたい。いや、やってもいいが、あそこまで黒く塗り潰す必要はあるまい。
なお、照明とは関係ないが、別世界ではオレンジ色っぽいフィルターがかけられている。
【総評】
主演の俳優については好き嫌いが分かれるであろうが、個人的には良作であると思っている。
初監督作品ということで既存のテクニックをきれいに履践しつつ、オリジナリティもある。
観ててスカッとするし、小難しいことを考えずに楽しめるのが良い。