「おかあさんといっしょ」の前の番組で、5分間のアニメーションがある。
曜日による日替わりであるが、1年間固定されているのは「カペリート」など一部で、新作ができるたびに放映される曜日もある。
原マスミやもりばやしみほ(「みほみほまこと」の一人、CDは個人的には朝日美穂しかもっていないが)などが声を担当している「ジャムザハウスネイル」は、月曜に放映されることが多い(気がする)
音楽は栗コーダーカルテットが担当していて、昔「幻燈音楽会」で映像と音楽を一緒に鑑賞する機会があり、「ジャム」のダイジェストをそのときに見た。
そのとき、原マスミは「オヤスミ」のスローな音源にあわせて作られた映像に生演奏で合わせることができず、苦労していたのを思い出す。
あの企画は足が疲れたが、また行ってほしい企画の一つである。


この5分のアニメは、挑戦的・実験的な性質を持つ。
連続ものではなく、クレイアニメなど一般的ではないアニメが多いが、5分間という枠がそれを可能にさせているのであろう。
その中で、特筆すべきは「すなあそび」である。
主に月曜日の祝日に放映されているが(不定期)、4/6のプチプチアニメでは放映されていた。


東京MXテレビでCMを紹介し、評論する番組があった(今もあるのかもしれないが)。
その中で、「NTT西日本」のCMだったと思うが、砂で絵を描き、それをアニメーションにするという印象的な作品があった。
TEPCO天気予報の影絵と、ステンドグラスを足して、3で割って、残りに何か混ぜ物を足した印象がある技巧であった。
その作品と同じ作者と思われる作品が「すなあそび」であった。


暗めの画面から始まり、台詞もなしに音楽が始まる。
「トゥギャザー、トゥギャザー、行こう」という、ルー大柴的な歌詞で本格的にアニメーションが動き出す。
砂の表現独特の、陰影のグラデーションが視聴者を深い世界に引き込み、緻密さに欠ける表情などの描写の弱点を補って余りある表現力を持つ。
暗い洞窟の中を2人の子どもが進んでいく映像で、この手法によく合った場面を描き出している。
この「砂」による描写でよくぞここまで、と思わせる躍動感があり、幻想性と相俟って画面から目を離すことができない時間が続く。


このアニメーションで面白いのは、アニメーションの「楽屋」的な部分が作品中に示されているところである。
洞窟の場面から、いったん明るい場面に切り替わり、自然光で二人(おそらく大人と子どもを想定している)の手と砂とが提示される。
「手の指でこのように一つ一つの場面を描いているのだ」ということを認識させ終わった後で、また自然光から幻想光へと切り替わる。
その後は、テーマの広がりを見せながら(フィッシャーの騙し絵的な広がりにも似ている)、子どもたちのつながりに完結させられている。
これだけ制約だらけの表現方法で、それを逆手に取った幻想性を導いている点で、「飯面雅子(いいめんまさこ)」  


このアニメーションは、音楽も成功していると考える。
歌い手は子どもの声であり、途中で多くの子どもの歌声が、ハーモニーではなく斉唱として重なってくる。
それも、訓練された児童合唱団のものではなく、一般的かそれ以上に「音程が怪しい」子どもの声で、である。
だが、この声だからこそ、このアニメーションの真の意図が表現されたと言えるのではないだろうか。


昔、ラジオで「神津善行音楽研究所」という番組があった。
神津善行は、本当は神津牧場の跡取だった人で、神津カンナの父親でもある。
「あなたのメロディ」の司会もしていた気がする。
「神津善行音楽研究所」は、いろいろなジャンルの音楽にスポットを与え、音楽の背景にある様々な情報を提示してくれた興味深い番組であった。
そのどこかの回で、次のようなことを述べていた。
「コーラスは上手すぎる人間だけを揃えるよりも、わざと下手なのを何人か混ぜておいた方が音に幅が出る」と。
実際、大多数の人間である程度安定した旋律が望めるのであれば、ありえない倍音成分をもたらすものは、異なるピッチの声だけであろう。
有名どころでは、オフコースの「I love you」あたりは、途中でかなりひどい音程の子どもの声が混ざる。
ここまでいくと、もはや倍音成分といったレベルではなくなってしまうが、小田和正の声とのコントラストは面白い。
個人的には、「I love you」は車酔いのときに効果のある曲No.1だと考えているが、比べたことがないので統計的な数字は出せない。


