久しぶりにNHK教育の「わたしのきもち」(厳密には、「ミニ」が付くカット版)を見たら、構成が変わっていた。
「わたしのきもち」は、昔でいえば「楽しい教室」(水森亜土が出ていた番組)の流れを汲む番組で、本来は養護学校・養護学級の対象番組である。
だが、十分に他の層の視聴者でも楽しめるように作られている。
ちなみに、養護学校には3種類あり、肢体不自由系の養護学校向けの番組には「ストレッチマン2」があり、これについてはいずれ取り上げたい。
病弱系の養護学校向けの番組は当然なく、あえて言えば「今日の健康」ぐらいが多少役立つだろうか。
最近は、「見てハッスル聞いてハッスル」などのように、軽度の適応障碍レベルの番組など細分化されてきている。
だが、一応この「わたしのきもち」あたりが、伝統的な流れの番組だと言える。
以前は、比較的この番組が見やすい休みの取り方をしていたが、ここ2年はあまりこの番組を見ていなかった。
よく見ていた当時の番組構成は、次のコーナーの組み合わせであった。
1)キモッチ(声:阿部サダヲ)という紙コップに顔を書いたキャラクターのコーナー。
いろいろなシチュエーションでテレビの向こう側に話しかけてくる。
コーナーとコーナーのつなぎでもちょくちょく現れ、この番組の進行者としての役割も果たす。
2)もっさんというもじゃもじゃの着ぐるみがブランコに揺られ、対人関係でうまくいかなかった独り言を漏らす。
3人の子どもがもっさんの背中を押し井戸の中を見せる。
そして、ウエダ君とシタダ君の似たような場面から、コミュニケーションに必要な行動を学習させるコ-ナー。
この番組の根幹のコーナーであり、対人場面で必要な行動を分かりやすく学ばせるための役割がある。
女の子の名前はモモちゃんだったが、男の子2人の名前は忘れた。
「キモキモキーモキーモキモチ」と歌う人形隊(クインテットより安い作り)も出てきた。
3)ぶんちゃか村のぶんちゃかトリオ(アニメ)
笛とラッパと太鼓をそのまま擬人化させたキャラクターによる、対人行動学習アニメ。
ラッパ役はややわがままで、太鼓役は口数少ない役回りである。
対人関係を改善していくためのスキルを学ぶ教育アニメであり、「もっさん」のコーナーと同じ役回りを持つ。
4)顔のたいそう
的場浩司とベッキーとどちらかの顔の大写し。
歌にあわせて、気持ちに合わせた表情を作る練習をする。
コンセプトとしては、コミュニケーションに必要な豊かな表情表現を意識的に身に着けようというものであろう。
だが、芝居経験のない一般人も、この種のトレーニングを行う意義はあるように思える。
顔の括約筋の運動や、表情表出のコントロールなどに結びつく効果が期待できる。
5)わたしのワタシーエム
簡単に言えば、自己紹介のコーナー。
視聴者層と比べかなりしっかりしたコミュニケーション能力を持つ子どもが、自分の夢などを語る。
不定期であったりなかったりするコーナーだが、コミュニケーションに必要な自己伝達、表現を目指している。
6)その他
年度末ぐらいだったか、歌だけが映像と一緒に流れることがあった。
ボーイソプラノ風の少年の声で、「ポッカーポカポカポッカポカ」という一節があったように記憶している。
個人的には気に入っており、祝日限定放映の砂遊びの番組の曲と同じくらい楽しみにしていた。
つい先日見た「わたしのきもち・ミニ」は、別のコーナーができていた。
妹のジュースだかおやつだかを取ってしまった兄が謝らず、「謝るというスキルを~に奪われてしまった」と両親が騒いでいた。
戦隊もののように、家族全員が変身し、取り返しに出発する。
その回は、結局「奪われていたわけではない、ごめんよ」ということで、兄が謝り解決となった(妹にしか与えていなかったのが問題の本質のはずなのだが)。
ミニでない方を見ていないので断言はできないが、おそらく「もっさん」のコーナーと入れ替わったと思われる。
まず断っておくが、一つ一つのコミュニケーションスキルをパーツ化し、それらの獲得や完成を方向付けた点は面白い。
このコーナーが、番組誕生とともに生み出され、提示されたのであれば、応援したい気持ちもある。
だが、この手の番組の対象者は、長期にわたって視聴し、徐々にコミュニケーションスキルを身につけていくはずである。
ぶんちゃかトリオのアニメは何度も同じ回が放映されるが、これは作り手の怠慢ばかりではない。
一度見たものを二度三度繰り返し視聴することにより、消化し吸収することができるのである。
学齢に満たない子どもでも、同じ絵本を繰り返し示す効果が同じようにあるであろう。
「もっさん」「ウエダ君とシタダ君」のコーナーは、決して伝達性に優れていたわけではない。
だが、長期にわたって「もっさん」と親しんでいた視聴者にとって、自身を投影化できる媒体がなくなってしまうことはあまりに痛い。
作り手の自己満足のために、番組を作るならばそれでもよい。
しかし、受け手の吸収具合を省みずに、次々とメニューを変えてしまったのでは、番組の目的が意味を成さなくなってしまう。
もう一点、記す。
ストレッチマン2などにも言えるが、この種の番組は他の系統の番組と比較し、2~3クッションほど現実世界との間に入っている。
そのあたりが、現実世界に直接入る厳しさを軽減させ、入口の垣根の低さにつながっている。
この新しいコーナーは、クッションの厚さが1つか2つ少ない。
もっさんのおとぎの国的世界と違い、自分につながる対象世界として認識するには、見る本人に能力を獲得する意欲や意志がなければならない。
だが、コミュニケーション能力の獲得が必要な層は、年代もレベルも幅広い。
楽しく見ているだけで、自然と少しずつ見に染み込んでくる、というのが理想である。
NHKに焦りがあるのであろうか。
結果につなげるべく、最短距離を効率的にプログラミングさせるべきではない。
無駄を多く設け、何度も回り道をすることが、この番組に必要なことである。
ミニだけで本編を見ていないので何とも言えないが、新しいコーナーはあくまでも追加メニューとするべきである。
(もし終了してしまっているのであれば、)もっさんのコーナーを今までの繰り返しで構わないので、再提示するべきであろう。
短いコーナーが多いこの番組は、それぞれが短い分、一つ一つを咀嚼しやすいメリットがある。
このスタイルを守り、ゆっくり成長を待ち続けるスタンスを取ってほしいと考えている。
さすがに、久しぶりに、しかもミニを見ただけで一つの番組を論じるのは乱暴すぎる。
いずれ、「その2」として再検討してみたい。
