アド街ック天国で登場するらしいので、せっかくなので取り上げてみる。
前回の「エチオピア」は国名との関連は分からなかったが、「ハイチ」は関連はある。
コーヒー豆はハイチからの輸入で、料理もカリブ海系、旧フランス領系の調理である。


ハイチという国は、カリブ海の小国である。
世界史の教科書では、トゥサン=ルーベルチュール(クーベルチュールチョコレートとは関係ない)が「黒いジャコバン」として独立に貢献したとある。
もっとも、山川の世界史用語集の中でも1つの教科書しか取り上げられていない項目ではあるが。
あと、絵画もなかなか特色がある。
昔、東京八重洲の大丸で「グランマモーゼスと素朴画展」という企画展があり、その中でハイチの画家の絵も展示してあった。
グランマモーゼスは毒にも薬にもならない画家だが、ハイチの画家は一癖あってよかった。
ブードゥー教の文化を背景とした内容で、原色の色彩を細かく散りばめた、目がチカチカする絵画だった。
作家の名前は忘れたが、またどこかで展示されることがあれば観てみたい。
そういえば、昔はデパートの展覧会は今より多かった気がする。
今は「一番力を入れて売っているのがセゾンカード」となり下がってしまっている感のある西武なども、昔は文化の担い手であった。
初めてピサロ・カミーユ展を観て美術に関心を持ったのも、今は亡き船橋のセゾン美術館だった。
また、何度も足を運んだ今は亡き池袋の西武美術館の横には、新鋭のモダンアートの作品を集めて紹介する一角があった。
その後、両美術館ともになくなってしまい、船橋西武の一時期はレストラン街までなくすなどの衣料デパート特化が進んだ。
その結果、昼間には誰もいないゴーストデパートになり果て、数年後あわててレストラン街を復活させた。
デパートの企画展は決して単独で黒字になるようなものではないかもしれないが、非常連客が店に足を運ぶほぼ唯一の要因である。
昔ながらに展覧会スペースを常設しているデパートもまだあるが、多くはいわゆる「勝ち組」で資金的な余裕があるところのようだ。
また、デパートが芸術と生活の架け橋となる時代が来てほしいと期待したい。


カフェハイチの場所を記す。
新宿西口のアラジンというパチンコ屋の横だっただろうか、藁葺きの特徴的な飾り付けがしてあるビルの地下である(昔はもっと藁が多かった気がする)。
ちなみに、甲州街道を横断し、1本裏道に入ると新宿2号店がある。
住所的には新宿区でなく渋谷区代々木になるのだろうが、本店とは目と鼻である。
新宿には他にアルタやサブナードなどにあったはずで、牛タンの「ねぎし」並に新宿ではポピュラーである。
新宿以外にも出店されているようだが、やはり新宿本店が一番店自体に味がある。


入口に飾ってある料理のメニューは昔より多く、充実している。
だが、階段を下りて一歩中に足を踏み入れると、昔から変わらず時間が止まったかのような空間が待っている。
20年振りに再訪したとしても、当時と変わらない店の雰囲気は安心を与える(新宿西口では「そよかぜ」というステーキ屋も変わらない、何しろ黒電話とピンク電話が今でも店内にある)。
店内の飾りも、昔の昭和のときのまま変わっていない。


料理で一番有名なのは、「ドライカレー」である。
一般的には「ドライカレー」は、カレー炒飯のようになっていることが多いが、白いご飯の上に濃く味付けした挽肉や野菜を炒めたものを乗せている。
日本人の感覚としては、炊きたてのご飯に美味しいスパイシーなふりかけが山盛りに盛られている感じであり、食が進むことこの上ない。
外務省でとんでもなく物騒な国に飛ばされてしまった友人も、日本に帰る前にはハイチのドライカレーが食べたくなったと言っていた。
カレー炒飯風にしてしまうと味が均一になり、飽きが来そうなところなので、このスタイルにしたのが成功の秘密であろう。
ちなみに、ご飯なしのドライカレーのレトルト版(フライパンで要加熱)が店内販売されているので、自宅で宴を設けるときなどはよいかもしれない。
この商品は、検索すればいっぱい出てくるだろうから、あまり付け足すこともない。
もしかすると、パク森のようにスーパーで買えるレトルトにさえなるかもしれない(なってもおかしくない)。


個人的には、ビーフカレーをよく食する。
食後のコーヒーを飲んだときに、このカレーの後だとコーヒーがものすごく美味しく感じる。
ほどほどに辛く、胃に残るほど重くなく、肉もルーを邪魔しない柔らかさを持っていて、あくまでも個人的には及第点である。
昔のメニューでは、コロッケ(ポアソ・シェクン)かスープ(プレ・ブランシェ)がサイドメニューだった。
コロッケは平目か何かだったと思うが、注文したことがない。
スープは、よく追加オーダーした。
チキンが入ったホワイトクリーム系のスープで、本メニューとして注文すると白いご飯でなくピラフ風のライスになる。
他にも、カリビアンソースの肉料理があったと思う。
どれもそれなりに美味しいのだが、やはり飽きがこないのはある程度のスパイス感のあるドライカレーとビーフカレーであろう。


コロッケで思い出したが、この店で昔食い逃げを目撃したことがある。
その人物は普通にメニューを頼んで、コロッケを追加オーダーしていた。
「まだできませんか」と催促をしていたが、ふらりとテーブルにマンガ雑誌を置いて店外に出てしまった。
今から思えば、その漫画雑誌も店のもので、その後には誰にも食されることのなくなったコロッケが、寂しそうにテーブルに置かれているだけであった。
もう、だいぶ昔のことであるが。


昔といえば、今は消えてしまったメニューがある。
その食い逃げを目撃した頃に、珈琲で「ラパドー(たぶんラバドーではなかったと思う)」というものがあった。
少し前までは、新宿本店に行くと「ラパドーが誕生しました」という木のプレートが、各テーブル脇に貼ってあった。
今はそのプレートの上に別のメニューが貼られてしまっているが、この珈琲は非常に美味しかった。
値段は珈琲をダブルにするよりもさらに割高であったが、現地でもめったにお目にかかれない最高級の豆と製法を使っているらしかった。
味の深さはハイチコーヒーそのままで、決め細やかさと上品さが加わり(今飲めないので具体的に書けないのが残念)、当時の一番の贅沢であった。
カレーの食後に飲むと、寒い冬の日でも多幸感が味わえた。
だが、ハイチが一時期政情不安で国境封鎖をしたとき、材料が入ってこなくなりこのメニューは一時期中止になった。
その後、空港封鎖も解かれたが、未だにこのメニューは復活していない。
当時、自分以外にラパドーを注文する客は見かけなかったので、なかなか復活は難しいかもしれない。
しかし、これだけのクオリティの味の珈琲はなかなかない。
新宿西口の本店だけでもいいので、ぜひ復活させてもらいたい。


やっとのことで書き終えたが、アド街ック天国の放送も終わってしまった。
食い逃げで取り残されたコロッケが、番組で紹介されていた。
もう少し上の順位かと思ったが意外に高い順位ではなかった。
新宿「ボンベイ」は、順位にも入っていなかった。
「酒を飲む」というコンセプトでなかったら、どちらももう少し上の順位だったであろう。
もっとも、新宿「ボンベイ」は取材拒否をしたのかもしれないが。
「ボンベイ」で、インドで起きたテロ事件を思い出したが、これ以上発展させると収拾が付かなくなるのでこのくらいにしておく。