一応この歌は、作曲「つのごうじ(つのこうじ、ではない)」、歌「ピタゴラス」とはなっているが、トレーニングを受けた子どもは少ないと思われる。
だが、「はじめの一歩(ボクシング漫画とは関係ない)」という歌のタイトルどおり、これから前に進んで行こうという気になる活力が与えられる。
「倍音成分の充実」が、もしかしたら、違った境遇の子どもたちで手と手を取り歩いていこうという方向性を、効果的に表現しているのかもしれない。
マイナーチェンジ後はまだ見ていないが、「わたしのきもち」でも子どもが歌う歌が流れることがあった(年度末頃)。
「ぽっかーぽかぽかぽっかぽか」という部分のある歌だが、この歌も個人的には好きで何度も聴きたい曲である。
「はじめの一歩」よりは牧歌的なところがあるが、聴後感の余韻は結構近いものがあった。


「みんなのうた」のファンは少なくないと思うが、正直なところ、昔の「みんなのうた」の方が番組のコンセプト的によくできていたと思う。
現在の「みんなのうた」は、曲として多様性は出てきているのだが、「大人から子どもまで、皆が聴いて歌って楽しめる」というところからはずれてしまっている。
「とのさまガエル」「グラスホッパー物語」など、画面を見ながら聴いて楽しい歌はたまにある。
だが、最初から最後まで子どもが歌いたくなるような曲は、残念ながらあまりお目にかからない。
個人的に一番好きなのは「まあだだよ」で、この頃の「みんなのうた」は「誰が歌うか」ということよりも「歌自体の中身」に目を向けていたように思う。
「まあだだよ」は「A→B→C」の短く印象的な構成で、歌詞も子どもの自然な日常的な夢に目を向けており、つい口ずさみたくなる。
Aで変声期前の少年の独唱、Bで少しだけ年長の少女達の斉唱(合唱)、Cで掛け合いと、構成もよくできている。
本来の「みんなのうた」は、プロの歌い手が歌ってよく感じる曲でなく、少年少女の代表者が歌ったものを聴いても、一緒に歌いたくなるものでなければいけない、と考えている。
「矢車草」のような伝統童謡の名曲を採り上げることも、今はない。
時報の5分前に慌ててチャンネルを回すだけの力が、今の「みんなのうた」には失われているところが(少なくとも自分には)ある。


「すなあそび」のBGMには、昔の「みんなのうた」的要素がかなりある。
歌を主役にして、「みんなのうた」でこのままの映像で流す荒技もありだと思う。
おそらく、歌自体も評価され、子どもたちからも一定の支持を受けるであろう。
小学校の「今月の歌」として、教室から聴こえてくるだけの存在になる可能性すらある。
気の遠くなるような砂絵のアニメーション化だけでなく、この曲の魅力も短編としての名作に結晶化させた一つの要因であると考える。


「ガギグゲゴーゴーギンガくん」ほど短くないが、5分という制約はストーリー性を構築するには苦労があると思われる。
だが、この「すなあそび」はいつ観ても、5分という時間の密度の濃さを実感でき、壮大なファンタジーやミュージカルを観終えたレベルの余韻を味わうことができるのである。


できれば大きい画面がよいと思うが、見つけた動画も貼っておく。
なお、この前リンクを貼った、今井ゆうぞう&はいだしょうこの「ぼくときみ」は削除されていたので、リンクを変えておいた。