「ボンベイ」といえば、やはり柏の「ボンベイ」が思い出される。
自分にとっても原点の店であるので、この店が存在しないことは大変残念である。
この店は多くの人が取り上げているだろうが(サンプラザ中野とか)、いずれ自分なりに総括したい。
ちなみに、「ボンベイ」はインドの昔の地名で、今はテロのあった「ムンバイ」である。
柏と同じ名前の新宿西口「ボンベイ」は、「カレーと珈琲の店」とある。
だが、前に書いた「エチオピア」や「ハイチ」のように、特に珈琲を推しているわけではない。
高円寺のカレーハウス「コロンボ」のように「インドコーヒー」という特殊化された珈琲があるわけでもない。
インド料理、として認識しておくのがよい店であろう。
昼には行列ができる店であるが、メニューの増える夜はそれほどの混み具合ではない。
だが、昼でもメニューは充実しているので、試しに行くならランチタイムがよいであろう。
飲み物さえ頼まなければ、ナンとサフランライス・カレー1種類・サラダで1000円でおつりがくる。
カレー2種類にしたり、チーズ入りのナンのメニューにすると、1000円よりも少しだけ高くなる。
数量限定のバターチキンのカレーは、時間によっては品切れになってしまうが、それ以外の普通のカレーも美味しい。
2種類のカレーを注文するときにお勧めしたいのは、マッシュルームやえのきなどきのこをベースとしたカレーである。
この種のカレーは他であまり見かけないので、肉系のカレーとあわせて注文しておきたい。
この店のカレーの特徴は、「いろいろ入っている」ということである。
インドカレーやインド料理の店の多くは、スパイス主体の比較的シンプルなスープ状のカレーを出す。
食べ放題系やテイクアウトOK系の低料金インド料理の店は、特にこの傾向が顕著であるが、これはこれで美味しい。
「ボンベイ」の場合は、コリアンダーか何か細かく刻んだ「いろいろなもの」が入っている。
このあたりが、一言で片付けられない、複数の要素が入り混じった他にない味に結びついている。
コルマやバターチキン系よりも、普通のカレー(ガラムマサラ系)の方がその傾向が強い。
前述のきのこのカレーも、オクラなどいろいろな具財が確認できる。
難点を少し書く。
これは好みによるのだろうが、サラダは温野菜を冷やしたものに見える。
インド風のサラダは、多くの店で生野菜に薄橙色のドレッシングをかけている。
コーンを乗せていることも多い。
カレーの辛さにもマッチして、食が進む相乗効果があることが多い。
だが、ここのは位置づけが中途半端な気がする。
温野菜なら温野菜で、温かいままペッパーなどを効かして出してくれた方が、個人的にはよい。
だが、少し酸っぱめの味付けで、カレーとの相性にも疑問符が付く。
確かに、他にはない組み合わせであるが、独自性を出すことによる弊害にも感じる。
このサラダが好きな人がいれば、申し訳ないとは思うが。
値段は、それだけのものではあるが、やはり安くはない。
他店の皿をはみ出す大きなナンや、こんもり盛られたサフランライスを見ると、ボリューム的には物足りなく見える。
内幸町(新橋)の「SAMOSA」などは、もっと安くもっと大きいナンが出てくる。
ドリンクを追加すると、ランチタイムでも400円前後プラスになった覚えがある。
肉料理も追加すると、2000円近くなる。
チキン・ティッカも、1ピースで300円以上した。
肉はある程度大きく、柔らかく、付ける緑色のソースとの相性も悪くない。
おそらく、「本場」の味なのであろう。
だが、1000円弱でチキンティッカもラッシーも付いた上で美味しい店(以前触れた「ニューデリー」)に行ってしまうと、「たまに来る店」の位置づけになってしまう。
感心はし美味しいとも思うが、感動まではいかない。
「エチオピア」のカレーのルーのように、皿に少し残ったものを直接掬って口に入れたいという衝動も起きない。
とは書いたものの、他店との差別化は間違いなくある。
似た雰囲気の他店を回った後にここを経由すると、一つのアクセント符号としてこの店は記譜される。
特に、自分でインド料理を作る愛好家には、参考になる味付け、組み合わせがかなりある。
この店は、「食べる」だけの店ではなく、文化全体として「味わう」スタンスを持つのが、正しい接し方なのかもしれない。
知識や思考をフル活用し、インド文化全体を食する心持で接することにより、ありがたみが出てくるかもしれない。
説得力はまるでないが、一度行って損はない店である。